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【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第3章 王都防衛編

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第77話 北方騎士団団長グレイプニル

 人型巨獣ゴブリンから出てきた謎の蚊巨獣を調査するため、セフィロトの森に鎧兵を放ったものの、その巣どころか他の個体すら見つからず数日が過ぎた。


 ゴブリンと戦った日から雨が降り続いているのもあり、若干憂鬱(ゆううつ)な気分だ。


「はぁ。とりあえず報告だな」


 俺は事前に伝えていた蚊巨獣の調査報告のため、黒鎧の団長ゼロを操作して、女王マルメロのいる王城へ来ていた。


 彼女は執務室にいた。金の長髪を後ろで(まと)めていて仕事モードといった感じだ。宝石のような碧眼(へきがん)をこちらに向ける。


「ゼロか。よく来たのう。蚊の巨獣の手掛かりは掴めたかの?」


「いえ、まったく。仕方ないので探索範囲を広げてみるつもりです。王都及び周辺の住民には引き続き警戒をお願いします」


「うむ。国中に通達しておこう。お主らも気をつけての」


「はい。お気遣いありがとうございます」


 その後、少し雑談して、(きびす)を返した。


 執務室から出て廊下を歩いていると、二十代前半くらいのワインレッドの赤毛の男が現れた。


「おやおや? 聖騎士団じゃん」


 げっ、“グレイプニル”かよ。その男は北方騎士団の団長だ。


 王国には聖騎士団を除いて、元々四つの騎士団があり、国を守護してきたという。中でも北側を守る北方騎士団は猛者(もさ)が揃っている。なぜなら巨獣の出現位置のほとんどは何故か北側に(かたよ)っており、自然と強者が集まる構図になっているからだ。


 彼らは残念ながら聖騎士団をよく思っていない。それは巨獣退治や、神樹周辺の警備など危険を(ともな)う仕事のほとんどを奪われたせいだ。ポッと出の聖騎士団によって誇りを持って行なっていた役職を奪われたら鼻につくのも仕方ないというものだろう。


 若くして団長まで上り詰めたグレイプニル、通称グレイも当然聖騎士団のアンチである。


「グレイ殿か。今日は王城で何を?」


「散歩だよ。聖騎士団のお陰で暇なんでね」


 皮肉である。


「あはは、鍛えた足腰が無駄にならずに済みそうでよかった」


 こちらの皮肉返しにグレイは平然とした顔をしている。どこ吹く風で効いていないようだ。


「せっかく会ったし決闘しようぜ」


 そんな遊びに行こうぜ、みたいなノリで言われても困るのだが。


 こちらが断る前にグレイが愛剣レイピアを抜いた。針のような切っ先がこちらに向けられる。


 緊張が走る中、背後から声が掛かった。


「おい、グレイ。城の中で無闇に剣を抜くな」


 低くてよく通る声が響いた。現れたのは金の長髪の三十代くらいの男。首筋に蛇の入れ墨が見える。


 女王の側近で宰相(さいしょう)の“ルシフェル”だ。


「ピャーッ! ルシフェルさん!」


 グレイが奇声をあげて驚いていた。直後、剣を納めて手揉みをしながらルシフェルに近づく。グレイはルシフェルの狂信的なファンだ。


 以前、彼のどこがいいのかグレイに聞いてみたことがある。グレイ(いわ)く、『声が大きくてカッコいいから』だそうだ。お前は足が速いだけで好きになっちゃう小学生女子かよ。


「いやー、ルシフェルさん、違うんすよ。王都をうろうろするだけじゃあ腕が(なま)っちまうんで聖騎士団さんに稽古(けいこ)を付けてもらおうとお願いしてただけなんすよ」


「ここですることではないだろう。それに聖騎士団は忙しいのだ。諦めるんだな」


 フォロー助かる。


「むーん、仕方ないっすねぇ。また今度にするっす。それじゃあルシフェルさんに嫌われないうちに帰るっす」


 グレイは三下ムーブをしながら去っていった。


 それを見送り、俺は団長ゼロをルシフェルの方に向かせた。


「ルシフェル殿、助かりました」


「気にするな」


 ヘビのような冷酷な視線がこちらに向けられる。ルシフェルは(いま)だ謎の多い男で、聖騎士団に対して一定の距離を置いている。でもアンチというわけではない。多分。


「ところで今日はヘラクレスは来ていないのか?」


 ヘラクレスとは、カブトムシ型鎧兵だ。虫騎士小隊の隊長でもある。


「あいにく今日は私一人です」


「そうか。残念だ」


 最近、ヘラクレスを含む虫騎士達にはわずかに心を開いている感じがする。というのも彼は“虫好き”だからだ。


「明日、私の私室へ来るよう伝えておいてくれ」


 なんだろう、珍しいな。


「分かりました。伝えておきます」


 素直に返事をした。仲良くしておくに越したことはないしな。

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