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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
71/1999

第71話 対決、レイゼロール下(1)

 レイゼロールの剣がスプリガンの体を貫こうとする。

 これで終わりとレイゼロールは確信した。

 だが――

「っ・・・・・・・・・・?」

 あとほんの1ミリというところで、剣の切っ先は硬質化した闇で阻まれた。

「これは・・・・・」

 気づけば、スプリガンの体から自分と同じように黒いオーラのようなものが揺蕩い始めていることに、レイゼロールは気がついた。

 ふらりとスプリガンの左手が、自分を持ち上げているレイゼロールの手首に触れる。

 死に損ないの怪人は、信じられないような力でレイゼロールの手首を掴んだ。

「ぐっ・・・・・!?」

 ボキリ、と嫌な音が手首から響く。久しく忘れていた痛みという身体の信号に、レイゼロールは思わず手を離した。

 そして、バックステップでスプリガンから距離を取る。

「ゲホッ! ゴホッゴホッ! ・・・・・・はあ、はあ、はあ・・・・・」

 スプリガンは嘔吐えづくように息を吸い込み、激しく呼吸を求めた。

(何だ・・・・・? いったい何が起こった?)

 レイゼロールは恐らく折れているであろう手首の骨に、闇の力を注ぎ骨を修復した。この程度のダメージは1時間もすれば勝手に直るが、今は戦闘中だ。そのため、レイゼロールは体力を激しく消耗する回復を使ってでも、そのダメージを修復したのだ。

 レイゼロールは最大限の警戒をしながら、周囲に闇の腕を数十本ほど現界させる。さらに造兵も数十体ほど出現させた。

 それらは全て未だに激しく呼吸を繰り返すスプリガンめがけて、攻撃を仕掛けた。

(ちっ・・・・・・・流石に我も体力が厳しくなってきたが、まだ退くわけには行かん)

 まだスプリガンを殺せてはいない。あの不安因子を排除するために、今宵レイゼロールは面倒な力を使う罠を張ったのだ。成果を得られぬまま、撤退するのはいい結果とは言えない。

「はあ、はあ、はあ・・・・・・邪魔だ」

 腕が今にも影人を掴もうとする。造兵たちの武器が影人を殺そうと襲いかかる。

 だが次の瞬間、それらは全て無残に切り裂かれた。

「!?」

 これには流石のレイゼロールも目を見開いた。何せ、レイゼロールの眼を持ってしても、斬撃がほとんど見えなかったのだ。

 ゆらりとスプリガンはこちらに左手を伸ばした。すると、虚空から鋲突きの鎖が恐ろしい速度でレイゼロールに向かってきた。その数およそ20本ほど。

(言葉なし? どういうことだ?)

 スプリガンは力を使う際、必ず言葉を発していた。言葉を発していたということは、それが力を使うのに必要なステップだということだ。でなければ、わざわざ言葉を発していた理由が分からない。

 だが今スプリガンは言葉を発していなかった。

 それが意味するものとは――?

 鎖の対応はある程度は追加召喚した闇の腕に任せ、残りは全てレイゼロールがたたき落とした。

 自分と同じような黒いオーラは闇で身体能力を強化している証だろう。それに力を使うのに必要であった言葉の不要化。先ほどまでのスプリガンとは何かが違う。

(・・・・・・奴に何かが起こった。そしてそれは我にとって厄介なものだろう。ならば、そのことを踏まえればいいだけだ。次こそは奴を殺す)

 レイゼロールが剣に闇を纏わせる。恐らく、今のスプリガンならば闇の力で身体の硬質化も出来るだろう。ならば、闇の力を破壊力に変えるのがベストな選択だ。

 レイゼロールはその瞳に警戒の色を灯しながら、スプリガンを見つめた。

 スプリガンが左手を真横に伸ばす。いつのまにか、スプリガンの右手の剣はレイゼロールと同じように、闇を纏っていた。レイゼロールもいくら闇で身体を硬質化しようとも、あの剣によるダメージは避けられないだろう。

 スプリガンは俯いているため、その表情を窺い知ることはできない。体から立ち上る黒いオーラと合わせて、レイゼロールにはその光景が不気味なものに見えた。

 スプリガンが手を伸ばした先に闇の渦のようなものが出現する。

 何かしらの攻撃が来るとレイゼロールは剣を構えた。

 だが、攻撃はやってこない。代わりに、スプリガンはその闇の渦の中に消えていった。

「いったい何だ・・・・・・・・!」

 この世界から忽然とスプリガンが消えた。その突然の事態にレイゼロールの表情にも困惑の感情が浮かび上がる。

(あれは転移か? それならばスプリガンはどこかに逃げた? もしくは――)

 レイゼロールが可能性のある答えに辿り着こうとしたとき、何の前触れも無く背後に気配が生じた。

(ッ!? やはり転移による攻撃か・・・・・・!)

 レイゼロールは振り向くと同時に剣を振るった。

 超反応によるカウンター。神速と呼んでも差し支えない一撃。

 だが、その一撃をスプリガンも同じく超反応で回避した。

(これを避けるだと・・・・・!?)

 レイゼロールの見開いた眼がスプリガンの金の瞳を捉える。

 その眼の中心には闇が揺らめいていた。

(闇で眼を強化しているのか・・・・・・!)

 スプリガンの超反応の理由を悟ったレイゼロールだが、時は既に遅かった。

 スプリガンの剣がレイゼロールの体を切り裂いたからだ。

「ぐっ・・・・・・・!」

 一応、体は闇で硬質化していたが、やはり今回はあまり意味を為さなかった。

 右袈裟に斬られた場所から、赤い血が飛び出す。レイゼロールの血は闇奴や闇人とは違い、ごく普通の色だった。

 影人の攻撃はそれだけでは終わらなかった。影人は縦に剣を水平にすると、剣をレイゼロールの体に突き刺した。

「がっ・・・・・!?」

 剣で腹部を貫かれたレイゼロールを激痛が襲う。だが、それすらもまだ序の口だった。

 スプリガンはレイゼロールに突き刺さった剣のつかを思い切り蹴った。

「ッ~~!?」

 先ほどとは比べものにならない激痛を味わいながら、レイゼロールは吹き飛んだ。

 スプリガンの身体能力に加え、闇によって強化された蹴りは、人間の形をしたものを吹き飛ばすのには十分な力があった。

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