第73話 デート2・オイチ
踊り子トマティナとデートした次の日。今日は彼女が忙しくて来れないらしい。代わりにもう一人の彼女、占い師イチクジが来る事になっている。
「お・ま・た・せ」
白と黒の縞模様の鎧を着たイチクジが絶妙にムカつく言い回しで屋敷の玄関に現れた。
「おはよう。よく来てくれたな」
挨拶をしていつもの作業部屋に通した。イチクジは、トマティナと違って別部屋には移動せずその場で着替え始めた。銀髪ロングと宝石のような銀の瞳が美しく、触れてはいけない女神像のような高貴さを備えていた。見た目だけは良いんだよな。見た目だけは。
そして彼女は銀色のブラにTバックの状態になった。こんなエロい下着がなんで異世界にあるんだよ。ふざけやがって……ありがとうございます!
神に感謝していると、着替え終わったイチクジがこちらに振り返って一言。
「それじゃあヤりますの?」
一度服を着てから言うとは分かっているな……じゃなかった、おいコラ。朝っぱらから何言ってんだコイツ。
「仕事をやるぞ。手伝え」
トマティナと違い、コイツに対しては基本的に上から目線でいくことにしている。こういうタイプは下手に出ると調子に乗るからな。
「仕方ありませんわね。我慢した方が気持ちよさも一入ですものね」
この痴女を誰かどうにかしてくれ。
若干の頭痛を覚えながらも気を取り直して仕事を始める。
「イチクジ……なんかお前の名前呼びにくいよな」
「生まれ持った名前を全否定……! だけどそこがいいですわ」
ほらな。コイツはちょっと雑に扱うくらいが丁度いい。
「あだ名を付けよう。クズヨかナメクジでどうだ?」
クズヨは元々俺が心の中で読んでた呼称だ。女鎧兵に対して『クズよ』とばかり言うのでそのように命名した。この際、本人に正式に許可してもらうのも悪くない。
「素晴らしい! そんな悪口で、物みたいに扱われたら濡れちゃいますわ!」
涙で頬が濡れるってことだよな!
「……やっぱ辞めとくか。どんなのがいい?」
「そうですわねぇ、チクビなんてどうですの?」
変態かよ。聞いた俺がバカだった。
「絶対嫌だ」
「それではオイチでどうでしょう?」
江戸時代にいそうだな。
「お前にしてはマトモだな。まさかいやらしい隠語とかじゃねぇよな?」
「違いますわ。わたくし自身がいやらしい女なので隠語に頼るなんてしませんわ」
どこからその自信が湧くんだよ。確かにエロいけども。
ともかく、あだ名はオイチに決まり、朝の仕事に取り掛かる。
しばらく作業しているとお腹が減ってきた。
「そろそろご飯食べるか」
「今日は外でピクニックしたいですわ」
「いいけど鎧は着てもらうぞ」
「裸で着てもよろしいんですの?」
ダメに決まってんだろ!
「ケガするから辞めとけ」
「誰かに鎧の隙間から裸を見られるかも知れないという快楽を味わいたいですわ」
だから痴女かよ!
「俺だけに見せたらいいだろ」
「えー、自分の女の裸が誰かに見られるかも知れないって興奮しませんの?」
残念ながら俺はそのレベルに達していない。
「しねぇよ。ヒヤヒヤするだけだわ」
「残念ですわ。あ、それから誰かに抱かれて来いと言われれば喜んで行きますわ。いつでもおっしゃってくださいまし」
「言わねぇよ!」
俺にその特殊性癖はない!
そういえばNo.28蜂型鎧兵ブンブンからNo.99ポテトへ鞍替えしたNTRもどきがあったし、コイツ言われたら本当に誰とでもヤリそうだな。しっかり調教しとかないと。
その後、昼食をバスケットに詰めて、人が居ないのを入念に確認してから外に出た。
オイチが体を伸ばす。
「明るい日差しと、鎧の締め付けと、鎧が体の至る所に擦れて気持ちいいですわねぇ」
「おい。そこにお天道様を混ぜるな。俺の鎧兵を大人のオモチャに使うな。このイケナイ遊びを覚えた令嬢を誰かどうにかしろ」
オレの三連ツッコミが光る。
「その罵倒も気持ちいいですわ」
「それ父親の前でも言えんのかよ」
「言えますけど?」
おとうさーん! 娘さんの教育失敗してますよー!
それから昼食のサンドイッチを食べ始めた。
「なぁ、前々から気になってたんだがオイチの占いってどうして当たるんだ?」
「そう言われても困りますわねぇ。占う相手を見ると不思議と頭に文字列が浮かんでくるのですわ」
魔法なのか? そう言うにはショボいような、そうでもないような。
「今、占えるか?」
「キスしてくれたらいいですわ」
コイツ……隙あらば身体接触したがるな。と言いつつ触れるだけのキスをしてやった。サンドイッチの味がした。
満足したオイチは俺の手に触れて、いやらしい手付きでマッサージを始めた。コイツ今までこんな占い方してなかっただろ。付き合ってなかったらセクハラだぞ。
「……“温泉”、と出ましたわ」
「ふーん。そういえば王都の北に大浴場があるよな。実は貸し切り予約してるから今度三人で行こう」
「いいですわね。男風呂に放り込まれて殿方の視線に晒されたいですわ」
このなんでもエロ変換器どうにかしろ!
そして食事が終わり、食休みを取った後、屋敷で俺は筋トレを始めた。
最近は筋力と体力を鍛えるようにしている。新天地への旅から帰ってきた時、緊張が続いていたのが解けた反動で体中が痛くて数日間まともに動けなかった。それでトマティナの助言もあり、体を鍛えることにしたのだ。
「ふん!」
巨獣加工屋クローザの作ったダンベルを持ち上げる。程よい重さが筋肉に刺激を与えてくる。筋トレ道具は他にも色々とあって、全部クローザ産だ。彼女天才過ぎるだろ。
トレーニングを続けていると、オイチが俺の体を舐め回すように視線を向けてきた。
「いいカラダですわぁ」
お前はジムに居そうなスケベジジイかよ。
オイチに軽蔑の視線を向けていると、彼女が近付いてきて俺の胸の中心からヘソにかけて人差し指でなぞった。だから隙あらば触れてくるなっつの。
「最近、目に見えて筋肉がついてきましたわね」
「そうかな? だったら嬉しいけど」
「素晴らしいチンポですわ」
「“進歩”な! 二度と間違うなよ!」
もうダメだコイツ。ロボトミー手術でも受けさせた方がいいと思う。
その後、筋トレを済ませて仕事も終わる頃には夕方になっていた。
「そろそろご褒美が欲しいですわ」
指を咥えてこちらを見るオイチ。何がご褒美だ。散々人に迷惑掛けやがって。今日は無しだ。
と言いながら彼女を見る。汗で首筋に張り付いた数本の銀髪。物欲しそうな視線。こぼれ落ちそうな乳房。それを見て俺の心は揺れる。
……クソォ、エッチな女でなければ、チキショー、エッチな女でなければぁ。
そして数秒の葛藤の後。
うわあああああ! 俺の理性は消え去っていた。
その後、めちゃくちゃトランポリンした。




