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ブレイブバレット ―決死の弾丸―  作者: 天野鉄心
七章 集団戦闘訓練
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④ ミッション

「まずフラッグが室内というメリットを活かそう。

 どこからでも入れる大型ショッピングモールというのは厄介だが、幸いにもフラッグは小さく仕切られたテナントに設定されている。

 このテナントを囲むように潜んで最終防衛線にする。

 三人ほど張り付いていればいいだろう」


 辺りの状況を示しながらキールが促すと、ゴルディ・カリーリ・ゼノン・ゾルアディスが手を挙げた。


「ん。ゴルディ・カリーリ・ゼノンに任せる。

 ゾルアディスにはスナイピングを任せたいからモールの裏手、東側にポイントを置いて欲しい」


「了解した」


「グァンダインは表側を頼む」


「承知」


 長大なスナイパーライフルを抱える二人はキールの指示を即答で受け入れた。


「残りはどうするんだ?」


 アイガンが慌て気味にせっつく。


「偵察と陽動で、タクティカルとアタッカーのコンビで敵を引き込んで欲しい。

 マップ中央の公園からモールの西へ案内するイメージだ」


 ニコライの事前説明に沿った簡単な絵を書きながらキールがルートを示す。


「それはあたいらの役目だね」


「いいね。性に合ってる」


 スーザンとジャスミンがハイタッチをし、異論なく二人に任せられた。


 キールはその姿に苦笑しながら、名前が上がらなかった二人を振り返る。


「サイラスとアイガンで裏手を頼む」

 

 と、アイガンがブスッとした顔をする。


「俺らの見せ場がねーな」


 どうやら敵と撃ち合いになりそうにないことが不満なようだ。


「そうでもねーぜ?

 上手くことが進んでA1の連中を表口でやっちまったら、その後はC5を掃除しに行かなきゃならねぇ。

 それに途中でA1がC5をアップさせる可能性もあるし、表口を攻めると見せかけて裏から忍び寄る可能性もあるんだ」


「そういうことだ。

 俺は表側に張り付くから、ゲンドウは彼女らのサポートも見越して西から動いてくれ。

 アイガン、個人的なキル数よりも役割を全うする方が優先だ」


「へいへい。了解だ」


 キールが口を開く前にゲンドウがアイガンを説き伏せ、キールのダメ押しでアイガンも納得したようだ。

 そのタイミングで天井のスピーカーからスタート時間が迫っていることが告げられた。


 キールだけでなくパーティーメンバーとアイガンたちは口をつぐみ、装備の点検を始める。


 いよいよスタート直前のカウントダウンが始まったので、キールは全員を振り返る。


「ポイントマンのスーザンにかかってる。よろしく頼む!」


「あいよ」


「サイラス、裏手に敵が集中したらそっちは任せるぞ」


「オーケーだ」


「慌ててキルを取らなくていい。守りながら戦うんだから互いにフォローし合おう!」


 キールが気合いを込めて声をかけると、全員から「オウ!」と返事が返ってきた。

 その返事をかき消すようにブザーが鳴り響き、フラッグゲームはスタートした。


 全員が一斉に駆け出し、カリーリとゴルディとゼノンが手近な物陰に潜むのを横目に見ながら、キールはゲンドウを伴って表口から広大な駐車場へ出る。

 やや遅れて出てきたグァンダインに、ハンドサインで狙撃ポイントをいくつか示すと、彼の好みに合うポイントへ走っていった。


「……厄介だな」


 ひび割れたアスファルトや、砕けたコンクリート製の車止め、ねじ曲がったり破れたりしている金網、ひっくり返ったり積み重なったりしている廃車をやり過ごし、キールが呟いた。

 マップで見るよりも実際の駐車場は広く感じたし、また障害物や遮蔽物が多く立ち回りにくい。


 それでもゲンドウと共に走り抜け、ショッピングモールから西側にあるマンションらしき廃墟の一階に身をやつす。


「今で三百ほどだ」

「……広すぎるな」


 ゲンドウの目測ではスタート位置からまだ三百メートルしか離れていないと聞き、キールは頭の中でマップを書き直さなければならなかった。

 最大五十名が入れる五キロ四方の部屋だとは聞いていたが、幅三キロのマップがこんなに広く感じるとは思っていなかった。


「どうするんだ? コマンダー?」


 ゲンドウの問いに、キールはバイザーに映し出されるマップと、そこに点描されるマーカーを眺めてから答える。


「俺たちは一旦、駐車場の北側に潜もう。

 スーザンとジャスミンの動きを見て連携する」


 キールの意向を聞き、ゲンドウは返事をせずに移動の態勢になる。


「SP、待機する」「同じく」


 そこにグァンダインとゾルアディスが狙撃位置に着いた連絡が入った。

 走り出しかけたゲンドウがキールを振り返ったので、キールは頷き返して目的地を指差す。


 マーカーを見る限り、スーザンとジャスミンは周辺を警戒しながら一直線に公園へと進んでいるようだ。


「……アイガン、サイラス。

 マップが広い。

 あと一ブロック北東へアップだ。スーとジェシーの負担を減らそう」


「ラジャ」


 キールは駐車場の北にあるファストフード店らしき廃墟に飛び込むなり、アイガンとサイラスに指示を飛ばし、ゲンドウへ向く。


「俺たちもあと一ブロック北西に移動だ」


「ヘイヘイ」


 ゲンドウは呼吸を整える間もないことにうんざりした顔をしたが、キールがグァンダインに移動の連絡をしている間に周辺の警戒をしてくれた。


 軽い合図と共にゲンドウが通りに飛び出し、キールが後を追う。


「ゼノより。フラッグの東にトラップ設置。注意」

「ラジャ」


 移動中に届いたC6の交信にキールは走りながら感嘆した。

 グァンダインに尊敬の念を見せていたことからゼノンは魔術師だと思っていたが、待機の時間を使ってトラップを仕掛ける頭脳と器用さがあるのが意外だった。


「ゲン。そのまま北にアップして。

 あたいが飛び出すのをジェシーに上からフォローしてもらう。

 二人目のPTで引っ張り込んで」


 フラッグの位置から二ブロック進んだビルとビルの隙間でスーザンからの無線通信を受け、ゲンドウはキールを見る。

 キールはすぐに頷き、ハンドサインで自分は留まりゲンドウを追い出す身振りをする。


「ラジャ」


 スーザンに返信したゲンドウは簡単に周囲を見回して通りへと出ていった。


 ――C6とのコンビネーションはちょっと面白いかもしれない――


 パーティーメンバーとのいざこざや、ニコライやイワンからの否定。アイガンの挑発などで凝り固まっていた気持ちは今は感じず、キールは軽く高揚している自分に気付いた。


 ――クズ弾だっていいじゃないか。撃ち出されて飛んでいくなら使い道はあるはずだ――


 深呼吸をし、装備の確認をしてキールは通りを渡って雑居ビルの中へ駆け込んだ。

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