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第107話 馬車が襲われてます。助けますか?

「魔王ちゃん。どうなってますの? また魔物さんいっぱいいますわよ」


「ぬ? リズには言っておらんかったかの? 名もなき島の魔物たちはすぐに増えるのじゃ」


「次の日には魔物が元に戻ってるとは聞いたけど、まるでダンジョンみたいだな」


 口にしてから無いと思った。ワイバーンが飛んで来ていたしね。


 ダンジョンならスタンピード以外で魔物は外には出てこないと言われているし。


「おお。わかるか、この島全体がダンジョンなのじゃ」


「は? ダンジョンだったのここ!? ……だったら、最近スタンピード無かった?」


「おお、あったのじゃ。あれはまるで勇者に向かう魔物どものようじゃったわ」


 話を聞くと、いきなり暴れはじめた魔物たちが、一斉にひとつの方向に移動しはじめたそうだ。


 大半はなんとか押し止めたそうだけど、速く飛ぶドラゴンやワイバーン、グリフォンの何匹かは逃してしまったらしい。


 というか、アーシュが枢機卿と転移で逃げたのここじゃん……。


 聖剣だけじゃなく、勇者にもここの魔物は反応するのか?


 ワイバーンの時も、ここでレベルアップした時も思ったけど、聖剣には確実に向かってきてたもんな。


「そうだ、ワイバーンの十三匹は俺たちが倒したんだけど、あと、ドラゴンにグリフォンが逃げたままか」


「ぬ? お主らがワイバーンを倒したのか? どこを探してもおらんと思っていたのじゃ」


 探していた? もしかして倒しちゃ駄目だったのか?


「ならば安心じゃ。ドラゴンはすぐに追いかけ、引きずって連れ帰ったのじゃが、残りはグリフォンだけじゃな」


 よかった。あ、その前に昨日ここの魔物は倒しまくったもんな。駄目なわけ無いか。


「……残りはグリフォンか……イス、居場所とかわかる?」


 もしかしてと、イスに聞いてみる。


『グリフォン? 何度か倒したことあるけど、あまり強くないからわかりづらいのよね。ちょっと待ってね』


 リズの胸でぷるぷる震えるイス。ぷるんぷるんだ。まるで走ってるくらい……あっ。


「もうドライったら。わたくしの胸をそんなにじっと見るなんて、えっちですわね」


「あ、いや、うん。ごめん。つい、ね」


 リズのじゃないんだけど、謝っておこう。かれこれ五年、そこがイスの定位置になってるし、もうリズのでいいかもしれないな。


「でも、学園を卒業し婚姻するまでもう少しお待ちくださいませ。それまでにはもっと大きくなりますから」


「そ、そうだよね」


 なんと言っていいか、言葉につまる。でも、リズのお母さんのことを考えると、本当にこれからなのかもしれない。


 リズの希望どおりになるよう俺も祈っておくね。


 隣のリズに手を伸ばし、頭を撫でておく。


「ふむ。仲が良いのう……」


 目の前でそう言い、そっと頭を差し出してくる魔王さん……。


 えと、撫でたらいいのか、な?


 空いている手で魔王さんの頭も撫でておく。


 これ、どういう状況なの?


 二人とも『にゅふふ』とか『ふおお』なんて言ってるけど……止め時がわからないよこれ……。


『いたわよ。五匹ね。今ならすぐに転移で行けるけどどうする? 魔力が乱れてるから、戦闘中かな、相手は――』


 その時イスがグリフォンを見つけたと、念話を送ってきてくれた。


「倒しに行こうか。……それとも連れ帰った方が? あ、連れ帰っても、倒すだけか」


「ほほう。その索敵能力は素晴らしいのじゃ。もちろん倒して良いぞ」


 イスがまだなにか言う途中だったけど、グリフォンは魔王をふりきれるくらいだから結構強いはず。


 元々ここの魔物は強いものが多いし、普通の冒険者とかだとヤバいかもしれない。


「イス。転移で行ける? すぐに行こう」


『いいわよー。じゃあグリフォンたちの真上に行くねー。転移!』


 は? 真上?






 視界が切り替わり、リズと魔王を撫でてる姿勢のまま落下しているのがわかった。


「ふおおお……な、な、なんじゃ!」

「ぬふふふ……は? 落ちてますの!」


「真上ってこういうことかよ!」


『ほらほら着いたわよー! 馬車が襲われてるし、とりあえず一人一匹ねー! いっくよー!』


 落下しながら剣をストレージから取り出し、飛行スキルで下方向に加速する。


 リズの胸から飛び出たイスと並び、そこへリズに手を繋がれた魔王が追い付いてきた。


『私は後方のグリフォンをもらうねー』

「ならばわらわは馬車の右側をヤるのじゃ!」

「わたくしは左側を行きますわ!」

「なら俺は前を! 援護します!」


 声をかけると、『助かる!』と返事が帰ってきた。


「よし! 一気に行くよ!」


「はいですわ!」

「任せるのじゃ!」

『ほっほほーい』


 声で気がついたのか、地上に降りていたグリフォンが上を向く。が、遅い――


「とやーですわ!」

「そいっ!」

「せーのー、えい!」


 いつも思うが、リズとイスの掛け声は、気を落ち着かせてくれる。


 だから緊急時や張りつめたときでも心を落ち着かせてくれる。


 だけどなごんでる場合じゃない。馬車の前方にいる二匹のグリフォンに集中だ。


 二匹の内、他のグリフォンよりひとまわり大きな一匹は飛び下がり、距離をとった。


 先にやっつけようとしていたけど仕方がない。まずは確実に――


 ズパッ! とリズが一匹目。

 ズドン! と魔王さんが二匹目。

 ペチッ! とイスが三匹目を倒し。

 シュパ! と俺が倒す。


 残りはあと一匹! 首を切り飛ばし、まだ地面に落ちていない内に方向転換。地面スレスレで降下から直角に前へ。


 その動きに驚いたのか、大きなグリフォンは逃げ出した。


「ここで逃げるかよ!? 逃がさないよっ! と!」


 背後から魔法が飛んできたので、掩護射撃だと思い、グリフォンギリギリで、横にズレてかわすと、見事に魔法は――グリフォンに命中した。


 魔法が弾け、火だるまになったグリフォンが飛ぶ勢いのまま墜落して、太い木を何本も折り、止まった。


 終わったかな。だけど、避けなきゃ完全に俺に当たってたよな……凄い威力だし……てか、この魔法って……。


 車輪が外れ、横倒し馬車を囲むようにしていた冒険者だろう護衛たちが警戒しながらも剣を下ろした。


 そして、馬車から出てきたのは――

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異世界あるある、襲われてる馬車助けたら、中から王女様や公爵令嬢など、身分の高い女性が出てくる
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