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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
9/1949

第9話 女神ソレイユ(4)

「スプリガン、ですか」

 陽華の話を聞いたソレイユは神妙な顔でそう呟いた。

「はい。昨日私たちを助けてくれた人なんですけど、自分のことをそう言ってました」

 陽華がソレイユの独白に言葉を返し、その後に明夜が言葉を続けた。

「しかもいま陽華が話した通り、その人不思議な力を使うんです。それにスピードやパワーも人間離れしていて、まるで――」

「光導姫のようですか?」

「ッ! ・・・・・・はい」

 ソレイユの指摘に明夜は頷いた。そう、それは明夜が昨日彼の戦いを見て覚えた印象だった。まるで自分たちのようだと。

「それであなたちは私の元を訪れたのですね。光導姫としての力を人間に与えられる()()()()()

「「はい」」

 二人はそろってソレイユの言葉に頷いた。二人がソレイユの元に来たのは、スプリガンのことをソレイユが知らないかどうかだ。スプリガンはまるで光導姫のような力を使っていた。ならば、人間にそのような力を与えられるソレイユなら何か知っているのではないかという寸法だ。

「そうですね。確かにそのスプリガンというものが『力』を使っていたのなら、私が何か知っているのでは、となるでしょう。――ですが、すみません。そのような人物を()()()()()()()

 しかし、陽華と明夜の期待していたような答えはソレイユから返ってこなかった。

「そもそも、そのような怪しげな人物がいるとは私も今初めて知りました」

 ()()()()()()()()ソレイユは二人の疑問を否定した。

「そ、そうですか・・・・・」

 ソレイユの言葉を聞いて、あからさまに肩を落としたのは陽華だった。明夜は確かに少し残念がっているが陽華ほどではない。

「じゃあ、スプリガンは一体何者だとソレイユ様はお思いですか?」

「わかりません、というのが正直な所です。しかし、光導姫ではないのは間違いないでしょう。光導姫とは女性、少女しかなれないものですから」

 明夜の質問にソレイユはそう答えた。そして、そのまま言葉を続ける。

「その人物は守護者しゅごしゃでもないでしょう。守護者は人間離れした身体能力はあれど、光導姫のような特別な力はありませんから」

「あ、あのソレイユ様、その守護者って何ですか?」

 陽華が一体何のことかといった感じで、ソレイユに質問する。隣の明夜も知らない言葉だ。

「ああ、すみません。あなたたちには、まだ説明していませんでしたね。守護者とは文字通り、光導姫を守る存在です」

「ええー!? そんな人たちがいるんですか!?」

「というか、私たちまだ一回も会ったことないんですけど!?」

 ソレイユの説明の陽華と明夜はびっくり仰天だ。二人ともそんな人たちがいるとは露程にも知らなかった。

「はい、いるのです。陽華と明夜がまだ彼らと会ったことがないのは、あなたたちが相手をしている闇奴の危険度が低いからでしょう」

 その後ソレイユは二人に詳しい説明をした。いわく、闇奴にも危険度のランクがあり、二人が相手をしているのは実は危険度の低い闇奴なのだということ。守護者は危険度の高い闇奴の相手をしている光導姫の元へ駆けつけることなど。

 ソレイユの話を聞いた二人はまたしても驚いた。自分たち以外にも光導姫がいるのかと。ソレイユは実は光導姫は世界中におり、また闇奴も世界中でレイゼロールの手により、発生していることも説明した。

「・・・・・私、驚きすぎて訳わかんなくなってきたよ明夜」

「・・・・・私もよ、陽華」

 驚愕に驚愕を重ねた二人は真っ白になっていた。

「ごめんなさい。本当は初めに色々なことを説明したかったのですけど、あなたたちが光導姫になったのは特殊でしたから」

 何分あの時は時間がなかった。その他にも様々な要因が重なり、このような説明をする機会がなかったのだ。

「ですが、昨日の闇奴のことは私のミスです。あの闇奴はまだあなたたちが相手をするには少し早すぎました。どうやらレイゼロールがあの闇奴のランクを細工していたようです。そのことは本当にすみません」

 通常ソレイユは闇奴の危険度、ランクによってその実力に応じた光導姫に闇奴の場所を知らせる。昨日の闇奴はソレイユが確認した時点では、陽華と明夜でも対処可能だったが、昨日のことを考えるとレイゼロールが何か小細工をしたのだろう。そのために、ソレイユは二人の命を危険にさらした。

「そんなソレイユ様が謝ることじゃありません! あれは私たちのミスです!」

「そうです! ・・・・・私たち心のどこかで楽観視してたんです。私たちは絶対に大丈夫だって。でもそのせいで私は死を前にしました。スプリガンが助けてくれなかったら私は死んでたと思います」

「陽華・・・・・」

「だから私は彼に助けてもらったこの命で、今度はもっとたくさんの人の力になりたいんです。もう楽観視なんか絶対にしません!」

 陽華は真っ直ぐにソレイユを見て力強く自分の思いを宣言した。そんな陽華を見た明夜も、何か思うところがあったのだろう。明夜もソレイユに向き直った。

「私も、私ももう油断なんかしません! そのせいで私は自分を陽華を失いたくなんてない!」

「二人とも・・・・」

 その決意を覚悟をソレイユは確かに感じた。元々、彼女たちは善意で光導姫になってくれたのだ。時には命を失うかもしれないその役割を彼女たちは二つ返事で引き受けてくれた。昨日、まさに死に直面したというのに、二人はこう言ってくれたのだ。二人の真摯な目を見た瞳を見たソレイユはふっと笑った。

「どうやら杞憂だったようですよ・・・・?」

「「?」」

 ソレイユの独白に二人は一体どういう意味かと考えたが、二人にはその意味は分からなかった。

「・・・・・二人の覚悟はしっかりと伝わりました。スプリガンなる者のことも何かわかり次第、あなたたちに伝えましょう。――陽華、明夜、改めて光導姫になってくれて、ありがとうございます」

 その言葉とソレイユの柔らかな笑顔に陽華と明夜は目を大きく見開いて、すぐに破顔した。

「「はい!」」












「・・・・・ごめんなさい二人とも」

 陽華と明夜が地上に帰った後、ソレイユは罪悪感に襲われていた。

 二人には嘘をついてしまった。ソレイユはスプリガンのことと正体を知っている。なにせ、陽華と明夜が来る前はそのスプリガンこと、帰城影人がこの場所に来ていたのだ。

「ですが、影人のことは私以外には誰にも知られてはならないのです・・・・」

 その独白が虚しく虚空に消える。そうスプリガンの正体は自分以外には知られてはならない。特にレイゼロールには。

 影人はソレイユの切り札だ。そしてソレイユにはレイゼロールに対する切り札がもう一つある。それが陽華と明夜である。

 陽華と明夜は歴代最高の光導姫としての資質がある。二人がその資質を発揮し、今まで以上に成長すれば、あのレイゼロールも浄化できるだろうとソレイユは考えている。

 そして、そんな二人を影から守るのが影人だ。影人は二人の専属の守護者であり、そのための力もある。

「・・・・・やはり、最低ですね私は」

 少年少女たちに戦いを強いる自分に思わず嘲笑がこぼれる。だがそんなものは何千年も前から分かっていることだ。

「・・・・せめて、祈りましょう。それしか、今の私にはできないから」

 ソレイユは3人のために祈りを捧げた。

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