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ブレイブバレット ―決死の弾丸―  作者: 天野鉄心
八章 決死行
33/39

② 突破

 訓練施設地上階にフル装備の十一人が揃った。


 C6の面々はクラスアップしていないために訓練と同じ装備だが、キールたちは物々しい見栄えだ。


 ゲンドウはサブマシンガンとハンドガンを二丁ずつ吊っているし、カリーリも手元のアサルトライフルの他にサブマシンガンをバックパックに吊っている。

 グァンダインも包囲網突破を考慮して、スナイパーライフルは背中に回し手元にはアサルトライフルを携えている。

 キールが一番装備は薄く、グレネードランチャーを付加したアサルトライフルを持ち、ハンドガンとグァンダインから渡されたリボルバーを腰に差している。


 今回一番物々しいのはゴルディで、ショットガンとアサルトライフルをバックパックに吊り、肩にはバズーカランチャーを乗せている。

 小柄だががっしりしたゴルディの体躯が、より無骨なシルエットになってしまったが、もとの世界と変わらず頼もしい。


 実弾が込められたマガジンや弾体を受け取り、キール小隊とC6小隊がニコライの元に集まる。


 微かに遠くでミサイルランチャーや迫撃砲の発射音と爆発音が聞こえる中、作戦内容が明かされる。


「準備はいいですね?

 我々の同志が防戦していますが、敵の部隊はかなり接近しています。

 この訓練施設の場所はまだ判明していないと思われますが、そうしたラッキーに甘んじていてはいけません。

 敵は北西から南東にかけて広範囲に展開しています。

 あなた方は、南側から回り込むようにして西へ抜けてもらいます。

 その後、北から西へ回り込むA1C5、後詰めのBクラスと合流して本隊を突いてもらいます。

 ここまでで何か質問はありますか?」


 急場のためかタブレットに表示させたマップで作戦を説明したニコライは、扇状に居並んだ十一名を見回す。


「この様な状況にある。多少荒っぽくとも構わないかな?」

「もちろんです」


 担いだバズーカランチャーを示しながら聞くゴルディに、ニコライは即答する。

 と、グァンダインの手が挙がる。


「おや、グァンダインさんもですか?」


「うむ。ゼノン殿とは打ち合わせを済ませている。

 包囲を突破するならば派手な方がよろしかろう?

 私とゼノン殿でその口火を切らせていただきたい」


 控えめに手を挙げたグァンダインはそう答えてキールを見やる。


「策がある、ということか?」


「それもとびきりのヤツです」


 親指を立てて応じたゼノンの表情を見て、キールは納得しニコライへ振り返る。


「彼らの言う事ならば間違いないでしょう。

 よろしいですね?」


「構いませんよ。

 ここを出てしまえばコマンダーであるキールさんの裁量です。

 任務に則していれば引き止める理由はありません」


「分かった」


 キールが答えたあと、ニコライがもう一度質問を募ったが誰も口を開かなかったので、ニコライは右手をこめかみに付け敬礼の姿勢をとった。


「訓練の成果を期待します」


 ニコライの言葉に次いでキールが踵を鳴らし、十一人が音を立てて敬礼を返す。


「よし! 行くぞ!」


 キールの号令に呼応し、「おう!」と返した仲間を率いて銃声と爆発音の真っ只中へ駆けていく。




 廃墟で偽装された訓練施設入り口から南へ走ること五分。

 立ち上った煙と曇り空のせいか、大通りを進むデ・ミニオンは影をまとったように黒い集団として見えた。


「来やがったぜぇ」


「では、参ろう」


 ゲンドウの合図を受けてグァンダインが隊列から進み出て、ゼノンがその横につく。


「そういうことね」

「ほほう」

「出来るのか!?」


 スナイパーライフルとアサルトライフルを背中のバックパックに吊り、空手のグァンダインが大仰な身振りで呪文を唱え始めた。


 ゼノンも複雑な印を結び、手にした宝玉を掲げて呪文を唱える。


全てを焼き尽くす炎(インフェルノ)!」


 力強い言葉のあと、グァンダインの差し向けた両手に灼熱の火球が生まれ、ドラゴンの形へと変じてデ・ミニオンめがけて体を伸ばす。


駆け抜ける雷撃(ギガボルテージ)!」


 ゼノンの両手には激しいスパークをまとった光球が宿り、ゆらりと打ち出されて地を這う高さでデ・ミニオンを目指す。


 真っ赤なドラゴンとスパークする白球は道路上を進み、デ・ミニオンの集団を一気に飲み込み駆け抜ける。

 二十体近いデ・ミニオンのそこここから咆哮や汚らしい呻きが生まれ、火色のドラゴンに触れられた者は火柱に包まれて消し炭になり、白球のスパークに接近されたものは体を震わせて卒倒した。


「いきなり最大呪文と来たか」

「魔法はやっぱり派手なのがいいよね」


 はやし立てるようにするゲンドウとスーザンへ、グァンダインは軽く肩をすくめる。


「本来の半分程度だな。肩慣らしとしてはこれでよかろう」

「左様でございますね」


 ゼノンは完全にグァンダインの弟子か従者に収まってしまったようで、場違いに恭しくグァンダインの言葉を追認する。


「次は我の出番なり、とな」


 先程の高位魔法二発に怯んだデ・ミニオンだが、逃走せずに留まっている。

 そこへ向けてゴルディがバズーカランチャーを構え、発射スイッチを押し込む。


 山なりに撃ち出された弾体は推進力となる炸薬の白煙を吐き出しながら、デ・ミニオンがたむろする真ん中へと落下する。

 盛大な爆発音とともに火薬特有の白煙が広がり、デ・ミニオン数体と一緒にアスファルトや土煙が巻き上げられる。


 またデ・ミニオンの汚らしい声が上がり、呻き声や咆哮に混じって怒声や威嚇の声も混じって聞こえた。


「突っ込むぞ!」


 アサルトライフルにオプションしたグレネードランチャーを撃ち放ってからキールは仲間たちに声をかける。

 ゴルディのバズーカランチャーほどではないが、グレネードランチャーの着弾に重なるように仲間たちから返事が返ってくる。


 グァンダインの炎熱魔法の名残で立ち上る煙と、ゼノンの電撃魔法で焼かれた熱気、ゴルディのバズーカランチャーで舞い上がった土煙にキールのグレネードランチャーで新たに起こった爆炎。


 その只中に向かって十一人が駆け出す。


 先頭はサブマシンガンを両手に持ったゲンドウ。

 次いでアサルトライフルを構えたキールがゲンドウの左をフォローし、右側はカリーリが受け持つ。

 その後ろに足の遅いゴルディとグァンダインを囲むように、サイラム・ジャスミン・ゼノン・ゾルアディス・アイガンが追従する。

 しんがりはスーザン。


 ひとかたまりで進む十一人は、全方位に銃撃を浴びせながらデ・ミニオンの集団に突入する。

 サブマシンガン三丁の軽快な連射音が踊り、アサルトライフルの重々しい掃射が不連続に重なり合い、合間にショットガンの轟音とポンプ音が交じる。


 怒りや怯え、混乱や動揺。そういった要因のためかデ・ミニオンは生きた的に等しい。

 魔法と高火力爆破によって統制の乱れたデ・ミニオンからの反撃は小さく、ところどころから散発的な銃撃があるだけだった、


「あの角まで!」


 デ・ミニオンの一団を突っ切ってすぐキールは先頭のゲンドウに落ち着き先を指示する。


「みんな怪我はないか?」


「平気だ」

「大丈夫よ」


 キールの呼びかけに頼もしい声が返ってきて、銘々がマガジンチェンジや装備変更を行いながら乱れた呼吸を整えていく。


「五分休息したら敵の本隊討伐に向かう。伏兵や追撃に注意してくれ」


 言い終わったあと、キールはバックパックから取り出したボトルに口をつけた。

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