第104話 コクマー岩壁群1・ハーピー戦
属性鎧兵でゴーレムを倒した俺は、コクマー岩壁群を探索していた。
鎧兵に岩壁の間を探らせていると、岩が砕ける音が響く。
「なんだぁ?」
画面を注視すると、岩を突き破って巨大なミミズが現れた。ジェットコースターのレールくらいの大きさで、クネクネしている。
とりあえず“岩ミミズ”と名付ける。我ながら天才的センスだな。
これぐらいなら普通の鎧兵で簡単に倒せる、って思うじゃん? 残念ながらうちの鎧兵ちゃんは、ちょっとデカいのにぶつかるだけで死んじゃうんだ。
トホホ、って感じのリアクションをとっていると、突如として巨大な影が横切り、岩ミミズが巨大な生物に鷲掴みにされた。
「な、なんだ!?」
見上げると、岩壁の出っぱりに人と鳥を合わせたような巨獣がいた。両腕が翼、両足がワシのようになっている。とりあえず“ハーピー”と呼ぶことにしよう。
「空飛ぶ巨獣か。厄介だな」
王都に現れた光のゾンビ以来だ。こんなとこにも飛行タイプがいたとはな。ここはエサが豊富だから移動しないってとこか?
ハーピーは岩ミミズを鳥が啄むように食いちぎっている。
「はぁ、トラウマが蘇るねぇ」
光ゾンビとの戦いが脳をよぎる。あれは本当に終わったと思ったからなぁ。
あれ以来、空飛ぶ巨獣の対策を考えていた。
「色々とやってみますか」
気合いを入れて、まずはクロスボウで牽制。
「キェェェェ!」
奇怪な声を発したハーピーの羽ばたき攻撃。空中の矢は吹き飛ばされ、さらに下の鎧兵達が壁に叩きつけられる。
ま、予想通りか。俺は慌てることなく、属性鎧兵である“風鎧兵”を操作する。
風鎧兵は鎧の周囲に風を纏った兵だ。それだけでなく他にも特徴がある。その一つが高くジャンプできることだ。
どれくらい跳べるかというと、二階建て一軒家を悠々飛び越せるほどだ。これがまぁまぁ助かる。小さめの巨獣に対しては顔を直接攻撃できるし、尻尾攻撃なんかは跳んで躱せる。
この岩壁群においては、岩を簡単に登れるのがメリットだ。自動操作でも融通が効く。ただ、もちろんバグもあって、壁を上手く登れずに下へ落下してガラスコップのように粉々になる兵もいる。
何体か落下しつつも、風鎧兵をノミみたいにピョンピョン跳ばし、岩壁を登らせてハーピーへと接近した。
「キェ、キェェ!」
敵はノミを嫌がる犬のように暴れて風鎧兵をはたき落としていく。
その間に俺は別働隊を集めて魚群のような塊を作っていた。
ハーピーがそれに気づく。
「そーら、こっちだぜ」
俺は部隊を操作し、岩壁の迷路を縫うように移動させた。敵はなんの疑問も持たずに追ってくる。
そしてたどり着いた先は、行き止まり。
敵は追い詰めたと思い込んで怪しく笑う。そして羽ばたき。
またしても吹き飛ばされる鎧兵達。なすすべなく、岩壁に激突。しかし、今度はバラバラにはならなかった。
“木属性”の鎧兵を使って、岩壁に花のクッションを敷いていたのである。
木鎧兵は盆栽みたいな姿をしているが、花を咲かせることもできる。ソイツらを敷き詰めて緩衝材にしたというわけ。
「キェェ!」
ハーピーは鎧達を倒せなかったのを見て、業を煮やしたのか近づいてくる。
「ここだ!」
俺が叫ぶと同時、岩壁の上に潜ませていた何十体もの風鎧兵が敵へ向けて落下した。
空を飛ぶヤツってのは高度を下げたらいいのさ。ドヤ顔をしながら心中で呟いた。
「キェェ!?」
ハーピーは降り注ぐ鎧兵に気づき、急上昇するもそれは悪手。次々と兵が体にくっついた。
さらに崖の上に連れてきていた火鎧兵も飛び掛かる。
爆発。敵は翼が燃えて自重を支えきれずに地面へ叩きつけられた。
「畳み掛けろ!」
体勢を立て直す間も与えず、周囲の鎧兵総出でタコ殴り。そして、ハーピーはすぐに動かなくなった。
ふぅ。勝てたけど、空飛ぶ敵ってめんどくさいな。出来ればもう戦いたくない。どうかセフィラを取り込んでいるのが飛ぶタイプの敵じゃありませんように。
その神頼みを打ち破るように突然の高音。
「クェェェェ!!」
甲高い鳥のような声が響く。
「な、なんだぁ!?」
声の方を見ると、四足歩行のワシっぽい巨獣。神話にいる“グリフォン”をイメージした。体の色は灰色で、宝石のように光っている。この特徴的な輝く体色、間違いない。セフィラを飲み込んでいる。
俺は息を呑み、戦闘態勢をとった。




