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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
2020/2033

第2020話 文化祭と提督4(2)

「・・・・・・ここなら丁度いいだろ」

 十分後。影人とアイティレは屋上に出るドアの前の踊り場にいた。風洛高校は大多数の高校と同じで、屋上は立ち入り禁止だ。そのため、ここまで上がってくる生徒は普段でも全くいない。文化祭中なら尚更だろう。

「少し埃っぽいが、まだ座れるはする。適当に掛けてくれ」

 この踊り場には使わなくなった机やイスがいくつか置かれている。影人はその内の1つに座った。

「ふむ。下の階の喧騒は聞こえるが、確かに話を出来るくらいには静かだな」

 アイティレも適当なイスを取ると、パッパと手で軽く埃を払い着席した。

「で、お前のその偽物の赤い宝石・・・・・・お前の光導姫としての変身媒体だったか。お前にとって、それは変身媒体以外にどんな意味を持つんだ?」

 影人が改めてそう話を切り出す。アイティレはポケットから先ほどの赤い宝石の贋作を取り出した。そして、取り出したそれと同じ赤い瞳で、手の中にある贋作の赤い宝石を見つめた。

「・・・・・・以前、パーティーで私が君に言った事を覚えているか。私の観念についての話だ」

「あんまり自信はないが・・・・・・確か、闇のモノを扱う奴は全員敵ってものだったか?」

「ああ。今は昔ほどその観念は私の中で強くはないがな。君やレイゼロール、闇人といった闇サイドと共闘する内に随分と薄まったよ。・・・・・・だが、闇の力を扱うモノを敵とする観念は、まだ私の中から消えさってはいない。闇のモノに対する敵意、怒り、そして・・・・・・レイゼロールに対する恨みも」

 無意識か、最後は低い声でアイティレは言葉を吐いた。

「っ・・・・・・お前、レイゼロールの奴に恨みがあるのか。それは・・・・・・初耳だな」

「だろうな。私も、明確にレイゼロールへの恨みを誰かに伝えるのは初めてだ」

 アイティレは変わらずその赤い瞳で、手の中にある赤い宝石を見下ろしながら言葉を述べる。そして、アイティレは顔を上げると、影人の顔を見つめた。

「パーティーの時、私は君にこうも言った。『私は過去の経験がきっかけで、闇の力を扱うモノ全てを敵と考えていた。私が光導姫になったのもその経験が原因だ』と。私のレイゼロールへの恨みはその過去の経験に起因している。この偽物の宝石もその過去の経験と無関係ではない。君に話そう。私が闇のモノに敵対心を抱き、レイゼロールを恨み、そして光導姫になった理由を」

 アイティレは影人に過去、具体的には7年前に何があったのかを話した。レイゼロールが闇奴を生み出した場に母とたまたま居合わせた事、闇奴が暴れて破壊した建物の破片からアイティレを庇い母が頭を打った事、アイティレの母はそれが原因で未だに目を覚ましていない事を。

「・・・・・・これが私の過去の経験だ。・・・・・・この偽物の宝石は母から貰った物だ。今でもはっきりと覚えている。私の6歳の誕生日の時だ。母は私にこれをくれた。私の瞳と同じ色のこの偽物の宝石には、母の想いが詰まっている。・・・・・・そして、私の想いもな」

 最上位の光導姫は変身媒体を変えられるとソレイユに言われた時、アイティレは迷わずにいつも持ち歩いているこの偽物の宝石を選んだ。偽物の宝石に力が込められた時、アイティレは自身の決意と想いも同時に込めたのだった。

「・・・・・・そうか」

 アイティレの話を聞き終えた影人は、一言そう言葉を漏らすとしばらくの間無言になった。

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