第131話 バレちゃいました
話さないヒエンの代わりと言ってはなんだけど、パナケイアさんがモグモグしながら話してくれた。
アザゼルを封印していたためなのか、ヒエンに送る念話が筒抜けだったらしい……。間の抜けた話だな……。
幼少期、アンジーが言った時期にアザゼルからのご褒美、黒髪巨乳なんだけど、それのために勇者や教会に色々と便宜を図っていたようだ。
便宜の中には熱病の時に、アザゼル像の作成用資金も秘密裏に提供していたらしい。
それにはここにいたパナケイアさんとマオー以外、全員の気が膨れ上がった。
まあ、ヒエンは教会に寄付しただけだと思|い《・》込んでいたみたいだけど……。
いつも通り、自分に都合がいいところだけ記憶に残るって、スキルが発動していたと思う。
だがヒエン王子が提供した資金でどれだけの人が熱にうなされか……それに、間に合わず、命を失った人もたくさんいるんだ。
それなのに、なんなんだよコイツ……今まではアンジーの腹違いの兄で、義父となる王様の子、王子だからと相当甘く見ていたけど……。
そうも言ってられないな…………。
だってパナケイアさんが言うには――
『像を作ったら熱病が流行るの聞いていたんだよ、そこの人』
――だ。それに対してヒエンは――
『違う! 信者たちが気軽に触れられるアザゼル像をすべての教会に設置せよとアザゼル神様が!』
だからそれ、自白しているのと一緒なんだけど、まったくわかってないようだった。
「はぁ。ヒエン、このものが言ったことに間違いはないようだな」
「なぜだ! なぜ私だけのアザゼル神様の神託をキサマのようなみすぼらしい胸の女が知っているのだ!」
そう言うヒエンの目線は、マオーがちょっと成長したくらいの胸にそそがれている。
いや、普通サイズだと思うんだけどね。ヒエンが言うように、みすぼらしくはない。
「お前は! 今は胸は関係ないだろ! 自分がやったことで、数えきれない人が熱病にかかり、しかも死んだ人もいるんだぞ!」
「そうですわ! あなたは馬鹿ですの! そのせいで死んだ方がたくさんいますのよ! それをあなたは分からないのですか!」
「こんなクズ殿下のせいで……陛下、もし恩情を与えるようなら、グリフィン王国との国交は諦めてくださいね」
「ヒエン、母が違うと言ってもよ……お前、駄目だろ。俺、お前と腹違いとは言っても兄弟なのが恥ずかしいぜ」
「な、なんなんだ、俺はまだカサブランカ王国第三王子、ヒエン・フォン・カサブランカだぞ……不敬だ!」
「……我が息子ながら、アザゼルが消滅したあとも変わらぬか……性根が元々こうであったと言うわけだな」
まったくもってその通りだ。自分の欲望に忠実で、人の話は自分にとって都合の良いものしか取り入れない。
「父上! なにを言っているのですか! アンジーを除き、ドライ、エリザベスに加え、いかにグリフィン王国の王女と言っても王族への無礼、見逃せる範囲を越えています!」
「馬鹿もん! ヒエン、お前は処刑が決まった時点で廃嫡、罪により、もはや平民よりお前が言う身分は下だ!」
「あ……いや、しかし、あの、私は王……」
「……やっと分かったか。ヒエン。あれほど……もう言うまい。はぁ…………ヒエンをつれて行け」
そこまで聞いた王様。深く息を吐き、ゆっくりと首を横に振り、まだモゴモゴといいわけじみたことを言うヒエン王子が部屋から引きずり出されていった。
「恥ずかしいところをまた見せてしまったようだ。ヒエンはアザゼルが手を出さなくともいずれこうなっていただろう」
……あ……そう言えば原作でヒエン王子の奥さんになっていた子もそうだった。
映画のキャストに選ばれたのも、黒髪巨乳の小池○子似の子だったし……。
「次に元勇者アーシュだが……」
「オヤジ、そんなヤツの話なんて何度聞いても一緒だと思うぞ」
「だがな……そうだドライ。コイツが意味不明のことを言った言葉に反応していたのはお前だけだったな」
は? 俺?
「意味不明のことに反応、ですか?」
「ああ。コイツ、拷も……詰問で前世だと言う色々有効な知識を出してきたんだ」
拷問って言ったよな! 有効な知識をってなんだよ!
「お前が進めた水害対策の堤防や、農作物の収穫増加方法についてをな」
『あーはっははは! ドライ、隠してた転生者ってことがバレそうよー。ここでバラしちゃう?』
あ……イス……今の念話、俺だけに向けてないよね……。
リズをはじめとして、ファラ、カイラ、アンジーにキャル。さらには王様に父さん、リズパパまで一斉に俺の方を向いた。
「は? 極悪人ドライが転生者だと!」