第112話 暗黒迷宮ビナー1・ジャックオーランタン戦
シラユッキから驚くべき真実を聞かされて頭の整理はつかないものの、時間がないので残り二つのセフィラを集めるべく早々に出発した。
冒険家ニートンと共に隠れ里ダアトより北西にある巨大な洞窟に着く。
「ここは“暗黒迷宮ビナー”だドン。中は迷路のようになっているドン」
「暗黒迷宮の“暗黒”って必要か?」
「カッコいいだろドン」
「確かにそうか」
まぁ中二病からしたら重要だよな。
さて、どうするかな。
「危険だからニートンはここで待っていてくれ」
「いやだドン。勝手に行くから気にするなドン」
まぁそうなるか。
「じゃあ道案内を頼めるか?」
こっちの方がいいよな。監視できるし。
「お安い御用だドン。ただ、まだ全部の道を踏破している訳じゃないんだドン。だからセフィラのありそうないくつかの場所まで案内するドン」
「それで構わない。行こう」
ブラックホールでも想起させるような闇に包まれた出入口から中へと入り、光る石やキノコに照らされた迷路を進む。
T字路に差し掛かった時だった。ドスン、ドスンと一定のリズムで重いものを落としたような音がする。
緊張が走り、道を凝視していると煌々と光る巨大物体が横切った。
追いかけて曲がり角から恐る恐る覗いてみると、光るデカい“カボチャ”がいた。そのままカボチャの馬車に出来そうなくらい大きい。
「ニートン、あれは?」
「“ジャックオーランタン”だドン。食べると美味いドン」
長いな。カボチャでいいだろ。
「無視でいいか?」
「いや、食料になるし、殺しても一日は発光し続けて道標にもなるから倒しといた方がいいドン」
道標に関しては鎧兵がいるから要らないが、カボチャは食べたいし狩っとくか。
「分かった。倒すから下がっといてくれ。それと弱点はあるか?」
「ヘタの部分を壊せば簡単に死ぬドン」
なら属性鎧兵一体で余裕かな。火属性の爆弾は洞窟が崩落する危険性があるから使えない。なら風属性で跳んで弱点をひと突きで行くか。
すぐに召喚して風鎧兵を敵の背後へ走らせる。真後ろに到達した瞬間、ノミみたいにジャンプ。剣を突き立てるように切っ先をヘタに向ける。
石を割るような音が鳴り、剣は刺さったものの、敵が死んだ気配はない。浅かったか。
追撃をしようとすると、カボチャがジャンプして振り落とされてしまった。鎧兵が落下して地面に転がる。壊れはしなかったが、叩きつけられた音によってカボチャの動きが止まる。
「ブェブェブェ」
カボチャが便秘のカエルみたいな声を出してコチラを向いた。三角に空いた目と鼻。ギザギザの口。ハロウィンの日に飾りたいねぇ。
俺が買わないのにチラシを見て感想を述べる暇人のようなことを考えていると、敵が自身の三倍くらいの高さでジャンプした。
やばい、のし掛かる気だ。
慌てて風鎧兵を起こして避けようと試みる。だが、それは叶わずに潰される。ちきしょう、こんな狭い所で暴れるんじゃないよ!
クソッ、たまには初見の一対一で勝たせろよな。
萎えた俺は十体ほどの鎧兵を召喚して終わらせに掛かる。
しかし、それを拒否するようにカボチャが横になって車輪のように回転タックルしてきた。えぇ、そんなのも出来るのかよ。
十体の鎧兵達は回避行動を取ろうとするも、狭い通路なのでアワアワしているだけで間に合いそうもない。そしてガーターのない子供向けの仕様により見事ストライクを決められた。一体ぐらい生き残れよ。クソ。
苛立ちながらも、今度は“土鎧兵”を二十体召喚。戻ってきた大車輪カボチャをソイツらで受け止める。
前の方の何体かは一瞬で砕けるも、砂のようになり、敵の勢いを殺していく。
そして、カボチャは砂に嵌ったタイヤのようにその場で回転するだけのオブジェと化した。やがて疲れたのか、完全に停止して虚空を眺めている。
ふぅ、諦めたか。じゃあ遠慮なく調理してやる。
何体かの鎧兵がカボチャのヘタを突いて絶命させた。動きの止まったタイヤをパンクさせるなんて楽勝だぜ。
とはいえ結構苦戦したな。あー、たまには無双してぇ。
「大丈夫だったかドン?」
俺が嘆いていると、ニートンがやってきた。
「問題ない。後でカボチャを食べよう」
そう言って、俺達は先へと進んだ。




