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【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1章 誕生編

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第34話 やっかいな美女とおじさん

 二週間後。マルクト王国はすっかり元の平和な日常が戻っていた。


 今日は先延ばしにされていた聖騎士団の叙任式典がある。でもその前に大司教に呼ばれたので大聖堂へ向かっていた。


 今の俺は団長ゼロだ。なんと肉入り。こういう時くらい本体が行ってもいいだろう。鎧が重くてちょっぴり後悔しているけど。


 歩を進めていると、奥から若い女と老婆のものらしき会話が聞こえる。


「——好きですわ。ビーチ大司教」


「私もだよぉ」


 唐突な百合展開! んなわけないよな。


「それでは失礼しますわ」


 部屋から出てきたのは銀髪の美女だった。


「あら、ごきげんよう聖騎士様」


「初めまして、ですよね?」


「わたくしはフィグ伯爵家の長女イチクジと申しますわ。以後お見知り置きを」


 (うやうや)しく頭を下げるイチクジご令嬢。うーん、高貴。(けが)したい。ハッ! 俺は何て罰当たりなことを!


 とか考えながらも暫し目が合う。


「きゃっ、そんな見つめないでくださいまし。好きになってしまいますわ」


 顔を両方の手のひらで覆い隠して照れている。かわいい。……あれ? 耳につけているピアス、見覚えあるな。緑色の天狗の葉っぱみたいなやつ。……あ! “クズヨ”さんが着けていたやつだ!


 そういえば声や体型が似ているような。でも同じピアスなんていっぱいあるよなぁ。……ちょっとカマかけてみるか。


 彼女は数秒身悶えた後、一つ咳払いをして元の笑顔を貼り付けていた。


「あ、そうだ。今度、貴族のご令嬢の方々にうちの女団員紹介しようと考えていたんです。やはり女性同士の方が会話が弾むでしょうし、いい交流になると思いませんか?」


 彼女から笑顔が消え、般若のように目つきが鋭くなっている。分かりやすっ!


「へぇ……それは、タノシミデスワ。でも戦場に立つ女性と話が合うカシラ……やっぱり危険でしょうし脱退させてあげた方が……いやわたくしは思っていませんのよ? 女団員はクズ……湯が飲みたいですワワワワ」


 途中で扇風機でも食べた? ってくらい動揺しているイチクジご令嬢。クズさが隠し切れてませんよ。クズヨさん。


「あ、それは置いといてですね、聞きたいことがあるんです。この前、うちのブンブンっていう蜂っぽい団員がですね、凄い占い師に会ったって言うんですよ。今度お礼がしたいって言ってたんですけどなかなか会えなくて、どこに居るか知ってたりしませんか?」


 クズヨさんは打って変わって、オカメみたいにニッコリとしていた。分かりやすっ。


「ええ、知ってますとも。彼女はとてもいい子ですわ。忙しいみたいで今は会えませんけど伝えておきますわ。あと、ブンブンさんとはいずれ婚姻関係を結びたいともおっしゃっていましたわ」


「それは無理ですね」


「いや、貴方ではなくてブンブンさんのこと——」


「ブンブンも無理と言ってました」


 めっちゃ釘を刺す。


「ま、まぁまだ付き合いも浅いですからそう急くこともありませんわね。……さてと。お忙しい殿方のお邪魔をしたくありませんので、わたくしはこれで。式典、楽しみにしていますわ」


 ドレスを少し持ち上げて挨拶をした後、笑顔を向けながら去っていった。この世界、美人ばっかだなぁ。クズヨさんは内面が良ければなぁ。まっいっか。


 ケケケ、ともかく弱みを握ったし、今度イジってやろ。


 俺は兜の下に悪魔的な表情を浮かべながら大聖堂の奥へと進んだ。


 そこには大司教“ビーチ”がいた。白髪の高貴なお婆さんだ。


「おお、ゼロや。よく来たねぇ」


「おはようございます大司教猊下(げいか)。それで御用というのは?」


「ちょいと地下に来てくれるかい?」


 螺旋の階段をくだり、地下に着くと、突然。


「ギェェ!」


 急な獣の鳴き声に全身が跳ねた。声の主を見ると、籠に入った大きなトカゲっぽい生物。びっくりしたなぁもう。


「ゼロや、何をしているんだい? こっちだよ」


 気を取り直してビーチ大司教の方を見ると、背後にミノタウロスの体内から出てきたあの玉が一つだけあった。ただ色がおかしい。エメラルド色とサファイア色が半分ずつになっている。


「もう一つはどこに? それにこの色は?」


「それが不思議でねぇ。偶然二つの玉が触れ合った時に融合してこうなったんだよねぇ」


 へぇ。まぁファンタジー世界だしそんなこともあるか。


「この玉に心当たりはありますか?」


「ふむ、神樹創世記にそれと酷似したものが登場する。“十の宝玉セフィラを集めし時、世界が平定される”とねぇ」


 単純にあと八個か。もし、世界が平和になるとしたら集める価値はある。ここは異世界。そういう神話の宝具があってもおかしくない。


「ゼロよ。余裕があればでいいからこの玉を集めてくれないかねぇ?」


「ええ、心に留めておきます」


 ま、余裕があればね。基本は引きこもりたい。


 それからビーチ大司教と雑談した後、式典の準備のためその場を後にした。


 ——式典直前。王城にある控え室。


 ソワソワする。あと鎧が重くて苦しい。頑張れ俺。


 その時。扉をノックされた。


「ゼロ殿。シトローンだ。少しいいか?」


「どうぞ」


 女王の近衛兵シトローンがのっそりと入ってくる。相変わらず巨体だ。この二週間、お互い忙しくて話す暇がなかったので随分久しぶりに感じる。


「シトローン殿、どうかしましたか?」


「ああ、大事な式典の前に悪いな。……これまでの数々の非礼を詫びさせてくれ。すまなかった」


 深く頭を下げる。(いさぎよ)い。


「気にしないでください。国を憂いてのことでしょう。これからは共に助け合い、民を良き方向へ導いて行きましょう」


「うむ、貴殿の寛大な心遣いに感謝する」


 俺達は固く握手を交わした。意見の食い違いなんてよくある事だ。大事なのはきちんと話し合って互いに尊重し合う事。


「話は変わるが、その、ダーク老師に弟子にするよう頼んではくれないか?」


 またそれかよ。


「無理ですよ。あの人は女性しか弟子に取らないですから」


「ゼロ殿は去勢しているのか?」


 するかー!


「あはは、まさか」


「ダーク老師は女子(おなご)しか取らぬと言うならば騎士団の面々は去勢していてもおかしくないはずだが」


 マジメに語ることかよ。


「昔は私を中心に男衆も鍛え上げていました。ですが、年をとって一層若い女性が恋しくなったのでしょう。今は方針が変わったのです」


 という設定にしとこう。


「では化粧から始めるべきか?」


 もう帰れよ。

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