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大量に打ち上げられたヒトデ達の死骸に幸いあれ (アルガエのファド)

やぁ、船乗りよ。

打ちひしがれた

ファディスタよ・・


世界の悲惨さを見たいのなら・・

海という

感情の無い深淵(アビスモ)

無数の十字架の墓地を

見たいのなら・・

ある時、無人の海岸線を埋め尽くす

アステリアス・ブルガリス・ベリル達の

打ち上げられた山の様な

死骸(シャルニエ)を見るがいい。


北方の

棘皮類(ブルガリス)達の

裏返った臓物と、

それを啄む海鳥達の

限りない無感情な

欲望の尋常性を!!


そうだ、兄弟・・

これが楽譜なのだ!!

潮流により命が剥ぎ取られ、

叩きつけられる!!


ただ、ひたすら

荒波に呑まれ、

希望を持ちながらも

無意味に乾く。


我々はこの[斃死の荒野]で

託されたヨセフの骨を持ちながら、

理想の墓所を探し彷徨う。

追われる身で・・


そうだ!!

船乗りよ。

[アルガエのファド]を奏せよ!!

観客のいない、このファドは、

ファドの本質だけを

肋骨(コスタ)として捉え、

死者のみを慰めるのだから。


蔑みの言葉だけが歌詞となり、

罪人達の[逃れの町]でだけ

奏されるファド・・


ああ、兄弟・・

そのファドには、

アマランティナのギターなど必要なく、

棘皮類(ブルガリス)達の骸を喰らう

海蚤(タリトリ)達が歌手となる。

そのファドには、

ギターラの調律も必要なく、

我らの心臓の洞調律(ヒーチモ・シヌザオ)だけが

重い足取りのパルマとなる。


世界は鈍器の様に遅くなり、

眩暈のする

洞性徐脈の青い楽譜だけが

この冷たいファドを

記録するのだ。


浚渫船が掘り起こす

海底の砂の中の

名の知れぬ藻類(アルガエ)と、

ヒトデ達の死・・


ああ、

この世界は悲惨(ミゼリア)だ!!

聖性は常に痛みと置換され、

腐肉だけが

残存物として取り残される!!


おお、

それでも[逃れの町]で

闇夜を見つめ、

ラテン語で祈る孤独な罪人に

キリストは語り掛ける。


「無人の海岸で死んでいる

何万というヒトデ達の、

虚無の墓標に相応しい場所を

夜の恐ろしい轟音の中に

見出せる者は幸いである・・」


VESPERUM DEMORABITUR FLETUS,

ET AD MATUTINUM LÆTITIA.

(夜は嘆きに包まれ、

朝は喜びに明ける)

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