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ブレイブバレット ―決死の弾丸―  作者: 天野鉄心
八章 決死行
36/39

⑤ ブレイブバレット

 作戦は至ってシンプルだった。


 キールとゴルディが真っ向から突っ込み、回り込んだゲンドウが魔戦士の注意を逸らした隙きをついて、キールが決定打を撃ち込む。


 ただ一点、剣での戦いとの違いは、銃撃をガラ・ラ・ロームの胸に集中させること。


「狙いを定めねばならんということか?」


「ああ。

 さっき一瞬だけ奴の体がかしいだ攻撃があった。

 多方からの連射が上半身に集中していた。

 あとは威力を損なわないためになるべく至近距離から決定打を撃つ。

 これしかない」


 限られた時間の中で作戦を伝え、キールは力強く言い切った。

 そこへゲンドウが確認を取る。


「最後の突っ込み、簡単じゃないだろ。

 お前に出来るのか?」


「俺が言い出したことだ。俺がやるのは当たり前だろ」


「……分かった」


 キールの眼差しから揺るがないものを感じたのか、ゲンドウはキールに拳を突き出し了承の旨を伝える。

 キールとゴルディがそれぞれ拳を軽く打ち合わせ、ガラ・ラ・ロームへ向き直る。


「行くぞ!」

「オウ!」


 キールの号令とともにゲンドウは左に駆け出し、ゴルディは右へと走り出す。

 そしてキールはグレネードランチャーを撃ち出し、ガラ・ラ・ロームの注意を自分の方へ向けさせる。


「そこにも居たか」


 また怪しく光る光弾を射ち出してから、魔戦士はキールを振り返り、まがまがしい飾りが付いた銃口もキールへと向く。


 その挙動に合わせ、一直線に突入していたキールは横に飛んで転がり、魔戦士からの銃撃をかわす。

 間一髪でさっきまでキールが居たあたりに着弾があり、枯れ草や土埃が舞う。


「喰らえ!」


 作戦通りにゴルディがショットガンをアサルトライフルに持ち替え、キールに狙いをつけている魔戦士へと急襲する。


「また貴様か。ぬぅ!?」


 キールからゴルディへと目標を変えた魔戦士の背中に、新しい衝撃が与えられ、怒りに満ちた声で振り返ると、サブマシンガンを乱射するゲンドウが素早く横切った。


「ちょこまかと煩わしい奴め!」


 ガラ・ラ・ロームは機嫌を悪くしたのか、三度銃身に怪しい光を宿し始める。


「グァン! ゾル!」


 キールはスタジアム外に居るスナイパー二人の名を叫んだ。

 それだけで二人にキールの意図は通じ、間を置かずに二つの銃声が轟き、ガラ・ラ・ロームの構えていたまがまがしい銃が弾かれ銃口の向きが変わる。


「キール!!」


 ゲンドウとゴルディが叫んだ時にはすでにキールは魔戦士のすぐそばまで駆け寄っていて、ガラ・ラ・ロームのみぞおちを狙ってトリガーを引いていた。


 しっかりと狙いを定め、マガジンの全弾を撃ち切るまで連射音が続く。


「……なん、だと?」


 キールが撃ち込んだ弾丸は狙い違わずガラ・ラ・ロームのみぞおちへと命中した、はずだ。

 しかし魔戦士は銃弾を受けた衝撃で体を揺らがせたものの、倒れたり膝を落とす素振りがない。

 影色の兜で顔面は見えないが、ダメージを負った雰囲気すらない。


 キールはおろか、ゴルディもゲンドウも、魔戦士の攻撃を受け地に伏した別働隊も、ガラ・ラ・ロームの立ち姿に圧倒されてしまう。


「ただの鉛玉など、何発浴びせられても痛くもない。

 むしろ水浴び程度の心地良さよ」


 魔戦士は周囲の人間すべてを嘲笑ったらしく、兜の下から嘔吐にも似た気持ち悪い音が漏れ聞こえた。


「クソッタレめっ!!」


 魔戦士の態度に憤ったキールは、空になったマガジンを差し替え、再度魔戦士に銃口を向ける。

 スタジアムにアサルトライフルの連射音が響き渡るが、それを打ち消さんばかりに魔戦士の哄笑らしきものが上がる。


「効かぬと言ったろう」


 幼児を諭すように呟き、ガラ・ラ・ロームのまがまがしい銃がキールへと向けられる。


「ダメなのか!」


 弾切れまで撃ち込んでも様子の変わらない魔戦士に絶望を感じ始めながら、それでもキールは次のマガジンへと交換を急ぐ。


しまいだ」


 ガラ・ラ・ロームは冷酷に宣言して四点バースト射撃を一射した。

 連続で撃ち出された四発の弾丸は、キールの携えていたアサルトライフルを破壊し、硬化樹脂の入ったベストを貫いてキールの体をも貫通する。


「ぐあ! うわああっ! あああああっ!!」


 膝を落とし呆然とした顔で腹を見下ろしたキールは、吹き出し始めた血を見てもんどり打ち、足をバタつかせてのたうち回る。

 痛みに比例した叫びが自然と発され、絶叫が途切れると浅くて短い呼吸で喘ぐ。


「仕留め損なったか」


 まがまがしい銃を構え直して魔戦士が呟く。


「キール!」

「やらせるか!」

「ふ、フォローだ」

「舐めんじゃないよ!」


 キールへの追撃をやめさせようと、ゲンドウとゴルディが叫び、別働隊も立ち上がって銃を取る。

 ジャスミンがアサルトライフルを乱射しながらキールの前に立つ。


「カリーリは治癒よ!」


 スーザンはサブマシンガンを撃ちながら、ジャスミンと並ぶように走り込んできたカリーリを叱責する。


「は、はい!?」


 スーザンに言われてキールを振り返ったカリーリは、血を吐きながら半身を起こしたキールが目に入り、彼のしようとしていることに目を見張る。


「死ね。人間」


「ジャスミン!」


 カリーリはアサルトライフルを手放し、横っ飛びでジャスミンに飛びついて、真戦士の銃口から遠ざける。


 いや、正確にはキールの邪魔にならないように遠ざけた。


 瞬間、キールがワンハンドで構えたリボルバーから轟音とともに灼熱した弾丸が発射された。

 狙い違わずガラ・ラ・ロームの胸に撃ち込まれた弾丸は、鎧の下の影色の肌でくすぶり、銃槍が赤熱し始める。


「……何だ、これは?」


 ガラ・ラ・ロームの口から痛みに震えるような声が漏れる。


 続けて二発、キールのリボルバーが火を吹く。


「ああ、熱い! い、痛みがある! 何だ? なんだこの弾丸(たま)は!?」


 先程の二発の弾丸も赤熱し始め、魔戦士の上半身を覆う鎧から炎が上がり始めた。


「……お前を、殺す、勇者の弾丸(ブレイブバレット)さ!」


 立ち上がったキールはツーハンドに構え直し、ガラ・ラ・ロームの額に狙いをつける。


「熱い! アツイ! と、溶ける……!」


 上半身に燃え広がった炎に焼かれて身をよじりながら、ガラ・ラ・ロームは銃を取り落として自らの体を抱く。


 キールはトリガーを引き絞り、ガラ・ラ・ロームの額にとどめの弾丸を見舞った。

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