第26話 一人百役の利点5・占い師クズヨ(仮)再び
ミノタウロスと実験的に戦った次の日の朝。緊張感ただよう日々を過ごしているせいかあまり寝付けなかった。
本体の腹ごしらえのため買い物しようと騎士団No.28蜂モチーフの鎧兵“ブンブン”を商店街に走らせる。あ、また食料を買うのに虫を使いに出してしまった。まぁ蜂はかわいいしセーフ。
謎の俺ルールを発動しつつ、北門から真っ直ぐ進んだところにある商店街に着いた。普段の活気はなく、閑散としている。
現在、国は一部の飲食店を除いて店舗の営業を規制している。まぁ許可されてても普通はやらないわな。いろいろとエネルギー消費しそうだし。それでも開いてくれる店には感謝だね。
「あ、ハチ」
商店街を歩いていると、でかいゴキブリ、じゃなかった紫のローブを着た占い師クズヨ(仮)さんが現れた。クズヨというのは本名ではなく、何かと“クズよ”と連呼するため俺が勝手に心の中で呼んでいるあだ名だ。本名教えてくれないから仕方ないよね。
「フフフ……偶然ね」
待ち伏せしてたように見えたけど。とは言わなかった。いきなり首絞めてきそうだし。
相変わらず、髪、目、口、胴体がローブで覆い隠されており、声と仕草から大人の女性ということしか分からない。ヘドロのお化けですと言われたら信じてしまいそうな見た目。
「占いしてるハチか? 遊んでたら偉い人に怒られるハチよ」
「占いじゃないわ。辻占いよ」
なんだよ辻占いって。辻斬りみたいに言いやがって。おまわりさーん、この人捕まえてくださーい!
「今オイラ忙しいハチ。また今度ハチ」
「……女じゃないでしょうね?」
ちょっとドキッとした。昼に踊り子トマティナに会う予定があるから。と言っても逢い引きするわけではないし、この蜂型鎧兵ブンブンは昼飯を買いに来ているだけで関係ない。
「ただの買い物ハチよ」
「まさかペアのグラスとか服とか買ってイチャイチャする準備じゃないわよね?」
怖いよクズヨさん。手料理に髪の毛とか混ぜそう。
「そんな余裕はないハチよ。今は国の危機だから」
あんまり関わり合いたくないので、さっさと去ろうとすると。
「待って。さっきあなた達を占ってみたの」
占えたのか。とは言わなかった。わら人形を持って五寸釘を打たれそうだし。まぁ前回も“牛”という結果が偶然にも当たっていたし聞いておくか。
「結果、オシドリ、と出たわ」
「オシドリって鳥の、ハチ?」
「そう」
この世界にも居るんだなぁ。まぁパラレルワールドみたいなもんだしな。日本語通じるし。
「オシドリはね、仲良し夫婦の象徴とされているけれどおよそ一年でパートナーを代えるクズよ」
一夫一妻制の国ならそうかもだけど、獣なら種の存続のためにその方が合理的だと思うけどなぁ。とは言わなかった。なんかいきなりナイフで刺されそうだし。
「へぇー。ためになるハチねぇ。それじゃあオイラはこれで!」
そそくさそそくさ。逃げるがハチ、じゃなかった勝ち。
「待って」
仕方なく振り返る。
「ニャンコ、ツチノコ、アリスはクズよ。脱退させなさい」
だからなんでうちの女団員把握してんだよ! それに止めてまで言うことかよ! 振り返って損したわ! 俺の消費カロリー返せ!
その後、ブンブンはどうにかストレスの塊を振り切って買い物を済ませた。はぁ、ムダに疲れたわ。




