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第99話 捕縛

 立ち上がり、転移しようとしたその瞬間、目の前のローテーブルの上に人が現れ――


 ギン!


 ――逆手に持った短剣を振るってきた。が、ストレージから取り出した剣で受け止める。


「何者だ!」


 黒づくめの襲撃者を鑑定すると、昔、洗脳執事のゲヒルンを殺したベオ……なんとかさんや、ボッタクリーノと一緒にいたイン……インなんとかさんと同じアザゼル派の刺客とわかる。


 五年前だし名前忘れたけど、あの人たちよりレベルは上だ。


 それに今の確実に首を狙ってきた剣筋、おそらく解体場で男たちを殺したやつだよね。


「チッ!」


「首狩り! 私の前で暗殺を試みるとは舐められたものだな! バインド!」


 ギルマスさんの足元の影から伸びた触手のようなものが黒づくめに迫るが、短剣で切り裂きローテーブルの上から部屋のすみに飛び去る。


 転移の魔道具を持っているから、発動される前に捕まえる!


「逃がしませんよ!」


 黒づくめの背後に転移して、ギルマスさんが伸ばしているバインドの触手に向けて蹴り飛ばす。


「はっ!」


「グガッ!」


「ギルマスさん!」


「来い! バインド!」


 触手を増やし受け止めたギルマスさん。


「転移の魔道具を持ってます! その短剣です!」


「なにっ! させるか!」


 魔力の流れが短剣に向けて流れ込もうとした黒づくめをギルマスさんが思いっきり殴る。


 よし! 魔力が乱れた!


「痛いですよ!」


 躊躇している暇はない。黒づくめの手首を切り飛ばし、物理的に短剣を取り上げる。


「ガアッ!」


 カランと短剣が床に落ちた。でも油断はしない。さっさと転移の魔道具である短剣をストレージにしまう。


「お見事ですギルマスさん」


「いや、見事なのは英雄ドライの方だ。しかし、あの不意打ちに良く反応できたな」


「いっぱい修行してますからね」


 イスと組み手をすると、もっと上手く転移を使いながら攻めてくるもんな。


 だから突然だとしても、目の前に転移してくれば反応するのはそんなに難しくはない。


「ところで……」


「ああ。コイツは暗殺ギルドのものだ。それもSランクの首狩りという。しかし……なぜドライを狙う。そんな依頼は来ていない……」


 そうだ。この人たちって歯に毒を仕込んでたよな……。


「依頼のない暗殺は厳罰の対象だ。そうでないとギルドがたち行かん」


「ギルマスさん。この方たぶん自殺すると思うんで、ちょっと失礼しますね」


 そう言って返事を聞く前に気絶させるべく、手加減スキル全開で殴ってから転移で高原に戻った。


 ……魔牛増えてるよ……。いや、今はそれどころじゃないな。


「イス、ちょっと手伝って欲しいんだけど、一緒に来てくれる?」


『なに? また騒動に巻き込まれてるのドライ。飽きないわね』


 いや、好きで巻き込まれてるわけじゃないんだけどね。


 パッと目の前に現れ浮いているイスを掬うように手のひらに乗せる。


「わたくしのおっぱいが!」


 いや、リズのじゃないからね……。


「……みんな、ちょっと遅くなるかもだけど、待っててね」


 いつの間にか全員魔牛の背にまたがってるし、大丈夫そうだけど……魔牛、高原中から集まってきてない?


 こちらに向かってのしのしと歩み寄ってくる魔牛たち。


「むー、仕方ありませんわね。イス様はお貸しいたしますわ。わたくしたちは魔牛たちと待っておりますので、ご安心を」


「ドライ、あまり遅いと私たちでフェリル村に行くわよ?」


「なんだドライ、また何かあったのか? 頑張れよ」


「な、なにか、わかり、ませんが、待ってますね、ってコラ、喧嘩しちゃ駄目です!」


「なにか、お手伝いはございませんか?」


「カ、カイラさん、ちょっと暗殺未遂なだけで、もう犯人も捕まえたし大丈夫かな」


 さっきまで魔牛の上でみんなといたのに、目の前に現れるとか……転移より驚くよ……。


「それでイス様の出番ですか」


「うん。おそらく歯に毒が仕込まれてるだろうからね。じゃあ急ぐから、ごめんね」


 それだけ言ったあと転移でギルマスさんのいる部屋に戻り、イスを黒づくめの男に投げつける。


「イスお願い」


『任せなさい!』


 ぺちょっと黒づくめの顔に張り付いたイス。これで自殺は防げるはずだ。


「スライム? 従魔か?」


 バインドからロープでの拘束に変えているギルマスさん。いきなり投げつけられたイスを見て一瞬だけ『ぎょっ』と表情をこわばらせた。


「はい。ちゃんと登録もしてますよ。経験上こんな方は歯に毒を仕込んでるんですよね」


『あったわ。ストレージにしまったから、もう死ねないわよコイツ』


「ありがとうイス。じゃあ、まだ気絶……してるね、色々と魔道具も持ってるから、今のうちに剥いちゃいましょう」


「暗器の類いは剥ぎ取ったが、魔道具、か」


「はい。この指輪は魔力の回復ようですね、こっちの腕輪は――」


 と、剥いでいくと、黒頭巾は認識阻害の魔道具だった。


「こんな顔をしていたのか『首狩り』は……」


「首狩り? そう言えばそんな名前で呼んでましたね」


「ああ。なんのこだわりかわからないが、コイツが請けた依頼の標的は、全員首を切断されるからついた二つ名だ」


「そうなのですね」


「だが……英雄ドライの暗殺依頼はなかったはずなんだが……なあ、死なないか?」


「ん? あ、イス、そろそろ退かないと窒息しちゃうよ?」


『そうね、よいしょっと。これで私の役目は終わり? 物足りないんだけど』


「んー、ギルマスさん、あの弓を射った人も暗殺ギルドの方ですか?」


「……ああ。だがヤツは依頼をこなしただけだ」


 ……まあ、それは仕方がないか。


「仕方がないですね。ま、この首狩りさんを捕まえられて良かったです」


「ソイツはもう暗殺ギルドは除名だ。依頼にない殺しは御法度だからな。好きにしてくれて良い」


 ギルマスさんも複雑だろうな。冒険者ギルドのマスターでもあるし。


「はぁ……。英雄ドライ、すまないが、暗殺ギルドのことは……」


「はい。口外しない方がいいのですよね?」


「ああ。依頼主には王もいる。外部には知られるべきではないからな」


「グッ……」


 あ、起きましたね。

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