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第95話 高原での出来事

 フェリル村出身というパーティーに共同で依頼を請けないかと提案したんだけど、断られた。


『お前らより先に魔牛を捕獲して届けてやる!』


 なんてことを言いながら冒険者ギルドから出ていった。


 まあ、フェリル村の人たちも、魔牛が増えることは良いだろうし、好きにすればいいと思う。


 勝手に依頼もなく魔牛を連れていったところで、報酬をもらえるかどうかわからないけどね。


 飛び出していった男たちを見送ったあと、俺たちは王城に戻る。


 魔牛のいる高原に、ファラの飛龍、ファフニールに行くためだけど、さあ出発だ! ってときにメイドさんに呼び止められた。


「皆さま、お待ちくださいませ」


 ……このメイドさんもミラさんやカイラさんと同じタイプだな。いきなり現れたとしか思えない。


 逆らっちゃ駄目なメイドさんだ。


「ど、どうかしたのですか?」


 原作には出てこなかったけど、絶対にメイドギルドとかあると思う。


 そしてそこの『SSSランクメイドです』とか言われても納得してしまいそうだ。


 鑑定しても出ないから、謎だけど……。


「陛下がお呼びです」


 無表情のまま答えるメイドさん。それに反応したのはアンジー。


「オヤジが? なんなんだよまったく。これから出発ってときによ」


 その言葉に反射的に反応してうんうんと頷くみんな。


「わたくしにはわかりかねます。殿下、陛下からは皆さまを『呼んでこい』としか聞かされておりませんので」


「しかたねえな。ドライ、みんな。さっさと行って済ませてしまおう。くだらねえ悪戯なら俺が一発くれてやるからよ」


 と、出鼻をくじかれ気味に、王様の前に行くと、結局は俺の鑑定が『必要かも?』レベルの呼び出しだった。


 王都から魔牛のいる高原まで、ファフニールで数分しか離れてない。


 それならいいか、と安請け合いしたのが運の尽き、事細かに鑑定すること………………二日。


 やっとのことで鑑定地獄から解放だ。


 ほんと、好きな食べ物とか嫌いなものとか、必要なの? ってことまで……。


 聖者が性の捌け口とか知りたくもなかったことも知ってしまったし……。


 BL趣向の方は生前身近にもいた。腐女子の演者仲間に無理矢理読まされて、そんな世界もあるんだなとは知っていたけど……。


 聖者がそれを担っていたとは……。


 処女性を求められる聖女と違って聖者は男だし……アレだな。


 まあ、そんな世界があるのは否定はしないけど、俺個人としては進んでお近づきにはなりたくないもんだ。


 あと、時計塔の内部から転移で逃げ出していた枢機卿がアザゼル派でも、上層部の枢機卿だったのは、取り調べしていたみんなが驚いていた。


 教皇選出に出れる枢機卿だったからだけど、ま、あとはお任せして俺たちはファフニールに乗り込み、魔牛のいる高原にやって来たんだが――


「酷いですの! 魔牛さんたち怪我してますの!」


「なにやってんだアイツら!」


 フェリル村出身パーティーは怪我をした魔牛たちに追いかけられていた。


「ドライ! あんな奴らはいいから魔牛を浮かせて回復させるわよ!」


「わかった! みんな行くぞ!」


 ファフニールから飛び降り、高原を走り降りてくる男たちとすれ違う。


「お、お前ら! ――」


 なにか言ってたけど今は無視。真っ黒な波のように迫る魔牛が目の前に。


「浮かせるよ! 全力で回復頼む!」


 飛行スキルで興奮してる魔牛を浮かせると同時に、回復魔法を魔牛に向けてかける。


「ドライ! わたくしはあちらで倒れている魔牛さんを回復させて来ますわ!」


 浮かせた魔牛の向こう側で数頭の魔牛が倒れているのが見えた。


「キャル! アンジー! リズと行ってくれ!」


「は、はい!」

「任せとけ!」


 浮いた魔牛の脇をすり抜けるリズたちを見送り、残った三人で一頭ずつ慎重に回復魔法をかけていく。


 興奮して振り回す大きな角を避けながら次々と回復させていておかしいところに気がついた。


 毎年魔牛を捕まえてるのになんで魔牛を傷つけてるのかわからない。


 それもこんなにたくさんの魔牛にだ。失敗して傷つけるのはあるかもしれないけど、こんなのはあり得ない。


 チラと逃げた男たちを見ると、逃げるのをやめ、立ち止まって俺たちを見ている。


「ドライ、あの人たち、魔牛の捕まえ方を知らないようね」


「ああ。目的がなんなのかわからないけど、気を付けた方が良さそうだ」


「近づいてきました。わたくしが制圧してきましょうか?」


 カイラさんがそう言うが、なにをやるか見てからにした方がいいだろうな。


「話を聞いてからにしよう。とりあえず今は魔牛を回復させる方が優先だ」


 近づいてくる男たちに意識を残しながら回復を続けた。


 が、男たちから魔力の高まりを感じた瞬間――


「ファラ、カイラさん、こっちはお願いします!」


「かしこまりました」


「ドライ! ぶっ飛ばしてやりなさい!」


 ――飛んできた魔法を弾き飛ばし、俺は男たちに迫り、一番前にいた一人目をぶっ飛ばす。


「グフッ!」


「コイツいつの間に! 全員で囲めっ!」


「やらせません!」


「死ね!」


 話を聞いてからと思っていたけど、完全に俺たちを狙って来た刺客と判断していいだろう。


 なら倒してから聞けばいいだけだ。時間をかけるのももったいないだけなので一気に――


「グガッ!」

「ギッ!」

「フグッ!」


「ラスト!」


「こ、コイツ! ガハッ!」


 ――手加減スキルを発動させながらぶっ飛ばした。

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