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第116話 (……ちっさ)

 sideヒエン


 考えろ、私は王子だぞ。廃嫡で平民になどななってたまるか! なんとか逃げ出さねば!


 ……っ! そ、そうだ、司教が持ってきたアレがあるではないか!


 アレがあればこの理不尽な状況から抜け出すためのものを呼び出せる。


 跪き、手を寝台の下へ伸ばす。


 なんとも屈辱的な格好だ。このような姿をせねばならないとは腹立たしいにもほどがある。


 本来であれば誰かに跪かせさてこその王子だと言うのに。


「くっ、ホコリだらけではないか!」


 過去の私が蹴り入れたとはいえ、私が寝る寝台の下がこのような汚れているなどあってはならないことだ。


 手のひらや指先に伝わる感触が、不快過ぎて引き抜いた手のひらは、(すす)けたように汚れていた。


「なんということだ……汚らわしい!」


 父上から派遣されたものたちはこうも手抜きをしていたということなのか……。


 幽閉中だとしても、王子である私がいる部屋の掃除ができていないなど、不敬罪で極刑にできるぞ! 次に見かけることがあれば、その場で首をハネてやる!


 怒りがおさまらないが、目的のものを取り出さねばならないことには進まない。


 再度寝台の下に手を伸ばし、手探りを再開させる。


 コツと指先に何かが当たる感触が伝わった。


 見つけた装飾された木箱を手に立ち上がり、開ける前に水差しの水で汚れた手を洗い流した。


 彫刻が施され、所々にキラキラと光る宝石がちりばめられた木箱を開け、中のものを取り出す。


「これに手紙を入れ、魔力を流せばあの司教の所へ届くのだったな」


 自分を助け出すよう手紙書き、丸め紐で縛った後、取り出した筒に放り込む。


「頼んだぞ司教。そら、司教の元へ飛ぶのだ!」


 魔力を筒に流したとたんに、筒は霞むように消え失せた。


「ほほう。これで後は待つだけだ」







「ヒエン殿下。起きてくださいませ」


 どれほどの時を待ったのか、寝ていたようだ。


「誰だ――」


「お静かに。お助けに参りました」


 メイドの服を着て、綺麗な微笑みわ浮かべる黒髪の女性が私の顔を覗き込んでいた。


 黒髪……それに……これほどのものは滅多にお目にかかることはないであろう豊満な胸が目に入った。


「美しい。ここまで私の横に立つにふさわしいと思った女性は初めてだ。……お主、私の専属にならぬか?」


 そう言いながら手が自然に胸へ伸びていた。


 こ、これは! 素晴らしい。柔らかさの中に弾力もあるではないか……。


 やわやわと揉み込む指が、少しの力で胸に沈んでは押し返す……。


 美しい顔に、ほんの少しの赤身がさす。片手で触れていたが、空いている手も、もう片方の胸に伸ばしささげ持つようにその感触を楽しんだ。


「……これまで数えきれぬほどメイドたちの胸に触れてきたが、これほどまでの手触りのものは無かった……」


「ヒエン殿下……お戯れはそこまでに。準備に手間取りお待たせしたことお詫び申し上げます」


「おお。城のメイドではなく、司教が遣わしたものであったか。名はなんと言う。美しいそなたの名を聞きたい」


「……名は、ございません。影、とお呼びください」


「今はまあ良い。逃げたあと、司教には私の専属にそなたをつけるように言おう。そのとき、寝屋を共にし聞くことにしよう」


 名残惜しいが、影の胸から手を離し、起き上がると、服や靴などの一式を差し出された。


「殿下、こちらに着替えてもらえますか。一定時間ではありますが、姿を消せる魔道具でございます」


「ほう。素晴らしいものだな。うむ。では着せるが良い」


「……では失礼いたします」


 上着が脱がされ、ズボンを脱がされたとき、下履きも一緒にズレ落ちた。


 あまりの大きさに驚いているな。それはそうだろう、親指ほども大きくなった私のものが、影の目の前にさらされたのだからな。


「(……ちっさ)」


「くくっ。影よ。情けをやろう。咥えるが良い」


「……」




 素晴らしく気持ちの良い一時であった。十を数える間もなく情けを影の口へ吐き出してしまった。


 情けない。いつもなら、二十は数えられ、胸を何度か揉めるというのに残念でならない。


 ……やはり容姿がここまで私の好みに合うものが咥えてくれるだけで、こんなにも早く……。


 いや、だからこそなのかもしれないな。影よ。お主は私のものになるために来てくれたのだと確信したぞ。


「ヒエン殿下。これより地下牢に捕らえられた同胞と一緒に転移で城を脱出いたします」


「ほほう。仲間が捕らえられているのか」


「はい。クリーク家のドライと言うものに捕らえられたと聞いております」


「またドライ、か。奴には何度も苦汁を飲まされた。ならばそのものたちも私と同じ。脱出するのであれば、そのものたちも同行を許そう」


「……では参りましょう」





 鍵のかけられた扉を簡単に開け、見張りを気絶させた影に続き、尖塔を出た私たちは、姿を消せる魔道具のお陰で、誰に見つかることもなく、地下牢にたどり着けた。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 side影


 地下牢にたどり着いた私は一つの魔道具を発動させた。意識だけを刈り取るものだ。


 三十も数えず地下にいるものは、立ってはいるが、ふらふらと揺れ動き、寝ているような状態になる。


 これで邪魔な兵士どもはもう気にしなくてもいい。が、このクソ早漏野郎だけは許せない。


「汚く粗末なもの咥えさせやがって……無くてもいいわよね」


 ズボンをおろし、その小さく汚ならしいものを引っ張りながらナイフを横に滑らせる。


 素早く小さな棒と袋を切り取り、一拍置いて血が滲み出てきたところを――


「回復。ぷはっ。こ、これで、ぷふっ。き、綺麗になったわ」


 つるつるになった股間を見て怒りがおさまった。ほんの少しのついていた血もそのままズボンを上げておく。


 ものは……炎を吹き出す魔道具の前にでも置いておけば燃えて無くなるわね。


「教皇様の救出が第一の目標。司教の奴が変な情けをかけたお陰で、馬鹿な王子まで救出することになったが、命だけは取らずにいてあげますね」


 ボーッと虚ろな目で立ち尽くす馬鹿王子を置いて、地下牢の中をくまなく探し、教皇をはじめ、聖騎士たちと、以前、逃げたはずの勇者や枢機卿を見つけた。


「勇者様まで……また捕らえられたの? ……ドライ、思っている以上の強者かもしれないわ……」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 sideヒエン


 ん? 一瞬意識が飛んだ。何があった?


 影が目の前にいるのは良いとして、その背後にたくさんの人影が見えた。


「ヒエン殿下。この魔道具を持ち、手放さないでくださいませ」


 渡された首飾りに頭を通し、目を凝らして前を見ると、勇者アーシュがいた。


「おお! アーシュ! 無事であったか!」


「王子! 助けに来てくれたんだな!」


 合流した俺たちは、地下牢の階段に向けて炎を吹き出させたあと、転移で城を去り、たどり着いたところは――

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