第6話 次の日
次の日、僕は早く起きた。
差し込んでくる光は熱く眩しいけれど、僕の心はそんな明快ではなかった。そんなこんなで、朝食をとり、着替えて支度をして、いつものように早い時間の電車に乗って登校した。
「おはよう」
「おはよう。……試験、もう来週だね」
「そうだね。……テスト勉強してる?」
「ううん、全然」
「だよね、ハハッ」
「……日本史、ね〜」
アキさんは、今日も変わらず、面白味の欠けた会話に付き合ってくれた。
昼休みに売店でチョコレートを余分に買い、教室に戻った。
試験勉強に精進する——だから糖分がいいと思って箱入りのチョコレートを買ったのだが、よく考えたら、この暑い中チョコレートを無事に家に持って帰れるわけがない。
僕の机の隣では、アキさんとアキさんの友達が昼食後の雑談を楽しんでいたので、買ってきたチョコレートをあげた。それでもチョコレートは余っていたので、柿くんたちにあげた。……柿くんってのはもちろんニックネームで、本名は塩崎リョウタ。彼とは2年生の時から同じクラスだ。
期末試験もあと10日後に迫り、いろんな教科の先生が耳タコ話をする。
5時間目は、日本史の授業だった。
「えーと、試験範囲を知らせるから、教科書を出して、各自しっかり記録するように。———208ページ、『江戸幕府の終焉』まで。もう1度だけしか言わないぞ、208ページまでだからな」
試験範囲なんて、授業でやったところがテストで出るんだから……と思いつつ、ノートに走り書きした。
忘れていたわけではないが、今日は火曜日なので部活がある。つまり、ヒカリと顔を合わせなければならない。
6時間目の授業も終わり、部活に向かった。やがて部活も終わり、下校する時刻になった。今日は最後まで戸田先生は姿を見せなかった。
週2回ある部活が終わると、ヒカリと駅まで一緒に帰ることが習慣となっている。だから、今日もヒカリと一緒に帰る。
ただ、その日は2人とも口をつぐんだままだった。駅までのいつまでも長く感じられる道は、いつものように滑らかなものではなかった。なぜか、つぐんだままだった。
駅までの遠い道のりをはじめて黙って歩いた。
次の日、1時間目の授業が終わって廊下を歩いていた。向こうから歩いてきたヒカリとすれ違った。
「おはよう」
「おはよう」
なんだ、いつも通りじゃないか。と思っていた。その時は。
つづく