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微笑みの春  作者: 蔵人藻袮
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第4話 梅雨の気配

数学の授業を皮切りに、アキさんとの仲が順調に深まっていた。そして彼もまた部活に所属していた。

 昼休みが終わり、あと1時間ちょっとで、今日の授業も終わる。今日は月曜日だから、放課後は部活だ。部活は楽しい。

 

 帰りのホームルームが終わると、部員のところへ会いに行くつもりだ。渋沢ヒカリ——休み時間はいつも女子たちに囲まれているような、そういうヤツ。部活で一番よく話す人は誰かと聞かれたら、彼女であると答えるだろう。


 ただもう3年生だ。部活もそろそろ引退しなければならない。なぜこう思うかには理由がある。彼女とは、1年生の時から親密だったわけではない。故にせっかく親密になったのにこれから疎遠になってしまうかもしれないと、まあ、こう思うわけである。

 ともあれ、彼女とはよく話すから、周りは僕らのことを、より親密な関係だと思うかもしれない。しかし、断じてそんなことはない。そんなことはないと信じたい。


 今日のように、部活の用で彼女のクラスを訪ねることがある。この頃は、僕が教室の出入り口に姿を現しただけで、

「あ、ヒカリねー、ちょい待ち」

と彼女の友人が声をかけてくる。 そんなに乗せられても、何も出て来ないぞ……なんてね。別に悪い気はしない。

 だからと言って、嬉しいわけではない——いや、それは嘘だ。


「じゃあな」

「あ、鈴木くん。……じゃ」

廊下で8組のホームルームが終わるのを待っていたら、玄関へ向かう鈴木くんと出くわした。

「何してるの?」

「今日部活だから」

「おう、がんばって」

 ホームルームが終わったみたいだ。ヒカリが出てくるのを待っていると、出てきた彼女はトイレに向かっていった。で、また待っていると、今度は向こうから谷先生が歩いてきた。

 谷先生は、1年生の時の数学の先生で、時々すれ違う時には、今も挨拶している。

「こんにちは」

「おお、誰かと思えば。——元気してるか?」

「はい」

「またな」


 で、ヒカリがトイレから出てきたのはいいが、少々面倒なことに、例の彼女の友人たちも一緒だった。

「ヒカリ!」

声をかけると、やや口角を上げた女子の集団から、ヒカリがこっちにやってきた。

「何?」

「ああ、ミサトが今日休むって。それから戸田先生が今日、行けたら部活に行くって言ってた」

「了解」

 後輩のミサトが部活を休むって、昼休みに伝えてきたので、その連絡。それから、部活にあまり姿を見せない正顧問の戸田先生が部活に顔を出したいとのことなので、それを言いにきた。


 部活が終わった後に、ああいうことがあるとは、この時はまだ知る由もない。


つづく

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