第99話 旅の準備1・女王マルメロ
神樹セフィロトの上にあるマルクト王国に攻めてきたゾンビ達を倒してから一ヶ月が過ぎた。
襲撃の爪痕は未だ癒えず、破壊された土地や建物の復興が続いている。
俺こと、有塚しろ(二十三歳)も魔法ワンオペで鎧兵を召喚して各地の手伝いに追われていた。
円形のマルクト王国の北東にある修道院では、女王マルメロが孤児と戯れていた。周りには近衛兵がいる。
「の〜じゃの〜じゃのじゃ、マルメロは天才なのじゃ〜、金髪碧眼の美少女なのじゃ〜」
クソ歌やめろ。
「わぁ、綺麗な声ー」
子供が感心している。
確かに透き通るようないい声だが、歌詞をどうにかしろ。
「よいか、子供達よ。何か困った時は、のじゃのじゃ言っておけばいいのじゃ」
「はーい」
マルメロが子供達に独自の言語ノジャヒリ語を教えている。やめろ、黒歴史になるぞ。
俺は自宅でため息を吐きながら、漆黒の鎧に大鎌が特徴の聖騎士団アイン団長“ゼロ”を彼女に近づけた。
「女王陛下、少しお話があります」
「なんじゃ?」
「王都の復興はまだ終わっていませんが、我々はそろそろ“セフィラ”を集めるための準備に取り掛かろうと思います」
セフィラとは十個集めると世界が平和になるといわれている宝玉だ。
「……ふむ。遂にか」
前々から女王には言っていた。ゾンビの襲撃のように脅威となる巨獣が来たら国を守り切れるとは言い切れない。だから宝玉セフィラを集めて世界を平和にしようと考えた。
本当に平和になるかは分からない。だが何もせず国が滅ぶのを待つなんてゴメンだ。そこに希望があるならば幻だろうと手に入れるために全力を尽くす。それだけだ。
「お尋ねしたいことがあります。セフィラの在処についてです。何か心当たりはありませんか?」
闇雲に探すには世界は広大すぎる。冒険家ニートンの描いた地図にも載っていないので、何か少しでも手がかりが欲しい。
「すまぬが、わらわにも心当たりはないのう。じゃが、教皇か大司教ならば何か分かるやもしれぬ」
「分かりました。聞いてみます」
「よいか、死ぬんじゃないぞ。わらわの遊び相手がおらんくなるからの」
「もちろんです。聖騎士団アインは国と民を置いてどこにも行きません」
決意を胸に俺は教皇の元へ向かった。




