第319話 夏の到来、しばしの日常3(3)
「もったいない事この上ないねー。人間なんだかんだ見た目より中身だって言うのに。まあ、少年くらいの年頃なら見た目が1番強いモテ要素だもんね。でも私は少年がイイ男だって知ってるからさ。恋人が欲しくなったらいつでもアタックして来てよ。・・・・・・・・・すこぶる残念だけど私から少年にアタックしたら条例に引っかかるかもだから」
「最後の言葉がえらく現実的ですね・・・・」
水錫のトーンの重い付け加えにそんな感想を漏らしながら、影人はプラモデルコーナーの物色を続けた。
(しっかし、どれにするかね・・・・・・・・・・町の個人店だからけっこうなレアキットも残ってるが、最新のキットも捨てがたい。悩む、悩むが・・・・・・・ここはレアキットで行くぜ!)
影人が物色していたのは、いわゆるガ◯プラコーナーで、影人はそのコーナーからとあるプラモデルキットを手に取った。それは今からおよそ10年ほど前に発売されたキットで、今では中々手に入らないものだった。
「あ、水錫さんこれお願いします。――でもそれを言うなら水錫さんもイイ女ですよ。そこらの男の見る目がないだけでしょう」
「本当、少年は出来た男だよ。マジで惚れちゃうかも。――お、グリーンフレームとはお目が高い。少年分かってるね」
水錫は影人が持ってきたプラモデルをそう評すると、そのプラモデルを袋に入れた。影人は千円札を2枚とこの店のスタンプカードを財布から出した。水錫は「まいど!」と明るく言うと、お金を受け取り影人におつりを返した。そして影人のスタンプカードにスタンプを押していく。
「へへっ、今日は少年にいっぱい褒められちゃったからお姉さん気分がいいぜ。スタンプ1個おまけしちゃう! ほいよ、これで次回なにかウチで買うとき500円引きだから、また来てくれよ少年」
「え、ありがとうございます。別に俺はそういった見返りを求めて話してたわけじゃないんですが・・・・・・」
「それくらい分かってるよ、そこは安心して。これは単純に私の気持ち。こんな小さな個人店だから、そこら辺の裁量は現店主である私の判断が全てなのさ」
「そうですか・・・・・・・・・・では、ありがたくその気持ち頂戴します。また来ますね水錫さん。今度は友人も連れてきます」
「お、ありがとう。新規顧客は1番欲しいものだからね。じゃあね少年、またの来店をお待ちしております!」
にこやかな笑顔で手を振る水錫に、影人はペコリと頭を下げて店を出た。夏ということもあってか、まだ太陽はそこまで沈んでいない。
『おい影人。さっきのお前の態度、ありゃ何だよ? 気持ち悪いったらありゃしないぜ』
店を出たところでイヴが気味が悪いといったような感じで影人に語りかけてきた。そんなイヴの語りかけに影人は道を歩き始めながら、肉声でこう答えた。




