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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
2010/2012

第2010話 文化祭と提督1(4)

「どうどう! とりまみんな1回落ち着いて! 取り敢えず挙手! 挙手してウチが当てるから、それで言っていって!」

 ワイワイガヤガヤという喧騒が教室を満たす中、魅恋が大声でそう言い、一同を宥めようとする。だが、1度ついた火は中々治らない。クラスメイトたちは変わらずドンドンと意見を出していった。

「あーもう! ウチだけじゃ無理! 海公っち! 影人! ちょっと書くの手伝って!」

「え!?」

「っ、何で俺が・・・・・・」

 急に魅恋に呼ばれた海公と影人が驚く。魅恋は「いいから! 早く!」と捲し立てた。

「わ、分かりました! 取り敢えず、行きましょう帰城さん!」

「あー、クソ。何で俺が・・・・・・!」

 海公が立ち上がり影人にそう声を掛ける。この雰囲気で断れば、逆に悪目立ちする。そう思った影人は、仕方なく海公と共に魅恋の元へ向かった。












「・・・・・・時間が経つのは早いもんだな。もう文化祭当日かよ」

 9月も残すところあと数日という日。午前8時過ぎ。学校に辿り着いた影人は、昇降口で上履きに履き替えながらそう言葉を漏らした。

「誰かガムテープ持ってきて!」

「セリフ違うよ! もう、本番まであと少ししかないのに!」

「え! 衣装家に忘れた!? 何やってんの! ダッシュで取りに帰りなさい!」

 校舎の中は朝から騒がしかった。誰も彼もが忙しそうにそこらを歩き、或いは走っている。影人は喧騒の中を進み、自分の教室へと向かった。

「・・・・・・急いで作ったわりには中々いい雰囲気してやがるぜ」

 教室に辿り着いた影人は、出し物用に装飾された教室の外装を見つめる。

 ドアの上部には「魔王の城」と書かれたプレートが見える。ドアの付近には「来たれ勇者よ!」と書かれた小さな立て看板が設置されていた。装飾も、魔王の城風に黒や赤という暗色系の色で統一されている。影人はドアを引き教室の中に入った。

「魔物役! 空き教室の内装問題ないかもう1回見てきて!」

「ルートマップは問題なし! あ、でも足りないかもだからもうちょっとだけ刷ってきて!」

「ヤベっ! ここ倒れそうだ! 誰か補強するの手伝ってくれ!」

 影人が教室に入ると、クラスメイトたちが忙しそうに動き回っていた。恐らく、朝早くから作業していたのだろう。ギリギリまで出し物に注力する。これもまた青春である。

「あ、帰城さん。おはようございます」

「よう春野。おはようだ」

 教室の端でダンボールを切っていた海公が影人に気付く。影人は軽く右手を上げ海公に挨拶を返した。

「魅恋〜超似合ってるよ! 可愛い!」

「うんうん。カッコ可愛い! さすが魅恋って感じ!」

 影人が海公と挨拶を交わしていると、そんな声が聞こえてきた。影人と海公が反射的にそちらに顔を向ける。すると、そこには黒を基調とした衣装に身を包んだ魅恋の姿があった。

「え、そう? 嬉しー! どうも! カッコ可愛い系の魔王でーす☆」

 魅恋は笑顔でピースをしていた。頭にはツノの付いたカチューシャを、腰部には悪魔のような尻尾を装着していた魅恋は、衣装も相まって、劇の悪役――具体的には魅恋が言ったように魔王――に見えた。

「・・・・・・ウチの魔王様はご機嫌だな。開会式は体育館集合だから、また着替えなきゃならないだろ」

「衣装合わせも兼ねてるんだと思いますよ。みんなギリギリで、まあ今もですが作業してますから。衣装も今日出来たんじゃないですかね」

「そうか。本当にギリギリだな。まあ、文化祭らしいっちゃ文化祭らしいが。それで間に合う、いや間に合わせるのもザ・文化祭だな」

「あはは、そうですね。霧園さんも、みんなも、僕もですけど、自分たちで自由に出し物をするって初めてなんです。だから、余計に楽しみっていうか、ワクワクが抑えきれないっていうか・・・・・・とにかく、力が入ってしまうんです。ちょっと子供っぽいですよね」 

 海公は少し恥ずかしそうに笑った。だが、影人は首を横に振った。

「いや、いいと思うぜ。お前らは何にも間違っちゃいないし、恥ずかしがる必要もない。高校生なんざバカやってなんぼだ。それが健全だ。お前らの健全さが、この大掛かりな出し物に結実したんだろ」

 影人は格好をつけてフッと笑った。言っている事は分からなくもないが、バカやってなんぼの度合いがオーバーし過ぎの奴が言っても都合のいい自己弁護にしか聞こえないから不思議である。

「帰城さん・・・・・・はい。ありがとうございます。でも、僕たちの中にはちゃんと帰城さんもいますからね。帰城さんもクラスメイトですから」

「・・・・・・はっ、そうだな。じゃあ、俺も少しバカになるとするか」

 お前はいつでもバカやろがい。何を言うとんねん。溢れ出る突っ込みへの思いが、思わず地の文を関西弁に変えた。

「眠・・・・・・あー、お前ら。そろそろ体育館に移動だ。準備しろー」

 ガラガラとドアを開け紫織が入室してくる。そして、十数分後。影人たち2年7組の生徒たちは体育館へと移動した。


 ――季節は巡り、再び文化祭の幕が開ける。

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