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【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1章 誕生編

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第14話 調査

 会議が終わり、俺はすぐに調査部隊を編成した。二体一組を五部隊だ。全員で行かないのは動きが遅くなるのと、巨獣に見つかるリスクを避けるため。本体はもちろん留守番。


「ほら、地図だ。古いからあんまり過信すんなよ」


 エレベーターガールの短髪赤毛クローザが探して持って来てくれた。


「ありがとうでごわす」


 別に地図は本体が持っているので要らないが、体裁というやつである。


「つーか何でお前が行くんだよ。おデブのお前じゃ馬がかわいそうだろ」


「いやぁ、おいどん土色の鎧でごわすから地面や木の幹に混ざって見つかりにくいんでごわすよ。馬はほら、おいどんに似て大きいから大丈夫でごわす」


 ドロダンゴが乗ってもそこまで速度は変わらない。鎧馬は馬力があるし、疲れないからだ。


「無茶な事はするなよ。死んだら終わりなんだからな」


「もちろんでごわすよ。クローザ殿に会いたいでごわすから」


 キザなセリフ。決まったな。


「気持ち悪りぃな」


 泣いちゃう。


 ともかく神樹の下に降り、第一北門から外へ出た。木の(うろ)から手を振って送り出してくれるクローザにキュンとしながら、先頭のコンビが北東へ。


 巨大樹の林立する森を少し進むと干上がった川に着いた。


 ここが“ケセド川”の支流か。水気は一切なく、水流で削られたであろう角のない石や、U字に抉れた溝が川であったことを裏付けている。


 神樹は四方八方の川や地下から水を得ているらしいが、流量の多いケセド川が一番の生命線らしい。うーん、ついてないねぇ神樹ちゃん。


 二頭の馬は川を挟むように配置して並走させる。急にどちらかの鎧兵が消えても原因が突き止めやすいと考えたから。他の四部隊は五分おきに出立。


「カラッカラッだなぁ」


 干上がった川には、無数の大小様々な丸い石が転がっているだけ。時折、獣の鳴き声らしきものが響いてくるがそれ以外は異常なし。そのまま数時間走り、支流の合流地点が見えてきた。


「何だろ、あれ」


 川の先、茶色く巨大な壁が見える。近付くと木や土砂、泥などを積み重ね、乱雑に作られたものだと分かる。“天然のダム”とでも言うべきそれは、恐らく巨獣によって作成されたものだろう。


 うわっ。


 壁を眺めていると、モンスターの顔があった。それは木の巨獣ドリアードのものだった。恐らく製作者である巨獣が殺して組み込んだものだと思う。恐ろしや。


 ダムの周囲の川沿いを観察してみると、根元しかない木や、ひらがなの“つの字”型に幹を削られた木があった。刃物で切ったというより何かに(かじ)られたと表現するのが適切だと思う。


 木を齧る、ダム……ってなると“ビーバー”しか思いつかないなぁ。


 手元のニートン巨獣記簡約版をめくる。お、最後のページにそれっぽいの載ってんじゃーん。


 名前は“ウェアラット”。挿絵を見る。齧歯(げっし)類しかりとした顔、平たい尻尾。大きさと禍々(まがまが)しさを除けばほぼビーバーだな。


 ええと、他は……ダムで水量を調整して近くに巣を作る、だって。


 ダムの裏側、つまり上流側を覗く。しかし、巣らしきものはない。それどころか水気もなく干上がった川の跡が続き、石ころが転がっているだけ。


 うーん、放棄されたっぽいな。ここが川の涸れた直接の原因ではないみたいだ。さらに上流へ行く必要がある。


 とりあえずここを“第一ダム”と呼称しよう。二があるか分かんないけど、多分上流にもう一個くらいあるだろ。無かったら“一番凄いダム”にします! 我ながら素晴らしいネーミングセンスだなぁ! ……それはさておき、地図に印を付けて鎧兵を上流へ向かわせた。


 しばらく川に沿って進むとまたしても捨てられたダムを見つけた。やっぱあったな。考えて作れよ。公共の場を独占してはいけません。ぷんぷん。


 しかし、今度は変化があった。裏側を見ると濡れた石が溢れていた。お、少しは水が来ているか? でもこれじゃここと第一ダムを破壊しても意味ないな。


 ここは“第二ダム”とし、さらに上流へと向かう。


 ん? 川の先に何か見えるな。第二ダムからはしばらく直線が続くのだが、先の方に黒か茶色っぽい山の先端みたいなトンガリが見える。何か嫌な予感。とにかく調査のため先へ進む。


 ちょろちょろと水が流れているのを横目に馬を疾駆させていると尖った山の全容が見えてきた。


 なんだ、こりゃ……。


 他のダムと同じく土や泥、生物の骨などで構成されているが、それらよりも天を裂く塔のように高い。ふと頭に思い浮かんだのは“魔王城”。それぐらい歪で邪悪な要塞。……これがウェアラットの巣かな? こんなもんあったらそりゃあ水も流れて来ないわな。


 顔を引きつらせながら下へと視線を移すと、第三のダムを発見した。水圧の弱いシャワーのように川の水が隙間から流れている。


 うん? ダムの手前に何か白くて巨大な物体があるな。近付くと、それは“骨”であった。ワニっぽい形の巨大な骨が川のど真ん中を占有していた。顔はこちら側、つまり下流側を向いている。当然、尻尾は向こう側でダムの手前まで伸びている。


 巨獣の骨っぽいな。邪魔くせぇ。まぁ無視してもいいだろ。魔王城とダムさえ破壊すれば——。


 その時、俺本体の背後で物音。振り返ると、調査に出ていた鎧兵と鎧馬が帰ってきていた。


 えっ。自壊はしていない。だとしたら——。


 慌ててモニターに目をやる。しかし、またしても物音。もう一体もやられていた。


 くそっ、何してんだ俺! 目ぇ放すなよ!


 五分後、別働隊が到着した。今度は慎重に周囲を窺う。多分、巨獣の仕業だよな。調査兵の一人に剣を抜かせ、自身の腕に何度も叩きつけた。甲高い金属音が辺りに響く。これで出てくるはず。


 すると、石が転がる音がした瞬間、川にあるワニ型の骨の中から巨大な白い鞭状のものが出現して、いきなり謎の液体を射出。直撃した鎧兵を一瞬で溶かした。


「あはは、マジかよ」


 それはキングコブラのような頭部付近が扁平(へんぺい)に広がっている大蛇であった。大蛇といっても巨獣なので一般的なそれではない。まるで龍を思わす巨体だ。


「たはは、こりゃ強そうだ」


 ワニの骨に棲みついてそうだし、倒さないと魔王城と第三ダムの破壊は無理臭い。調査兵だけでは荷が重いし、退治はまた次だな。今日は兵を近くに忍ばせて観察に徹するか。


 だが次の日、俺が寝ている隙に全ての兵が再出現させられていた。

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