第275話 終幕への序曲(1)
(・・・・・・『提督』の奴、あんな力を隠してやがったのか)
冥との戦いを依然続けていた影人は、姿が変わったアイティレの力を見て内心、警戒感を強くした。
「おっ、ありゃ光臨じゃねえか。へえ、『巫女』以外も使えるやつがこの場にいやがったのか。あっちもあっちで面白そうだ」
今は影人と少し離れた距離にいる冥が、アイティレと殺花の戦いを見てニヤニヤとした笑みを浮かべた。どうやら冥は『提督』のあの力について何か知っているようだ。
(・・・・・・イヴ、お前いまこいつが言った光臨って知ってるか? たぶん状況的に『提督』のあの力の事だと思うんだが)
『は? ああ、そういやお前あの女神から「光臨」のこと聞かされてなかったんだっけっか。まあ、制限時間つきの強化形態みたいなもんだ。出来る奴はかなり少ないがな』
ダメ元でイヴに質問してみた影人だが、なぜかイヴは知っていたようでそう答えてくれた。そんなイヴに、影人はこんな時だというのに軽いツッコミを入れてしまう。
(いや、聞いといてなんだけど何でお前知ってるんだよ? お前の知識って全部俺ゆらいじゃねえのか?)
『くくっ、そこはヒ・ミ・ツってやつだ。おら、俺に構ってる暇はねえだろ? そろそろ、あの闇人がまた突っ込んでくると思うが』
(ちっ、煙に巻きやがって)
なんだか上手い具合にはぐらかされた感じがするが、イヴの言うとおりだ。まだ影人と冥の戦いは続いている。現在、2人は少し距離を取った小休止状態だったが、その理由はアイティレの光臨化の際に出現した光の柱に2人が気を取られたからだった。
そして、その現象の解明はもう為された。ということは、戦いが再開されるということである。
「っと、んじゃ楽しい楽しい戦いを再開するかスプリガンさんよぉ!」
「・・・・・・・お前は戦いが好きで好きで仕方ないらしいな」
影人がこきりと首を鳴らす冥に嫌味のつもりでそう言った。すると、冥はその言葉が嫌味と気づいてか知らずか、ニッパリとした笑顔を浮かべてこう言ってきた。
「おう、戦いは大好きだぜ! 戦いだけが俺の生きがい、強い奴と戦って自分が強くなる・・・・・・・・それが最っ高に燃えるんだ! そして俺はこの世の誰よりも強くなってみせる! 俺はそのために闇人になったんだからよ!」
(しょ、少年マンガの主人公かよこいつは・・・・・・・)
まさかの冥の言葉に影人は内心素で驚いてしまった。いや、呆気にとられたと言った方が近いか。闇人になった理由というのが完全にどこかの主人公である。
「だから嬉しいんだよ! あんたみたいな強い奴と戦えるのが! あんたを倒したとき、俺は――もっと強くなってるだろうぜッ!」
「残念だが、そんな未来は来ねえよ・・・・・・!」
冥がどこか狂気を含んだ笑顔を浮かべたまま、影人の方へと肉薄し、右手を影人へと突き出してくる。拳でないところを見ると、自分の外套か肉体を掴むのが目的か。




