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第98話 依頼主は誰だ

「お兄さん、他の方も回復魔法をかけますので案内してください」


「そ、そうだ! こっちだ来てくれ!」


 俺の提案に、思い出したのか、身をひるがえし奥へ走り出すお兄さん。


 ギルマスに早く聞きたいことがあるけど、今は怪我人の回復が先だ。


 お兄さんを追いかける俺に対してを、ひき止めも声もかけずギルマスは見送っていた。




「頼む!」


 解体場は、濃い血の匂いが充満していた。


 俺たちを襲った人たちの体から離れた首と、その体が石畳に転がっていた。


 見ただけでわかる……相当な腕だ。剣の効果もあるだろうけど酷すぎるよ……。


「……わかりました! 重傷の方から順に回復魔法かけます!」


 今は生きてる人が先だ。


 倒れてうめく七人は、手首を落とされていたり、アキレス腱を切られてるだろう人もいる。


 一番の重傷はお腹を切り裂かれていた。


「あなたから治しますね!」


「うぐっ、た、たの、むっ」


 これは内臓までいってるな。回復魔法に再生を重ねが消しながら、浄化もかけておく。


 もし、俺の想像通りなら、武器に毒が仕込まれてる可能性がある。


 脇腹がスッパリとやられていたけど、みるみる内に傷がふさがり、青ざめていたお兄さんの顔も少しマシになった。


「もう大丈夫です。が、血を流しすぎてますので動かないでくださいね」


「すげえ、もう駄目だと思ってたが……ありがとう英雄」


「どういたしまして。次はあなたを」


 隣にいた手首を落とされた方。近くに落ちていた切り離された手を拾い上げ、クリーニングで汚れを落とす。


「よし、お兄さん、くっつけますよ!」


「そん、なことが、でき、るのか……」


 痛みにうめきながらも大人しく治療を待つお兄さんの傷口を合わせ回復魔法と再生、浄化を同時にかけていく。


 そんなかたちで七人を治療し終えたところに、衛兵を連れたギルマスたちが解体場にやって来た。


 ギルマスも含め、やって来たものの顔がこの惨状歪む。


「ギルマスさん、回復は終わりましたが、皆さん血をたくさん流してますので、安静にしてもらってください」


「あ、ああ。わかった」


 やって来た衛兵たちは、亡くなった方たちを一人ずつ大きな布で包み、運び出していく。


「それでギルマスさん、少し聞きたいことがあるんですが、いいですか?」


「……場所を変えよう」


 こくりとうなずき、小さな声でそう言う。


「お前たちは医務室に行ってもらう。とんでもないことを頼んでしまったようだ。すまなかった」


 そしてまだ座り込んでいるお兄さんたちにも深く頭を下げた。





 ギルマスについて、解体場を出て向かったのは、応接室だ。


 ソファーに向かい合って座り、お茶をいただきながら、ふうとため息をはいたあと、ギルマスは話し始めた。


「殺されたものに依頼をしたものの正体はわかるか?」


「そうですね、おそらく、ですが口封じを依頼した人はまだなんともわかりませんね。それと、ギルドにいたひとで、殺害を指示した人も」


「……その話し方なら」


「殺害の実行犯は暗殺ギルドの人でしょうね。ギルマスなら誰がやったか見当はついてるんじゃないですか?」


「……ああ。その三人は把握してる。それに依頼主もな」


 ほほう。素直に話してくれるのかな?


「英雄ドライの依頼を邪魔したものたちの依頼主は予想だが私にもわかる……ヒエン殿下だ」


「俺もそう考えてますね」


「……建国祭の日、暗殺ギルドに一つの依頼が入った。だが、その依頼主の名は出せない」


 でしょうね。信用問題になっちゃうし。だけど、暗殺ギルドの存在を知っていて、莫大な依頼金を払える人物。


 それだけでもだいぶしぼれる。伯爵以上の高位貴族。


 それもヒエン王子を支持してる貴族だ。従者を任されているアモルファス伯爵は怪しいんだよな。


 ドルーアくんなら王子の依頼した内容は知ってるだろうし、それを父親に話すこともあるだろうし。


「わかりました。殺された人たちは、どちらにせよ処刑になっていたと思います」


「そう、だな。それで、このことは陛下に?」


「……王様に報告はしないと駄目でしょうね。ヒエン王子は最悪……」


 元々の原因を作った王子を無罪にするには無理がある。


 俺たちを襲うってことは、妹を含め、グリフィン国とミレニアム国の王女を襲わせるってことだしな。


「なので、この後みんなのところに戻り、報告に向かいます。なので、ギルマスさん、あなたはどうするか知りませんが、もう行ってもいいですか?」


「ああ。時間を取らせたな。私もこの後、陛下と謁見ができるよう申請に行くとしよう。暗殺ギルドではなく、冒険者ギルドのマスターとして謝罪はしなければならないからな」


「ですね。ほっておけばあの王様のことだからキツい悪戯をされるかもですからね」


 立ち上がり、転移しようとしたその瞬間――

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