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【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ  作者: 一終一(にのまえしゅういち)
第1章 誕生編

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第12話 勘違いな日常5・近衛兵シトローン

 酒場の踊り子トマティナに嫌われて傷心状態の俺。いや、俺は嫌われてない。嫌われたのはエアロだ。エアロなんだあああ!


 ……数分後、わずかに立ち直った俺は、黒鎧の団長ゼロを操作していた。今日はこれを最後に街の探索を打ち切るつもりだ。色々と疲れたもんね。


 たどり着いたのは王都中央の城のすぐ北側にある一番街。


 一〜三番街は貴族街で、城を囲むように存在しており華やかな建物が所狭しと並んでいる。


 貴族とも仲良くしないとと思ってここに来たが、一番めんどくさそうなのがこいつらだよな。常にマウントの取り合いや腹の探り合いしてそうなイメージ。下手なことしたら政治に利用されそうだ。やだやだ。


 それはともかく、この辺歩いてたら貴族のご令嬢とか出てこないかな。そして仲良くなってイチャイチャしてゆくゆくは正体を明かして結婚。なーんてな。ぐふふ。


「そこの男! 止まれ!」


 突然の怒声に全身が震えた。前方に衛兵らしき屈強な男が二人。俺の妄想ラブコメを邪魔しやがって許さんぞ。


「兜を脱げ」


 出たよ。第一声はいつもそれだ。


「悪いが掟でそれは出来ない。私は聖騎士団アインの団長ゼロだ。女王陛下から自由に行動することを許されている。通して貰おう」


「知らんな。貴様が偽者ではないという証拠は?」


 ククッ、仕方ないなぁ。ここに聖騎士団の紋章が——ない。そういえば式典まだだし証拠が何にもねぇ! よく今まで許されてたな!


 困っているとさらに人影。鉄の鎧を着込み、馬に乗った巨躯(きょく)の男が現れた。


「何をしている」


「あ、シトローンさん!」


 シトローンと呼ばれた四十代くらいの大男は、玉座の間で女王の横にいた近衛兵だ。茶髪をオールバックにしており、猛禽(もうきん)類のような鋭い目付きが恐ろしい。


「聞いてください。このゼロという男、兜を脱がないんですよ。偽者かも知れないのに。それでも通せというんです」


「……そうか」


 シトローンは落ち着いた低い声で呟き、ゆっくりと馬を降りた。近くで見ると物凄く巨体だ。気圧(けお)されていると、いきなり剣を振るってきた。


「うおっ!」


 とっさに鎌で弾く。攻撃されたら防御しろとプログラムしておいてよかった。手動操作ならジ・エンドだったな。


 シトローンは俺の反応に満足したのかすぐに剣を引いた。


「ふむ、本物のゼロ殿だろう。斯様(かよう)な草刈り器を扱えるものは二人とおるまい」


 草刈り器いうな。死神の鎌だぞ。中二病のマストアイテム。かっこいいだろ。


「わ、分かりました。シトローンさんが言うなら大丈夫でしょう」


 どうやら彼は結構慕われているらしい。まぁこの見た目でピエロやってますとか有り得ないよな。それはそれで面白そうだけど。


 ともかく通してもらった。シトローンに礼を言い、そのまま先へ進もうとすると呼び止められる。


「少し、話せるか?」


 真剣な面持ち。俺は頷いた。


 二人になり、静かな貴族街を道なりに進む。シトローンは馬から降りて手綱を引いている。本物の馬はかわいいなぁ。


 いや、俺の鎧馬さんもかわいいけど? 鎧兵と同じく中身はないけど、暑い時とか触れるとひんやりしていて気持ちいいんだぜ。戦闘力はもちろん低いから、よく巨獣に潰されて腐ったユッケみたいな鉄塊になっちゃうけども。


 ちなみに今は居ない。街の入り口に見張り付きで繋いである。馬に乗っていると必然的に目線が高くなるので高圧的に見えるかなと思ったから。


「今日は女王陛下について居なくてもよろしいのですか?」


 俺は素朴な疑問をシトローンに投げかけた。


「ああ、非番でな。別段必要なかったが、陛下がどうしてもと言うので仕方なくだ。だが私としてはじっとしているのは性に合わない。だからこうして街を巡回しているのだ。特に今は(せわ)しないしな」


 俺達が来たせいでね。


 それにしてもシトローンは近くで見ると威圧感が凄い。身長2メートル近くありそう。鎧の隙間から覗く首も太くて、鍛え上げられているのが分かる。いくつも修羅場をくぐり抜けてきた歴戦の猛者って感じで憧れるなぁ。


 つーかまた斬りつけてこねぇよな? こんなムキムキなおじさんに何度も攻撃されたらさすがの鎧兵でもヤバそう。


 そんな緊張の中、無言が続く。マズイ、話題がない。二十歳くらい差がある場合の会話って何するの? 恋バナでもしたらいいの? 俺の手持ちの恋バナなんて知らない美女に絵画買わされそうになったくらいしかないけど行けるか? 行けねぇよ。というか早く用件を言ってくれぇ。


 それから少し歩いていたら、ようやくシトローンの方が話し始めた。遅ぇよ。


「……私もお前達と同じく一時巨獣狩りをしていた。だが、一度たりとて犠牲が出なかったことはない」


 普通はそうだよな。


「しかし、お前達はどうだ? 一人も死なず、ケガをしている様子もない。どう考えてもあり得ぬ。それこそ魔法でも使わぬ限りな」


 ぎくっ。な、なんのことかなー?


「あはは、ただ練度が高いだけですよ」


 苦しいか。


「核心には触れられぬか」


 ごめんなさい。


「まぁいい。だが、いくら統率の取れた軍隊とはいえ、百人も居れば問題を起こす者も出よう」


 バカめ、全員俺だから問題は起きないのだ。


「団長である私がさせませんよ」


「口ではいくらでも言える。現にお前達が居るだけで既に問題だ」


 それは確かに。


「……聖騎士団のこと、若き女王陛下には荷が重い。ただでさえ王家の血が絶えようとしているのだ。これ以上負担を与えたくない」


 ううむ……。


「……去れ若造。この国に貴様達は必要ない」


 うーん、手厳しい。ただ気持ちは分かる。怪し過ぎるもん俺。警察がいたら数歩歩くたびに職質されるレベル。


 シトローンは、それだけ言い残し、馬に乗って去っていった。


 やっぱ簡単に受け入れられる訳ないよな。ま、ゆっくり頑張ればいいか。時間は無限にあるし、人付き合いは長い目で見ないと。


 だがしかし、そんなのん気な俺を追い詰めるように事件が起きる。


 次の日のこと。国中の水が湧かなくなった。

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