第103話 属性鎧兵
神樹セフィロトの北東にあるケセド川。そこはかつてミノタウロスと死闘を繰り広げた場所だ。
いま俺は川を遥か北に行った先の“コクマー岩壁群”というところにいた。ほぼ垂直に聳える岩壁を首がもげそうなくらいの角度で見上げる。
「俺本体は登れねぇよなぁ」
途中で転落死する自信がある。
ビルのように立ち並ぶ岩壁同士の間には大小様々な道があった。人一人が通れる程度の隙間から、ジャンボジェット機が悠々通れそうな大通りまで幅がある。そして中は迷路状に入り組んでいることが想像できる。
「うーん、通りたくもない」
落石が怖いし、巨獣と戦闘になったら逃げ場も限られる。仕方ない、俺本体はここで留守番して鎧兵に任せますか。
ちょうど試したいことがあるし、それをやろう。最近新たな鎧兵が増えた。名付けて“属性鎧兵”。火、氷、土、風、雷、木の六種類のヘンテコ鎧兵が召喚できるようになったのである。
「お、ちょうど良さそうな敵発見」
前方に灰色で岩のようにゴツゴツした人型の巨獣が闊歩していた。初めて見る敵だ。
「“ゴーレム”って感じだな」
ゴーレムと名付けた敵へ新鎧兵を差し向ける。
まずは火属性だ。炎に包まれた燃え盛る鎧兵を召喚した。いやー、かっこいいねぇ! 焚き火にも使えちゃうんだぜ。
火属性にしたNo.1のファイアが突撃する。火と言えばコイツだよな。火は熱いぞー、お前は耳たぶないから冷やせないぞー。
「ガオ?」
ゴーレムが不思議そうに頭を傾けている。可愛い子ぶってんじゃねぇぞ人類の敵め。
ファイアはゴーレムの足元に着くと、有無を言わさず、燃え盛る剣で斬りつけた。直後、敵は炎に包まれた、ことはなく、ちょっと焦げ目がついただけだった。やっぱダメよな。
「ガオン!」
ゴーレムがひと鳴きして、ファイアを踏みつけた。さらに地面に落としたタバコの火を消すかのごとくグリグリと踏みにじられて死んだ。
うん、一体だとそうなるわな! ……よし、次!
次は氷属性だ。魔法の氷でできた鎧兵を召喚した。いやー、ひんやりしてていいねぇ。暑い日には鎧の端っこを砕いて飲み物に入れよう!
地面をスケートのように滑って敵に近づく。
「この速度、簡単には踏めないだろー?」
が、何事もなかったように踏まれ、シャーベットになった。
「せめて滑って転けろよ! くそっ!」
気を取り直して、次は土属性だ。土は壁になる。壁ドンしたい時に使えるぞ!
砂色の土鎧兵を突撃させる。
「ガオ!」
石ころでも飛ばすように蹴られる。土鎧兵は、砂煙のようになって空へと溶けた。うーん、詩的。
次!
風属性の鎧兵。緑色で体の周りを風が渦巻いている。コイツは扇風機代わりになるぞ! 夏にそうめんでも食べながら使いたいね!
「ガオオ!」
また蹴られる。風鎧兵は紙飛行機のようにどこかへ飛んで行った。お、普通のより飛ぶねぇ! 今度スーパーマンごっこでもやるか!
……うーん、次!
続いて雷属性。黄色で体に紫色の雷を帯びている。コイツは電気マッサージ代わりになるぞ! 疲れた時に便利! 風呂に入れれば電気風呂だ!
「ガオオオ!」
踏まれる。パチパチと音が鳴る。ちょっとビックリするからやめて欲しい。
次!
最後は木属性だ。幹のような肌で頭に松の葉の塊のような枝が生えている。まるで盆栽だ。部屋に彩りが欲しい時に重宝しそうだね!
「ガオオオオ!」
蹴られる。枯れ葉を踏んだような乾燥した音を立てて壊れた。
……いやー、属性鎧兵くんは面白いなぁ!
ま、ここだけ見ると属性鎧兵ってゴミにしか思えないよな。でも実はそうではない。応用すればいくらでも使いようがあるのだ。
代表的なのは火属性。コイツは“爆弾”になる。これにより、スライムボムという有限の物を使わなくて良くなった。
さっそく爆弾兵をゴーレムに向かわせた。
「ガオ!」
敵は何の疑問も持たずに踏みつけてきた。所詮は畜生だな。疑問を持たない。
踏んだ瞬間、爆発。火炎が蛇のように立ち昇る。
「グォ!?」
ゴーレムは驚きの声を上げて尻餅をついた。火の勢いが収まり、視界良好になる。敵の右足は吹き飛んでいた。
「これで終わりだ!」
畳み掛けるように火鎧兵を突撃させる。敵に組みついた瞬間、眩い光に包まれて破裂した。
花火大会の佳境のように連続で爆音が響く。
煙が晴れると、ゴーレムはただの砕けた岩と化していた。
「余裕だったな」
一人ドヤ顔。決めポーズでもとっちゃおうかな、と考えていると。
「ガオオオオオオ!」
ゴーレムの大群がこちらに向かってきていた。さっきの爆発音で気付かれたらしい。
マジかー。デメリットといえばこの爆音だよな。気を付けないと。
その後、問題なく勝ったが、すげーダルかった。




