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あなたを救いに未来から来たと言うヒロインは三人目ですけど?  作者: 氷純
第二章 燃える運命は回避できない

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第23話 死亡ルート

 空を見上げる。

 まだ台風の影響を受けていない十日の空は多少の雲があるものの晴れていた。

 キャンプ場の見回りがてら、各所に設置してある照明の点検をした帰りだ。時刻は午後六時。そろそろ暗くなり始める頃合い。

 管理小屋に歩いていると、迅堂が薪割りをしているのが目に入った。


「迅堂、代わるよ」

「もうちょっとなので、大丈夫ですよ。薪を束ねる方をお願いします」

「了解」


 以前とは逆に、俺が薪を束ねていく。

 迅堂は慣れた様子で薪割りを終えると、斧にカバーを被せて片付け始める。


「先輩、なんか今日一日、悩んでません?」

「悩み多き年頃だからな」


 前の世界線では国兎信を名乗っていた外国人が波理否を名乗っていることに不信感を抱いて悩んでいたが、いまはさらに迅堂の死とバンガロー放火、小品田さんの死を回避するべく悩み中だ。

 まぁ、方針は決まってるんだけど。

 火の玉とやらが現れるのが何時か分からないという問題もある。


「悩み多き年頃ですか。恋に悩みはつきものですけど、行動に移すことで解決することもあるかもしれません。案ずるより産むが易しと言いますよ。さぁ、告白をどうぞ!」

「恋の悩みではないな」


 ばっさり切り捨て、まとめた薪を持ち上げる。


「そういえば、薪が売れたのか?」

「近所の別荘に滞在中のご家族が買っていきましたよ。焚火の組み方を教えるとか何とかで。その後、マシュマロを焼くって言ってました」

「へぇ」


 近所って言っても徒歩五分くらいあるけど。



 夜が来たので二徹を覚悟のブラックコーヒー一気飲み!

 カフェインを味方につけ、ブラックコーヒーよりなお黒い夜の帳へレッツゴー。

 なぜか迅堂付きで!


「で、なんでついてくるのかな?」


 トイレを済ませて外に出て、出待ちしていた迅堂に話しかける。


「結局ぼかされてしまった先輩の悩みを聞き出すためです」

「俺が死ぬとかじゃなく?」

「あ、気付きましたか?」

「強引すぎるし、気付くよ」


 でもマジか。このやり方だと死ぬのか。

 迅堂は俺がどこにもいかないようにと袖を掴んでくる。

 前の世界線、略して前世の俺は突如駆けだしたりしたんだろうか?


「名探偵スキルが開花しつつあるこの迅堂春の読みが正しければ、先輩は火の玉を探ろうとしています」

「ほぉ。詳しく」

「先輩がどこで、火の玉を知ったのかを聞く方が先です」


 迅堂が真剣な顔で見つめてくる。

 まぁ、そうなるよな。


 四六時中一緒にいる迅堂が火の玉を知らない。俺だけが持っている情報なんてそうはないはずだ。まして、迅堂は今までのループで情報収集に励んできたのだからなおさらである。

 嘘をついて迅堂の混乱の引き金を引くのは得策ではない。情報の裏どりをしようとして死亡する可能性が高くなる。だが、嘘でもつかないと迅堂は引き下がらない。


 俺は脚を止めて、迅堂に向き直った。

 迅堂が俺を見て覚悟を決めたように息を詰める。


「いいか、迅堂、はぐらかすわけでも何でもなく、誠実に答えるぞ。――話せない」


 迅堂は一瞬眉をひそめたが、すぐに肩の力を抜いて俺の胸に弱弱しく頭突きをしてきた。頭を俺の胸に押し付けながら悔しそうにため息をついて俺の服を握りしめる。


「なんですか、それ」

「誠実に答えた結果だ」

「……先輩が話せないということは、それが一番効率がいいってことなんでしょうね」


 諦めたように肩を落として、迅堂は俺の服を引っ張る。


「それで、都合よく私から情報を得ようとしているわけですよね。ダブスタの自覚はありますか?」

「ある」

「堂々と言いきりますね。まったく……」


 ため息をついて、迅堂は俺から離れるとバンガローに歩き出した。


「まぁ、こちらもたいして情報は集まってませんけどね。まず、今夜の三時ちょっと過ぎに先輩が失踪します」

「その時、俺は一人だったのか?」

「はい。一人でした。私とバンガローでゲームしてて、トイレに行ったあと戻ってきませんでした」


 このまま迅堂も起きているなら眠気覚ましにゲームに付き合ってもらおうかと考えていたけど、そんな未来が待ってるのか。


「遺体は?」

「発見できませんでした。完全に行方不明です。前後の状況からして、その、死んじゃっていると思うんですけど」

「まぁ、俺が失踪する理由なんてないからな。事故か事件でしかないだろ」

「ですね。挙句の果てに、翌日には小品田さんたちのバンガローが炎上してしまって、台風の影響もあっててんやわんやの大騒ぎです」

「バンガローの炎上ってことは火事だよな? 小品田さんたちの安否は?」


 前回の世界線で経験済みではあるが、俺の死によって変動するかもしれないと思い、質問する。

 迅堂は俺たちが今夜泊まるバンガローの扉を開けて答えた。


「全員無事です。ただ、放火だったようですね」


 小品田さんが生きてるのか。

 俺の死で引き起こされたバタフライエフェクトかな。

 迅堂と一緒にバンガローに入り、扉を閉める。つい消火器を目視確認してしまうのはご愛敬。

 迅堂がキャンピングチェアに座って口を開く。


「バンガローの消火活動中に、斎田さんが火の玉を見たんです。キャンプ場の西の方、森の中をゆらゆらと光が動いていたそうです」

「なるほど、それで迅堂は俺が火の玉の正体を突き止めようとして返り討ちに遭ったと仮説を立てて、この時間に戻ってきたわけだな?」

「正解です」


 迅堂の情報を考えると、やはり火の玉の正体が気になるな。

 斎田さんがバンガローの炎上時に見たのなら、その火の玉は付近を闊歩していることになる。それに接触しようとすれば、殺害されるが遠目に見る分には殺されることがない。


 波理否さん曰く、大学生グループの男性から火の玉の目撃情報を得ている。つまり、波理否さんに火の玉を教えた小品田さんか大塚さんも生き残っている。

 だが、迅堂が観測した火の玉を調べる俺は行方不明。俺が経験した前の世界線で迅堂がバンガローの炎上時に誘拐、殺害されたのもおそらくは火の玉が原因だろう。


 犯人と断定していいと思うが、動機がさっぱり分からない。

 俺か迅堂を殺すのが目的か。バンガローへの放火に関与しているのか。

 ただ、火の玉がキャンプ場の付近で見かけられるのなら、俺や迅堂が直接接触する必要なんてどこにもないのだ。


「迅堂、監視カメラを仕掛けて見ないか?」


 提案すると、迅堂は一瞬キョトンとした後、両手をポンと合わせた。


「その手がありましたね。明日の朝に斎田さんにお願いして買ってきてもらって、火の玉の出現位置に隠しカメラを仕掛けちゃいましょう」

「決まりだな」


 これで、重要情報を得られる。

 ――そう期待していた。

 その夜、小品田さんが失踪、翌夕、焼死体で発見された。


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― 新着の感想 ―
うそーん。どないなっとんねん この話せない戦略そう何度もは使えないよな。どっか合間を見て辻堂の前でこれ見よがしにコソコソ電話するとかして何かしら情報源がある、、、?みたいな邪推をさせたりとかした方がい…
[一言] うわっ!? 蝶々仕事し過ぎw 繰り返す度に状況が変わりすぎて、何の参考にもならねー。
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