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あなたを救いに未来から来たと言うヒロインは三人目ですけど?  作者: 氷純
第三章 シュレーディンガーのチェシャ猫たち

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第19話 ラブコメ作戦始動

 目の前には駅の雑踏。

 番匠と大野さんが話している。

 俺の傍らには笹篠がいた。

 無事に戻れたらしい。


「白杉? 何ぼんやりしてるのよ。あまりここに長居してると、クラスの子がやって来て噂を立てられちゃうわよ?」


 私は構わないけど、と笹篠が笑いかけてくる。

 俺は構うけど、構ってられないんだよね。


「笹篠、俺はちょっと電話をかけてくる」

「電話? どこに?」

「迅堂に。クリスマスプレゼントを渡しそびれているから、三人で水族館に行こう」

「……私も貰ってないんだけど?」

「二人に渡すんだよ」


 微妙な顔をしている笹篠に、大野さんが同情の視線を向けた。


「白杉君さー、そういうところが二股なんだって」


 視線が痛っ!

 番匠が肩をすくめる。


「三学期、覚悟しとけ?」

「迎え撃ってやるよ」

「まぁ、クリスマスに渡さないとクリスマスプレゼントとは呼べないし、気持ちは分からないでもないがな。付き合ってはいないんだろ?」

「一応、断っている」


 番匠が俺を指さしながら大野さんに問う。


「セーフ? アウト?」

「余裕でアウトでしょ」


 視線がきっつい!

 笹篠が苦笑気味に手を振った。


「いいわよ。クリスマスに白杉を独り占めできるとは思ってないし。なんだかんだで、昨日も四人で過ごしたしね」

「明華がそういうなら――四人?」

「俺、電話をかけてくる!」


 三股男にランクアップした予感!

 その場を立ち去り、物陰でスマホを取り出した俺は迅堂に電話をかける。


『先輩! なんです? クリスマスに迅堂春の声が聞きたくなりました? しょーがありませんねー!』

「笹篠と水族館に行くんだけど合流す――」

『いま何所ですか? 乱入しますよ! 二人きりのクリスマスなんて断固阻止させてもらいます!』

「駅前の本屋で合流な」

『いま行きます! 絶対に、二人きりにならないようにしてください! 襲われますよ? クリスマスの笹篠先輩は襲ってきますよ?』


 襲ってはこないよ。名前呼びはするけど。

 すぐにこっちに来ると宣言した迅堂が電話を切る。

 とりあえず、これで迅堂とは合流できるはずだ。

 笹篠と迅堂の安全の確保はこれで出来る。


 次の問題は、海空姉さんとは相談ができなかった本家の異変の方だ。

 迅堂が死んだ後、海空姉さんが俺のスマホを遠隔操作して問答無用で過去に送る。

 情報共有の約束をした後ですら起こるこの異変は、まず間違いなく海空姉さんに何かがあったからだ。


 想像はつく。

 笹篠と迅堂の経験した世界線の話と総合すると、海空姉さんは自殺に見せかけて殺される。そのトリガーになっているのは笹篠か迅堂の自殺だ。

 おそらく、笹篠と迅堂は俺の死を回避するために海空姉さんが選定して『ラビット』を送っている。その譲渡のルートを国が発見して、海空姉さんが『ラビット』の開発者だと特定されたのではないか?

 つまり、トリガーである二人の死を回避すればいいはず。


 いいはずなんだけどな……。

 俺は海空姉さんに電話をかける。


「もしもし、海空姉さん? 外に出れる?」

『無茶を言うね。今の本家の状態は分かっているだろう?』

「だよね……」


 忘年会やら親族会議やらで大忙しだ。明日には竹池のおじさんを筆頭に旅館の再建に関しての話し合いもある。


「それじゃあ、今日の夕方、そっちに手伝いに行くよ」

『それはありがたい。使える人員を少し用意しておこう。庭の掃除だけでもやってしまいたいからね』


 あまりしつこく警告でもして、春の笹篠のようにチェシャ猫に襲われても困る。これが干渉できる限界だろう。


 もともと、迅堂が家族と過ごすのを優先するから水族館でクラゲのイルミネーションを見ることはない。

 笹篠と迅堂の自殺が起きる世界線でも、今日の日没までは海空姉さんの安全が確認できている。電話で酒の買い出しを頼んできたくらいだし、タイムリミットはその後だろう。


 通話を切り、できるだけ冷静に状況を俯瞰する。

 打てる手は打ったはずだ。


 あとは……ラブコメかぁ。やるしかないんだけどさ。

 スマホをポケットに入れて、笹篠たちの元に戻る。


「笹篠、迅堂も来るってさ」

「クリスマスだし、一緒に居られる時間を見過ごすはずはないわよね」


 番匠と大野さんの視線はあえて無視する。


「本屋で待ち合わせだから、一緒に行こう」

「分かったわ」

「番匠と大野さんはデートを楽しんできて。また三学期に」


 二人と別れて、俺は笹篠と共に本屋へ向かう。


「……迅堂さんは今日、クラスメイトと遊んでいるからプレゼントの用意はないはず――」


 ぶつぶつと何か作戦を立てている笹篠の独り言は聞こえないふりをしておく。


「ねぇ、白杉、私のプレゼントは家に置いてあるのよ。焼肉の臭いがつくのは嫌だったから。だから、迅堂さんを送った後でうちに来てくれる?」

「分かった。送っていくよ」


 迅堂を送った後である必要はないよね、なんて言わない。

 本屋に到着してほどなくして迅堂がやってきた。うまい具合にバスに乗れたらしい。


「楽しいクリスマスをお届けする迅堂春、見参!」

「退散なさい」


 端的に切り返す笹篠に、迅堂は動じない。

 迅堂は笹篠の目の前に仁王立ちする。


「笹篠先輩は今まで白杉先輩と一緒にいたんじゃないですか。つまり、これからは迅堂春のターン! 交替して後退してください!」

「全身で前進あるのみよ!」


 なんでラップバトル始めてるの?

 未来人二人にこのままラップバトルさせると収拾がつかないので、早めに仲裁しよう。


「水族館に行こうか。クリスマスだし、混んでるかもしれない」


 二人の間に割って入って、駅を指さす。


「……せっかく勉強したのに」

「……辞書引いてきたのになぁ」


 だからだよ。

 なんでこの二人は変な勝負で決着を付けようとするんだ。

 ちょっと呆れつつ、俺たちは三人で駅の改札をくぐり、水族館に向かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] あの時に海空も、とは想定してなかったな…手口ってかどうやって近付いたかが気になる。 巴相手じゃないのに二人っきりとか普通するかな? 猫る条件って電話口で相手に言ってもOKなんだろうか?
[一言] そうか二股バレバレスタートなのか 人命がかかってるとは言えきっつw
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