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第123話 邪神復活

 目の消滅はあっという間だった。名もなき島に転移してくる前のマオーによるダメージが残っていたのも大きい。


 アザゼルの目が憑依したためHPが凄い数値になっていたけど、ヒエン王子とアーシュが持つ元々耐久力が低かったから簡単に削りきれた。


「最後はマオー頼む! はっ!」

『お願いねー、ほいっとー』


 HPも残りわずかになったところで待機してもらっていた前に向けて二人を放り投げた。


「来るがよいっ! バシっと締めくくるのじゃ!」


 ドスッ! ドスッ! と、腹パンを一撃ずつ、吹き飛ばさないように入れた。


 ドサドサと地面に落ちたところで鑑定すると、HPが0になっていた。


 アザゼルの目の表示が薄れ、消えていく。完全に素のステータスに戻ったことを確かめたあとストレージに二人の遺体を入れた。


 たぶんだけど俺とリズ、それにキャルなら蘇生もできるだろうけど、させるつもりも、するつもりもない。


 蘇生させたとしても、戻れば斬首刑が待っているだけだ。


 本当ならアンジーのこともあるから直接俺たちが命を奪うなんてやりたくはなかったけど、アザゼルの憑依で予定が狂ったのは言うまでもない。


 このことで、みんなの心に負担がかかってないことを祈ろう。


『終わった? なら次に行こうよーって、揺れてるわ、ね?』


 ゴゴゴと腹の底に響くような揺れが突然始まった。


「みんな、飛行スキル使ってね。たぶんだけど、しびれを切らした――」


「アザゼルの本体が無理矢理封印を破ろうとしておるぞ!」


 やっぱりね。


「マオーちゃん! それ、寝てるマオーさんは大丈夫ですの!? 地下ですわよ、崩れちゃいますの!」


「まずいのじゃ。いかに名が分かれ、別の存在になったとしても根幹は同じじゃ。……このまま本体が潰れ死ねばわらわも消えてなくなるかもしれんのじゃ」


 マオーの落ち着きようが気になる。まるで自分が消えることを覚悟していたと言ってるように聞こえる。


「駄目ですの! せっかく友達になりましたもの! ドライ! マ オ ー ち ゃ ん を 助 け て で す の!」


 はは。リズのそれ、久しぶりに聞いたな。


 未来の奥さんのお願いだ。何を置いてもお願いは成功させなきゃな。


 とりあえず胸ぐらを掴んで揺すられているのを止める。


「リズ。もちろん助けるよ。だから、急ごう。イス!」


『ほいほーい。神殿の地下まで飛ぶよー』


 マオーを中心に分かれていたので、イスと俺で転移を発動させる。


 マオーのことはイスが触手を伸ばして絡めとりながらだ。


「ぬひゃっ! 頼むぞ!」


 触手が脇腹に絡みついて変な声が出たけど、こっちもリズとキャルの手を取り転移する。


 視界が荒野から地下に変わると、そこはすでに崩れ始めていた。


「もう駄目じゃ!」


『駄目じゃないもーん。ほいっとー』


 崩れた岩が、祭壇で眠るパナケイアさんの上に落ちてきたが、イスが覆い被さってポヨンと岩をはじいた。


 ドスンと地響きを起こすほどの大岩だ。そのままなら確実に潰されていただろうな。


『それでドライ、この後どうするの?』


 そうだ。このままじゃこの地下は完全に崩れてしまう。


「どうせ倒すつもりだったんだ。思いきって封印を解こう! イス! そのままパナケイアさんをつれて外に出るよ!」


『任せてー転移ー』


 折り返し地上に戻ってきた俺たちが見たものは、荒野にポツンと建っていた神殿が崩れ落ちる様だった。


「わらわの家が……邪神の奴め」


 崩れ落ちながら、今度は地面が陥没し始め、そこから黒い霧のようなものが吹き出してきた。


「来るよ! みんな準備はいい!」


「どんと来いですわ!」


 剣を抜き、構えるリズ。


「任せて! カイラもいいわね!」

「準備万端でございます」


 ファラとカイラもよさそうだ。


「くくくっ! いつでもいいぞ!」


 パンパンと手のひらに拳を叩きつけて気合いを入れるのはいいけど、賢者なんだから魔法も使おうね。


「が、頑張りましゅ!」


 キャルは決め所なのに噛んじゃったし……なぜか杖じゃなくて剣を構えてる。そういや最近練習してたね。


 アンジーもだけど、キャルは聖女なんだから……よしとしておこう。


「家にはまだチーズが残っておったのに! この怨み、思いきりぶつけてやるのじゃ!」


 いや、そりゃ、チーズが好きなのは知ってるけど、ストレージに入れとかなきゃ……。


『よーし。本気だすよー』


 そう言って俺の頭に乗るのはなんでだよ……まあいいけどさ。


「リズ! イス! キャルも聖魔法で結界張るよ!」


 みんないつも通りで、場の緊張感は無くなったけど、逃げられちゃたまらないし、保険で結界を張っておく。聖魔法だし、何もしないより逃げられる可能性は下がるだろう。


 結界を張り終わったところに地面を砕き、消滅させながら真っ黒な球体が浮かび上がってきた。


 球体がどんどん大きく膨らみ、バンとはじけ、黒い霧が迫ってくる。


 真っ黒過ぎてあたりが見えなくなったところに、背筋が凍りそうな威圧感が襲って来た。


 息苦しい……邪神の本体はこれ程のものなのか。ステータスでは完全に俺たちの方が上回っているのに。


 やはり邪神とはいっても神様ってことか。でもこれくらいは想定内だ。


 一番気になっていたのが現れた瞬間に即死魔法のようなものを繰り出してくると考えていた。


 そしてそれは正解だったようだ。俺たちのまわりに張られた四重の結界に黒い霧が触れ消えていく。


『羽虫どもがよくも邪魔をしてくれたな!』

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