第11話 何か来る!
なんだかんだあったけど、スライムのイスと話をしながらリズと俺は昼ごはんを食べることにした。
イスは当然切り株を食べながらも、焼いたホーンラビットを見て、『お、美味しそう……』と、興味を持っていたから分けてあげることにした。
そのお礼に、『こ、この一番美味しそうな切り株をあげてもいいくらい……』と言ってきたんだけど……。
俺たちは切り株たべれないし、要らないからな。気持ちだけ受け取っておいた。そして――
『んー! これこれ! 実に八百年ぶりの料理! いつもユートが作ってたからさ、帰っちゃったでしょ? だから食べる機会もなくなったんけど……切り株より美味しいわね……』
うん。そもそも食べ物として比べるものじゃないからね。切り株は切り株であって、食べるものじゃないんだし。
俺も絶対焼いた肉の方が美味しいと思うし、塩と、火加減だけなんだけど結構自炊していたから褒められると嬉しいな。
この場合、普通に接してくれるメイドさんに頼んで塩を少し分けてもらったから感謝しかない。見つかって罰とかうけてなきゃ良いけど……。
そういえばユートも、妹のためによく料理とか作ってたもんな。
俺は親戚だったけど、親のせいでこっそりしか会えなかった……ん?
なにをアイツに重ね合わせてんだ。そんなわけあるわけ無い。だってアイツは――
考えても仕方がないな。
「それでイスはずっとこの森にいたのか?」
ホーンラビットの肉の残りと毛皮を何とか背負い袋に押し込みながら、疑問に思っていたことを聞いてみる。
「そうですわね。イス様は大きいですので、すぐ見つかっちゃうと思いますわ」
『ずっとこの森にいたわよ? まあこの大きさのままだったらすぐに見つかってたでしょうけど、普段は小さくなってるからすぐには見つからないわ』
いたんだ! てか小さくなれるんだ! ……スライムだし、なんだかやれそうな気もしないでもない。
『ところであなたたち、生活魔法のストレージは使えないの? そんな背負い袋に入れてちゃお肉が痛むわよ』
俺とリズは同時に――
「あ!」「そうでしたわ!」
――と、完全にストレージの存在を忘れていたことを思い出した。
すぐに背負い袋ごと、俺のストレージにしまい込んでおく。うん。手ぶらで荷物がなかったら、もっとレベル上げがはかどるよな。
そういえば、インフィニティな無限大スライムだから大きくも小さくもなれるってことはわかったけど……。色々知識も豊富そうだし……だったらならなんで今は大きくなってるの? と聞く前に――
『気配が二組。各二人ずつこっちに近づいて来てるわ。二人とも気を付けて、魔物じゃないけど、何これ、一組は普通だけど、先行してるもう一組は凄く遅いわよ? それにこの気配は人間だけど嫌な気を感じるの』
「誰か来る? 二組も? 遅くて嫌な気……っ! イス! 小さくなって隠れて! 思った奴らなら見つかると厄介だ」
「あっ! もしかしてお兄様たちが来ましたの! マズいですわ! イス様お早く小さくおなりください」
『ん? そうなの? 別に大丈夫だと思うけど、そこまで言うなら……ほいっと!』
ゆっくり食べていた切り株が一瞬でなくなり、シュルシュルと森の奥で倒したスライムよりさらに小さくなっていくイス。
ソフトボールくらいだろうか。ぷるぷる震えて縮むのが止まったところで拾い上げる。
『ん? 私を持ち上げてどうするの?』
「どうしようか……どこか隠す場所は」
「あら、わたくしにお任せくださいイス様。こちらへ」
『ん? そこに入るの? まあいいけど……だったら』
襟を引っ張り、膨らみはじめているはずの胸元を晒す。そこに俺の手からぴょんと飛びはね潜り込むイス。
このシーン。風○谷のナ○シカで、キツ○リスのテトが同じようにしてたよな。あのシーンでナウ○カって巨にゅぅ――あっ、ガン見しちゃってる!――
「ドライのえっち……そんなに見つめられると恥ずかしいですわ」
「ご、ごめんつい」
首元を隠すリズ。そして――
「そういったことは正式に婚姻の儀が終わってからですわよ」
――と頬を紅く染めた。
婚姻か、原作のヒロインは主人公と……。いや、年齢的にもまだ先だ。リズを渡す気は無い。俺が幸せにするんだ。
『それで、このあとどうするの? リズのおっぱい大きく見せちゃう? ほら、こんな感じで』
「きゃ」
「え? あ……」
十歳の少女が巨乳になった………………はっ!
「ご、ごめんまた!」
「うふふ。心配しなくても大丈夫ですわよ。今はまだドライの好みの胸には程遠いぺったんこですが、お母様のものは片方でわたくしの顔くらいありますもの」
リズの顔と同じ……片方が……。
「う、うん。楽しみにして……おくよ」
って何言ってんだ俺! 別に巨乳好きじゃないぞ! いや、嫌いでもないが、慎ましやかでも胸は胸! 胸の大小に貴賤なし!
頬を染めたまま笑顔を向けてくれるリズに『ありがとう』と言い、一歩前に出て背中に隠す。
来るなら俺たちも通って来た獣道しかないはずだ。……だけどなんでアイツらがここに来るんだ?
まさか魔物を狩り、レベル上げでもしに来たと言うのか? いや、無いな。じゃあアイツらじゃないのか?
鳥の声と、風が木々の葉をこすり合わせた音しか聞こえない。リズを背にして切り株広場の中心から獣道に目を向ける。
そこに現れたのはあの二人。ハズレて欲しかったけど、やはり予想通りだった
『来たわ』
「来たね……やっぱり兄さんたちだ」
「ううっ、どうしますのドライ」
「リズ、俺が守るから離れないでね。そうだ、もう一組はどこ?」
『あの二人の後。隠れているわ。なにをしに来たのかしらね。だけどこの二人? 肉だるまね。スライムよりスライムみたいな体してるじゃない』
隠れて見てるだけならそれでいい。それより兄さんたちだ。
「ぶふっ!」「くふっ!」
……肉だるま! だ、駄目だ笑ってる場合じゃない! って背中にリズの吹き出し笑う声が小さく聞こえた。
だけどお陰で肩の力が抜けた。
どうすることが一番いいか。前回のように気のすむまで攻撃を受けて物理耐性を上げてもいいが、リズを心配させたくないよな。
反撃するにしても……どこまでやっていいのかな。
いや、何を上から言ってるんだ俺。ちょっとレベルが上がったからってさすがに舐め過ぎだろ。
舐めすぎだよね? 兄さんたち……疲れきってるのか? えっと、動かないんけど……。