第15話 ヒント
調査部隊が全滅してしまい、俺は屋敷の大部屋で頭を抱えていた。しかし落ち込んでいる暇はない。一度女王マルメロに報告へ向かうことにした。
団長ゼロを操作して王城の執務室にいた女王に三つのダム、魔王城のような巨大な巣、大蛇の棲むワニ型の骨について話した。
「うーむ、問題が山積みじゃな」
「巨大蛇に心当たりは?」
その問いに茶髪オールバックの近衛兵シトローン推定四十代が手を挙げた。
「……恐らく“サーペント”だな。白く河川のように長大な蛇。素早く動き、口から溶解液を吐く」
そいつっぽいな。俺の鎧兵も溶かされたし。
「弱点のようなものはご存知で?」
「いや、悪いが心当たりはないな。弱点ではないが胃やその周辺は酸に満たされていて私の仲間も何度か特攻して溶かされたことがある」
何そのブラックな話。聞きたくなかったわ。つーかそれだと俺の得意戦術の口内に飛び込んで内臓をズタズタにする自己犠牲アタックは厳しそうか。はぁ、必勝法がぁ。
「他に妾達にできる事はないか?」
「川を堰き止めている壁及び敵の根城を破壊したいのですが、壊せそうな武器や兵器はありませんか?」
俺の能力ワンオペは鎧兵の数だけ武器を作れるが、爆弾は無理だった。戦車もショベルカーも無理。銃は火縄銃は出来たが、自動小銃みたいな現代的なのはダメ。当然バズーカもダメ。火炎放射器や小さめのドリルのようなロマン武器は作れるのにね。肝心なとこでポンコツ能力。
「ううむ、思いつかんのう。シトローンはどうじゃ?」
「……投石器のような対巨獣用兵器はいくつかありますが、壁を壊せるようなものは皆無でしょう」
……もしかして詰んだ? 地道にツルハシとかで掘削するとして確実に一ヶ月以上かかるよな? 巨獣も倒さないとだし。
しかし、その時。俺に革命的な案が降りてきた。それは——夜逃げ。……うん、まだ早いよな! それは最終手段として、とりあえずサーペントを倒そうか。
「分かりました。別の方法を考えてみます。女王陛下は内乱が起きないよう国の方をお願いします。巨獣は我々だけで何とか対処してみます」
内輪揉めが一番ダルいしな。巨獣の方は下手について来られても人や馬が死んだら胸糞悪いし。
「早くしてくれたまえよ、無敵の聖騎士団諸君。私はもう喉がカラカラだ」
側で順番待ちしていたクソ貴族が皮肉げに発言した。うぜぇ。お前だけは干からびろ。無視して外へ出た。
城の外に出ると日差しが眩しかった。雨降れよ。空気読めないお天道様だな。
しばらくしてゼロが帰還すると屋敷に全兵が揃った。さぁて、ケセド川を攻略しますか。第一、第二ダムの破壊は後回しにして蛇巨獣サーペントを先に討伐する。余裕があれば魔王城みたいなウェアラットの巣も破壊だ。ツルハシで。
よし、出発。と言いたいが本体はどうするか。迷うがやっぱり留守番かな。正直なところ怖い。安全地帯に引きこもりすぎた弊害かもな。また死地に出るには心理的な面でハードルが高い。失敗してもまだ何回かチャンスはあるだろうし、死んだら元も子もないしなぁ。よし、留守番!
そういう訳で俺の警備用の兵を除く九十六体で戦いに挑む。そうと決まったら急いで支度をして出立だ。
北門へ行くと、門番クローザが居た。
「あれ、ドロダンゴいつ帰ってたんだ?」
ぎくっ。サーペントにやられたから門を経由せずに本体の元へ一瞬で帰還したんだった。
「いやぁ、クローザ殿が非番の時にこっそりと帰っていたでごわすよ」
「ふぅん……まさかあーしのこと避けてんじゃねぇだろうな?」
「ま、まさかでごわす! そうだ、それよりも何か大きな壁を破壊する巨獣の武器はないでごわすか?」
一応、巨獣加工屋でもあるクローザに聞いてみた。
「壁ぇ? うーん、あ!」
彼女がいきなりドロダンゴの肩を引き寄せた。体が密着する。胸結構あるな。カメラを拡大して……じゃなかった、話を聞かないと!
「ここだけの話だぞ。巨獣スライムっているよな。ソイツをちょちょいと加工して酒を混ぜて火をつけるとな、燃える液体ができんだよ。ここまでは加工屋ならみんな知ってんだ。でもそれを応用したのがあるんだよ。酒の代わりに神樹を削ったオガクズを混ぜて火を付けるとちょっとした爆発を起こすんだ。一個が手のひらサイズだからそれが大量にあったらどうなると思う?」
「……壁が破壊できそうでごわす!」
「だろ? ま、でも神樹をむやみやたらに傷付けるのは犯罪だ。あーしがやれば、教皇様に怒られて牢屋行きだろうよ」
いや、それなら。
「——ただし、神樹に棲みつく益虫なら話は別だろ?」
そう、“聖騎士団”ならば許されるだろう。立ち入り禁止である神樹の枝先に行くのを許されたこともあった。
「ありがとうでごわすクローザ殿! チューしていいでごわすか!」
「殺すぞ」
ですよね。すみません。
とにかくこれで詰みは回避できそうだ。色々とやる事は増えたがまずは蛇退治といこうか。うっすらとだが、策はある。




