第8話 女神ソレイユ(3)
光の輪を潜った先にあったのは、眩いばかりの光に満ちた空間だった。その暖かな光を感じるのは、陽華と明夜は初めてではない。陽華と明夜はここで光導姫として戦うことを決めたのだ。
そしてその空間の中央に彼女、いや彼の女神は存在していた。
桜のような色の美しい長い髪の女性である。まるで光のベールのような服を身に纏い、瞼を伏せたその姿は神々しいほどに美しい。
その顔の造形も女神の名にふさわしく、超がつくほどの美女である。陽華と明夜より少し年上にしか見えないその外見に、二人はしばし見とれていた。
「――久しぶりですね、陽華に明夜」
二人が見とれていた女神、ソレイユは瞼を開くと、柔らかな眼差しで二人を見た。
「あ・・・・お、お久しぶりです! ソレイユ様!」
「で、です! ソレイユ様!」
ソレイユに話しかけられ、陽華が慌てて言葉を返し明夜もそれに続いた。二人の様子が少しおかしいことに気づいたのだろう、ソレイユは不思議そうに二人を見た。
「あら? そんなに驚いてどうしました二人とも? どうかしましたか?」
「い、いや! どうもしてませんよまったく!?」
「そ、そうですよ! ソレイユ様があまりに美しすぎて見とれていたなんてことはありません!」
「ちょっと明夜!?」
「あ! いやですね!? ・・・・・えへへ」
つい本当のことを口走った明夜に対し、陽華がつっこみを入れる。明夜はしまったというような顔で、誤魔化しの苦笑いで陽華を見た。
そんな二人のやり取りで、陽華と明夜が自分に見とれていたことを知ったソレイユは、とても嬉しかった。
「ふふっ、そうですか! 私は美しいですか! そうですよね! 私、仮にも女神ですし! ということは、やはりあの子の性根がひん曲がっているというか、感性がおかしいのですね! ざまぁみやがれです!」
ソレイユは両手を頬に当てながら、ニヤニヤとした顔で喜びを隠しきれなかった。なにせついさっき、久しぶりに自分の姿を見せて自分が年増ではないと、ある前髪の長すぎる少年に証明しようとしたところ、その少年はソレイユを見て「相変わらずの若作りだな、ババア」と、ソレイユをブチ切れさせるような言葉を言われたばかりなのだ。正直、数百年ぶりに人間に殺意を覚えた女神である。
だが、やはりあの子は素直ではなかっただけなのだろう。その証拠に、素直な二人がこう言っているのだ。きっとあの子も、人間でいうところの思春期というやつで素直になれないだけなのだ。そう思うと途端にかわいそうに思った女神である。
「ソ、ソレイユ様・・・・・?」
「ど、どうかなされましたか?」
二人ともソレイユのこのような一面を見るのは初めてだったので、どのように反応してよいか分からなかった。
「い、いえ別に・・・・・こほん! 改めて、よく来ましたね二人とも。本日は何か用ですか?」
ソレイユはすぐさまいつもの威厳ある女神の顔に戻ると、陽華と明夜に慈愛に満ちた笑顔を向けた。
「あ、はい! 実は――」
陽華はソレイユになぜここを訪れたのかを説明した。




