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あなたを救いに未来から来たと言うヒロインは三人目ですけど?  作者: 氷純
第三章 シュレーディンガーのチェシャ猫たち

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第6話 クラス会

 一夜明けてクリスマス。

 クラスの打ち上げなのかクリスマスパーティなのかよくわからない集まりの開催である。


 午前十時というやや早い時間に駅前に集まったクラスメイトは十七名。不参加もちらほらいるが、集まったほうだろう。

 焼肉屋の座敷を貸し切っての打ち上げだけあって、男子の出席率がいい。

 俺の隣で番匠がオレンジジュースコーヒー割りという得体のしれないものを飲んでいる。


「思うにさ。男子の出席率の高さがうちのクラスの残念さを物語るよな」

「なんでだよ」

「クリスマスだぜ? 彼女が居たら来ないだろ。実際、女子は半数が来てない」

「あぁ、それか。女子は女子で別のところで打ち上げやってるらしい」


 笹篠からの情報だけど。


「というか、その話で言ったら番匠と大野さんがいるのが意外だな」

「は? なんで?」


 番匠が視線を合わせずにすっとぼけてくる。

 俺は空気を読める破壊神なので気にせず返す。


「付き合ってるだろ。お前ら」

「いや、ないし」


 番匠が苦笑しつつオレンジジュースコーヒー割りをテーブルに置く。

 俺は肉を皿に盛りつつ、情報の出所を告げる。


「俺の親戚と昨日の夜に会ったんだ」

「へぇ」

「中学生なんだけどさ。大野さんの妹がちょうど同じクラスにいるわけよ」

「オッケー、悪かった。タンマ。許してくれ」


 肩を掴まれて案外真剣な顔で制止されたので、仕方なく内なる破壊神を封印する。

 番匠が周囲を見回して会話を聞かれていないか確認した後、俺にだけ聞こえるように声量を落とした。


「白杉だけは敵に回さないことにするわ」

「俺の親戚、笹篠のことを明華姉さんって呼ぶくらいに懐いているから、笹篠も敵に回さない方がいいぞ」

「お前ら、もう親戚ぐるみの付き合いしてるの?」

「ちょっと語弊があるな。付き合ってはいない」

「爛れてんなー」

「ほぉ、俺を敵に回すのか?」

「悪かった。飲み物はいるか? 野菜も食えよ?」


 パシリを手に入れた。正直、あまり使い道がない。

 それにしても、貴唯ちゃんからの情報でカマをかけてみただけのつもりが、マジネタだったとは。

 でも、このクラスでもう八か月も過ごしているわけだし、カップルも成立するよなぁ。


「実際、白杉は笹篠さんと付き合ったりしないのか? それとも、一年生のあの子が本命?」

「さらっと二股かけてるみたいに言わないでくれない? どっちの告白も断ったよ」

「……断った? それであの状況なわけ? それなら、なおさら彼女を作らないと状況が改善しなくね?」

「割とそれ思う。我思う」

「韻を踏んでる場合じゃないだろ」


 断っているはずなのに不誠実な状況なんだよ。

 でも彼女を作るという選択肢もないんだよ。


「恋愛相談なら乗るぞ? もうバレてるなら、こっちも惚気られるし。ダブルデートとかできるし」

「ややこしくなるか、胃が痛くなるかのどちらかだからデート云々はなし」


 男二人でこそこそ話していたのが目についたのか、大野さんに声をかけられた。


「ねぇ、二人ともちょっと来て」


 大野さんに手招きされて、俺は番匠と顔を見合わせる。

 そっと座敷を抜け出して、廊下に出る。そこには、笹篠が壁にもたれて立っていた。

 どういう状況だろうか。

 大野さんが座敷を振り返り、誰もついてきていないのを目視確認する。


「人の気配はなし、と。明華にばれてたから、白杉にもバレてるかなって思ってさ。二人の様子を見てたんだけど、バレたよね?」


 大野さんが具体的な内容は言わずに確認してくる。

 俺は笹篠に目配せをする。

 笹篠がスマホの画面をこちらに向けて左右に振った。画面には貴唯ちゃんと表示されている。


「うん。番匠とのことなら、知ってる」

「やっぱりかぁ」


 苦笑して、大野さんは番匠の腕を引っ張って耳打ちする。

 番匠の顔が緩んでいるのに気付いた大野さんが苦笑を深めた。


「オッケー?」

「俺は賛成」


 大野さんの何らかの提案を番匠が飲んだらしい。

 笹篠が立ち上がった。


「決まりみたいね?」

「共犯ね」


 笹篠には根回し詰み、と。

 三人からの視線を向けられて、俺は財布を出した。


「抜ける?」

「白杉君は空気読めすぎ。四人で抜けよ。みんなには悪いけど、やっぱクリスマスデートをしたくってさ。明華と共謀したわけ」

「このメンツで抜ければ、みんなは番匠君と大野さんが私と白杉の監視と調査のために抜けたと思うでしょう。カモフラージュになるし、私は白杉とクリスマスデートができる」


 利害が一致しているってことか。


「決まりだ。会費と一緒にちょっと多めに会計役に渡してくる」

「私たちはもう渡してあるわ。番匠君は白杉の後に渡しなさいね」

「了解。てか、女子側はこういう時の結束力凄いな」

「明華と白杉君が絡んでると、決まるの早いんだよ」


 俺と笹篠ってクラス公認だったの?

 座敷に戻って会計役に早退を告げて、会費に色を付けて渡しておく。

 何事かを察した会計役が千円返してきた。


「一人身の俺から、恋人アリのお前に軍資金だ。……合コンのセッティングを頼みます」

「ごめん、無理」


 ばっさり断ると、会計役の男子は「ですよねー」と笑った。

 座敷を出て、そのままお店を出る。

 外で待っていた笹篠と大野さんと合流してすぐ、番匠が店を出てきた。


「こうもあっさりと計画通りに進むと、なんか笑えてくるな。あいつらにはちょっと悪い気もするけど」

「みんな楽しくやっていいのよ。クリスマスなんだから」


 店を離れて駅へと歩き出す。先に抜けておいて、同じ町で遊んでいるとクラスメイトに見つかりかねないからだ。

 番匠が声をかけてくる。


「どうする? ダブルデート行く?」

「お前な。大野さんはお前と楽しみたいんだよ。二人っきりで行け」

「ありがとう。明華たちはどうするの?」


 大野さんに聞かれて、笹篠は俺の手を取った。


「せっかく独り占めできるんだから、当然デートに行くわ」


 まぁ、こうなると思ったけどね。

 俺と笹篠がここで解散っていうのも、番匠や大野さん的には幸先が悪いだろうし。


「ということらしいから、ばいばい」


 俺は番匠と大野さんに手を振る。

 少し苦笑気味に、二人は俺に応じて手を振った。

 駅の改札を抜けて、俺は笹篠と並ぶ。


「どこに行く?」

「水族館よ。夏にも行ったあの水族館」

「クラゲのライトアップをやってるから?」

「なによ。白杉も調べてあったんじゃない」

「なんとなく、こうなる気がしてたんだ」


 ホームに入ってきた電車に、俺は笹篠と一緒に乗り込んだ。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] クラゲのライトアップ。 世の中にはそういうものもあるんですね! にしても付き合っているのを隠す感覚がいまいちわかりません。 隠しているのを見ると、どっちか浮気症なんじゃないかと邪推し…
[一言] >オレンジジュースコーヒー割り ヤバい!自分では飲みたく無いけど他人に飲ませてみたい! 因みに砂糖と間違えて塩を入れたコーヒー(ミルクなし)は飲めなくも無いけど飲み干したくない微妙な不味さ。…
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