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微笑みの春  作者: 蔵人藻袮
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第2話 帰り道

席替えで、あの人の隣になることができた。が、しかし……。

 隣の席になったから話しやすくなるなんて、全く妄想そのものだった。でも横を向けばその顔が見れる、この喜びは、確かに隣の席にならなきゃ味わえないことだった。

 休み時間に、壁際で友人と話している姿を目にする、それは以前と何も変わってはいない。


 気づけばそんな日々が1週間過ぎた。もっと話をして彼女のことを知りたい、そう思ってはいる。これから先の2週間を逃すことはできない。この期間を逃せば、中間試験の準備に入らなければならないからだ。だからその嵐の前の静かなときにもっと親密になっておきたかった。

 そもそもなぜ、彼女と親密になりたかったのだろうか。自分は彼女のことが“好き”ということなのだろうか。——いや、違う、そうではない。だって好きなら選択肢は1つだろう。圧倒的に攻めるべきだ。しかしそうでないのなら……。気持ちの判別がつかないから厄介なのだ。それ故に、これほど悩ましい。なんて、勝手な解釈をしているのだろう。


 青春って何なのだろうか。友達と馬鹿騒ぎすることが青春なのか。恋人とデートに行くことが青春なのか。——たぶん、どちらも青春だ。

 

 あー、青春したい!

 

 友達や恋人と濃密な時間を過ごすことだけが青春———いや、悩むことも青春だ。だって、仲間のことを深く考えてるのはどれも同じじゃないか。


 6時間目の終業のチャイムが鳴り帰り支度をしていると、隣の男子が話しかけてきた。

 彼の名前は、鈴木シュン。最寄り駅が同じだ。だから、1度だけ一緒に帰ったことがある。趣味の話や流行りの話、あるいは勉強の話をしていた。今話しかけてきたのも、こないだの続きをするためだ。話が弾み、やがてホームルームが始まった。


 また、辻さん、いや、アキさんに話しかける機会を逃してしまった。

 その日は、鈴木くんとそのまま帰った。

 駅に着いて、僕は1人で買い物をしていた。100円ショップの中をうろうろしては、ボールペンがずらっと並んでいる前で立ち止まった。そのままボールペンを物色するわけでもなく、ただ呆然と立ち尽くしていた。また貴重な1日を失ってしまった。


 もうすぐ今日が終わってしまう……。


 なんかそんな歌あったなぁ。今日やらずに先延ばしにする毎日にうんざりはしているけれど、できないんだ。——明日のことは明日になってみなければわからない。

 今夜も月を見てから、カーテンを閉めた。月はただ光っていた、星1つない夜空に。地上では街灯やらビルの灯りやらが煌々としている。

つづく

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