第62話 火山地帯3・サラマンダー戦
コオロギ型巨獣クリケットを使った電車ごっこが飽きてきた頃、遂にゲブラー火山の火口まで来た。と言っても危険なので俺本体は少し下で待機している。今回は様子見だしいいよな。あわよくば倒したいけど。
噴煙の上がる中、鎧兵に火口を覗かせる。煮えたぎる溶岩の内部を紅玉のように真紅の体色をしたトカゲ型巨獣サラマンダーが悠々と泳いでいた。
火口を掘ったり、体を燃やすことで火山を刺激して噴火を起こしているようだ。迷惑な奴だよホント。
「それじゃあ手筈通りやりますか」
回転寿司のレールみたいに同じところを一生グルグル回っているクリケット部隊を突撃させた。
まずは自己犠牲アタックもどきをやってみる。鎧兵をクリケットごとサラマンダーに食べさせ、体内に潜入して内臓の破壊を試みるつもりだ。
敵がルビーのような瞳でクリケットを視認した。溶岩の中をゆっくりとワニのように泳いで近づいてきて、一瞬でエサを飲み込んだ。
「よし! いけるか!?」
しかし、体内に潜り込んだはずの鎧兵は俺本体の元へ一瞬で再召喚されていた。
くそ、溶けたか。体内どんだけ熱いんだよ。これだけ消化が早いなら大食いチャンピオンでも目指した方がいいんじゃないか?
……冗談はさておき、自己犠牲アタックは使えそうもないな。だったらスライムボム改を使うしかないか。
鎧ケンタウロスを召喚して、突撃したクリケットを足場にサラマンダーへと接近させる。
「喰らいな」
敵がクリケットを捕食する瞬間を狙って神樹の樹液とSB改を付けた矢を放った。神樹の樹液は巨獣にとって毒なので何かしらのダメージを与えられるはず。
サラマンダーは矢を視認したものの、クリケットを口に入れた瞬間だったので回避には至らなかった。そして矢が目に直撃して爆発。
……結果は無傷だった。鳴き声ひとつ上げず、何事もなかったようにクリケットを食べている。
涙目にくらいなっても良くない? ドライアイの方?
俺の方が泣きそうになっていると、敵は頬を膨らませて口から火炎放射を吹いてきた。
「ぐわー死んだカブトー!」
「こんなところで死にたくないハチ!」
「死んだセミ」
火口周辺に陣取っていた虫騎士小隊が炭になった。
遠距離攻撃なんて卑怯だぞ!
つーか自己犠牲アタックもSB改も効かないって割と詰んでね? 他に有効そうな策はないし。
……まぁそう言って諦めるならここには居ないよな。
可能性があるとしたら口からSB改を放り込んで溶かされる前に内臓を爆破か。次点で比較的柔らかそうな腹を破壊ってとこだな。
思考を巡らせていると、サラマンダーがまたしても頬を膨らませて巨大な火の玉を撃ってきた。
「やべっ!」
反応が遅れて、縁にいた数十体の鎧兵が爆散した。
クソッタレ、そんな技もあるのかよ。俺もファイアボール撃ちたい人生だったわ。
無力感に苛まれながらも再び鎧兵をクリケットに乗せて突撃させる。
それを見たサラマンダーが溶岩に潜った。数秒後、クリケットの下から顔を出して、腹だけを齧りとった。おい、食べ物で遊ぶなよ!
敵は再び溶岩に潜り、すぐに顔だけ出したかと思うと、口から空に向けて燃える岩石を飛ばした。それが遥か上空で砕けて火山弾が降り注ぐ。
「はぁ!?」
コイツもスフィンクスみたいな全体攻撃あんのかよ!
火山弾は、空気を切るような音を立てながら次々と火口周辺に着弾。クリケットや鎧兵が潰されていく。
そして、幾許もせずに俺の連れてきたクリケット部隊は全滅した。
「くっそー、つえー!」
予想はしていたがやはり一筋縄ではいかない。ただでさえ強いのに地の利も向こうにあるのが厄介だ。どうにか火口から出せないものか。
それと少し肺の辺りが痛くなってきた。噴煙や火山灰の影響だろう。クリケット部隊もなくなったし一時撤退だな。火山ガスも噴き出ているし、中毒死したら目も当てられない。なんか溶岩も垂れてきてるし。
ある程度敵の技を見れただけでもよしとするか。最低限の成果だけどな。
俺は鎧コウモリをサラマンダーの見張りに付けてその場を後にした。




