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第108話 打ち上げるのは花火だけではない

 そして、馬車から出てきたのは――


「おっ! リズ! やっぱ俺を追いかけてきてくれたのか!」


 ……勇者かよ。面倒なことに……ん? いや、邪神退治に必要だし好都合か?


 それになんだアレ。肩にイモムシが乗ってるぞ? 勇者ワームのミーギ? アイツの従魔になってるな。


 っと、そんなこと考えてる場合じゃないな。


 横倒しの馬車から這い出てくる前にリズのところに行っておかなきゃな。


 ……いっそのことサクっと気絶させておくか? 何をしでかすかわからないし……。


 それにさっきの複合魔法は暴風魔法だ。あれから覚えたんだとすれば多少は強くなっているみたいだし油断はできない。


「よっこらしょ。ん? お前は! なんで極悪人ドライまでいるんだよ!」


「なんで、と言われましても、一緒にいて当然ですわよ。ドライは最愛の婚約者ですもの」


 っと、考えている内に喋りはじめた……一応どうしてここにいるか聞いてみるか。


 睨んで唾を飛ばしながら叫んでいるだけだから、すぐには動かなそうだし。


「それがおかしいって言ってんだよ! お前は建国祭の前にギロチンで死んでなきゃおかしいんだよ!」


 いやいや、そこまで原作を覚えてるんなら、お前がここにいるのもおかしいだろ。


「それに今王都はちょっと前のワイバーンの襲来と火事で無茶苦茶になってるはずだ! 俺様がいなかったからな!」


 確かに勇者がそのどちらも解決したから、原作では最低限の被害で済んだ。


 カサブランカの第一、第二王子がワイバーン襲来で亡くなっていたのも要因だよな。


 そこへ魔王討伐の功績がドーンと加算されて王様になっちゃうんだよね……勇者信者のヒエン王子を宰相にして……。


 と言うか、前々から思っていたけど、原作のドライってとことん被害者だよね。


 本当に物語の隠し味的な役どころだし……その救済のために、神様かなにかは俺をこの世界に転生させたのかもしれないな。


「そうだリズ! 無茶苦茶の王都なんか捨てて一緒に教国に行こうぜ」


「王都は無茶苦茶にはなっていませんことよ。どちらもドライとわたくしたちが解決いたしましたわ。おかしなことを言う犯罪者ですわね」


 リズの犯罪者と言う言葉に反応したのは、警戒しながらも集まってきた護衛をしていた冒険者たちだった。


「ちょっと待て、犯罪者だと? 勇者アーシュ殿が? 多少短慮なところはあるが……」


「教会が認めた勇者だぞ? 助けてもらったことには感謝するが……」


 ああ、まだ勇者アーシュのやらかしたことは広まってないのか。


 それに、魔王が言っていた行く先々で盗賊行為のことも知らなさそうだ。


 あ、そう言えばあのモラークス枢機卿はどこだ? 馬車の中は……あ、いた。


 鑑定で見ると、馬車の中にモラークスがいた。あと聖者アーナホール……だが動きはない。


 横倒しになったときに気絶したようだ。ステータスに出てるから、しばらくは放っておいても大丈夫だな。


 モラークスは当然捕縛だけど、聖者アーナホールは勇者のように、盗賊系の称号はないから一旦保留か。


 とりあえずイスに頼んで、モラークスたちの魔道具を回収しておいてもらおう。


 イスに念話でお願いしている間も、話は続いている。


「カサブランカの王都で伯爵令嬢を襲い、王女が乗る馬車に魔法を放ち、捕まったあと、逃亡した犯罪者ですわ」


「ふざけたこと言ってんじゃねえぞリズ! ちょっとした行き違いで間違いだろアレは! それに俺様は勇者だから無罪だ!」


 勇者だからと許されることじゃないからな。普通、王族や貴族に攻撃しただけでも死罪だ。


 それも王都の大通りで無差別に魔法を撃ちまくったんだぞ? 沢山の人がいたのにも関わらず。


 どこをどうあがいても、王様がそれをしたとしても犯罪者には変わらない。


「なあリズ。わかってくれよ、な?」


「先程からリズ、リズと! 犯罪者の貴方にリズと呼ぶ許可はしておりませんわ!」


「なに言ってんだ! 俺様の最推しの嫁だろうが! 優しく言ってる内に聞き分けやがれ! ん? なんだ? リズの胸が……無い?」


 頭の方でブチっとなにかが切れる音がした気がした。


「リズは俺の嫁だ! お前なんかに誰が渡すか!」


「やかましい! てめえは俺様がぶっ殺してやる!」


 勇者の魔力が一気に膨れ上がり、手に集まり、俺に向けて付きだす姿勢に入った。


「死にやがれ! 爆裂――」


 まわりは森だぞ! ここで爆裂魔法は駄目だって!


 俺が動こうとしたとき、リズが、馬車から下りていた勇者の目の前まで一足先に間合いを詰めていた。


「もう喋るな! ですわ!」


 先に行かれた。


「へぶっ!」


 バチン! と何度目も聞いたことある平手打ちの良い音を響かせ、左斜め上に飛ぶ勇者。


 だけどこのままじゃ腹の虫もおさまらない。


「転移!」


 飛んでいく勇者の起動の先へ回り込み――


「オマケだ!」


 今度は右斜め上に打ち上げてやる。


『あら、面白そうね。転移ー』


 方向を変えた勇者の先にイスが転移で移動したと思ったら、触手を伸ばし――


『いっくよー、えい!』


 今度は再び左斜め上に打ち上がる勇者。


「面白そうじゃの! そいっ!」


 魔王さんがジャンプで勇者に追い付き、手加減スキル無しで右斜め上にぶっ飛ばしてしまった。


 ヤバっ! 死んだかも!


 放物線を描き、街道の先に落ちる前に転移で落下中の勇者に追い付き、飛行スキルで受け止める。


 ……首が変な方向を向いている。コレ、マジでヤバいかも。


 ステータスを見ると、どんどんHPが減り続け……100を切ったところで勇者の称号が消えた。


 は? 勇者じゃなくなった? なんだこれ? 勇者が消えるってどういうことだよ!


 ……こんなとき、なんて言ってたっけ……あっ! 松○優作さんの――


「なんじゃこ――」

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― 新着の感想 ―
いや遊んでないで治療しましょうよ ちなみに なんじゃこりゃあ、はアドリブだったと言うのは結構有名かも
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