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微笑みの春  作者: 蔵人藻袮
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第3話 先日

 なんとかアキさんと親密になりたいと考えていた。

 そして今、アキさんとの普通の会話がある日常ってのが、訪れた。

 先日、数学の授業の時に、アキさんが話しかけてきた。

「ねえ、この因数分解がわからないんだけど……」

確かに、この問題は難しかった。だが、僕はすでに解き終わっていた。まず、同じ2次式を大文字Mに置き換えて、その上で共通因数で括って……、たすき掛けで……。

 意外と面白い問題だった。そう、それは説明し難く、ちょうど今の僕の考えていることのように……。

「で、ここをこうすればいいのよね?————ねぇ」

「……あ、うん。でマイナス3が出て、そんでこうして……」


 肝心なことは、数式を解くことではない。

「ありがとう」

「……うん」

 数学は、得意じゃないのに。おっと、こんなことを言ってしまってはいけない。得意、不得意は客観的に見なきゃいけない。


 そんなことがあって、まあ、アキさんとは毎日のように話すようになった。それは、人気の少ない朝の教室での日常だった。

 夏に近づくにつれ、陽が高くなり、地面が熱を跳ね返す時間帯に外を歩くことを避けたくなるのは必然。その頃の僕は、早い時間帯の電車に乗って登校するような習慣がつきつつあった。

 その時間帯は、都会の方へ通勤する人が多かった。

「……おはよう」

「おはよう、今日は早いね」


 今まで特に考えていなかったが、アキさんはいつも、かなり早く登校している。僕が今まで早登校組に入っていなかったから、誰が何番目に学校に来て……なんてことを意識はしていなかった。

 挨拶をしようかしまいか、心のどこかで迷っている部分がある。いや、そんなんじゃダメだ。挨拶は、人間関係の基本なのだから。


 アキさんは早く学校に来るので、運が良けりゃ2人きりってこともある。

「おはよう」

「おはよう」

「今日はまた一段と暑いね」

 2人きりだからといって、何か特別なことをするわけでもないのだが。

 例えば、柿くんとかが先にいると、彼らやアキさんと会話が弾む————だいたい、アキさんが来る5分前か、3分後に柿くんとかは来る。しかし、2人きりの時は、それほど盛り上がらないことの方が多い。雑談の人数って大切だなと、はたと感じていた。


 そういえば今日は部活がある。部活は月曜と火曜の週2回。で、今日は月曜日。確か、月曜日は園芸部の活動日と重なっている。

 そんなことを朝から考えながら、1日を過ごしていた。

つづく

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