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第128話 マオーが魔王であるために

『みんなもいっしょにー、転――あれ? アイツ、消えちゃった……』


『どうしたの? 消えたって、アザゼルの気配? それとも転移した場所とか?』


『うん。ちゃんととらえてたのに、プツンって切られちゃった感じー。こうなったら残念だけど追いかけられないわね』


『イスが駄目なら俺じゃ追いかけるのは無理があるね』


 イスの索敵能力は飛び抜けてる。微かな痕跡で居場所も見つけられる。


 おそらく大陸どころか、この星全体をカバーできるレベルだと思う。


 俺は魔力を感じて、向かってくる敵とか、隠れているものなんかはそこそこ……レベルも上がったし、半径百キロくらいなら索敵できるんだけど……。


 そのレベチなイスが逃がしちゃうなんて……やっぱり神様の世界に行ったってことか……。


『仕方ないわねー。でも、これで邪神も倒したし、マオーとなんだっけ、パ……パなんとかって言う聖女も仕事がなくなったんでしょ?』


『パナケイアね。あ……』


 そうだ。パナケイアさんとマオーは同一人物。封印に全力のパナケイアさんから勇者に真実を伝えるために漏れ出たのがマオーだと言ってた。


 その根元の邪神、アザゼルを倒した今、パナケイアさんが目を覚ます可能性は高い。


 まだ会ってそんなに経っていないけど、マオーと俺たちは仲良くなったと思う。


 会った当初に言ってた、パナケイア(本体)が目を覚ませば消えるということ。


 本体のレベルを遥かに越えたから、最早別物とも言っていた。


 俺の本心だと、別物なっていて、二人共に存在したままでいて欲しい。


『そうそう、パナケイアね。たぶんドライも同じことを考えてそうだけど、気配的にそろそろ起きそうよ。……ドライはどうするの?』


『……まずはみんなのところに戻ろう。イスの中、居心地いいけど、みんなは邪神の結果を待ってるだろうし』


『そうね。特にリズはマオーと仲がよかったし、早めに言ってあげないとね』


 むにゅんと目の前の壁に穴があくと、その先にリズが見えた。


 イスの触手にぎゅっとつかまり、目をきつく閉じている。絶対離さないって感じだ。


 穴を通り抜けリズの前へ。まだ気づいて無いので頭を撫でておく。


「ただいま。アザゼルの驚異は一応回避できたよ」


「あら? おかえりなさいませ? どうなり……ましたの?」


「邪神のアザゼルは倒した? 感じだけど、逃げられちゃった」


 自分で言っててもそうなると思う。訳がわからないよな。


 漫画だったらリズの頭の上には『?』マークが浮かんでるだろう、首をかしげるリズ。


「それでね、もうすぐパナケイアさんが起きる」


「まあ! よかったですわね。ずっと封印するために寝てましたもの。……あっ、マオーちゃん……」


 途中でリズも気がついたようだ。


「どういたしましょう、マオーちゃん、消えてしまいますの……」


「うん。その可能性は高いと思う……」


 地面に下ろしてもらった俺たちは、イスの上で眠るパナケイアの横に集まった。


「……そうじゃな。本体が目覚めればわらわは消えてなくなるじゃろうな」


 苦笑いをするマオー。その表情は諦めが入ってるように見えた。


「マオーちゃんが消えるの嫌ですの……せっかく仲良くなりましたのに……」


 膝をつき、マオーの胸に顔を埋め抱きしめるリズ。


「これも運命じゃ。勇者にことの真相を伝えるべく存在しておったが、それもお役御免になるからの」


 そのリズの頭を優しく撫でるマオー。


「フェリル村で会った日から、そう時は経っておらんが、わらわもお主らとこうやってふれ合うことができんようになるのは辛いものがあるのじゃ」


「ドライ、なんとかならないの? わたくしもマオーがいなくなるのは嫌だわ」


「ファラ。俺だってそうだ。封印のために寝続けたパナケイアさんも起きて欲しいし、マオーもこのまま残って欲しい」


 だけど、どうすればいいんだ……。


「なあ、今さらだけどよ、大丈夫だと俺は思うぞ。だって、な……パナケイアってやつはもう起きてるし、マオーは消えてねえし、それでいいんじゃねえのか?」


 アンジーの言葉に振り向いた俺たちの目には、イスの上で目を開いてるパナケイアさんが映った。

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