第2004話 前髪野郎と光の女神4(2)
「あ!?」
「っ、ソレイユ貴様!」
「さあ、みんな攻めますよ!」
陽華とレイゼロールがしまったという顔を浮かべる。ソレイユは一気に敵陣へと進んで行く。同時に、真夏、ロゼ、ラルバも防御を捨て敵陣に走った。カウンター時には防御を捨てて全員で攻撃に参加する。先ほどミーティングで話し合った作戦通りだ。
「ああもう、何でこっちにくるのよ!」
ディフェンダーであるキベリアがボールを持っているソレイユとの距離を詰める。キベリアはソレイユからボールを奪おうとしたが、ソレイユは走っていたロゼにパスを出した。
「ロゼ!」
「託されたよ!」
ソレイユからパスを受け取ったロゼは正面からゴールに切り込んだ。ロゼを追う明夜はまだ追い付いてはいない。ロゼはギリギリまでゴールに近づいていく。
「『芸術家』!」
「こっちだ!」
上がって来ていた真夏とラルバがパスを促してくる。カウンターなので、まだ陽華やレイゼロールもディフェンスには戻って来れない。どちらにパスを出しても成功するだろう。
「くっ・・・・・・!」
青チームのキーパーである光司の顔に緊張の色が奔る。これは実質的に3択だ。先ほど、敵チームのキーパーである影人も迫られていた。この状況はキーパーにとってかなり不利だった。実際、影人は止めきれなかった。
「だけど、必ず止めてみせる。みんなが頑張って作ったリードを奪わせるわけにはいかない!」
光司は逆にボールを持っているロゼに向かって飛び出した。光司は直接的にゴールを守るよりも、ボールを奪って間接的にゴールを守る事を選択した。光司はロゼの持つボールに飛び込み、両手でボールを奪おうとした。
「っ!?」
まさか、飛び出してくるとは考えていなかったロゼは軽く目を見開いた。
「全く勇気があるね・・・・・・! 君のその勇気に喝采を。だが・・・・・・勝つのは私だ!」
ロゼは強気な笑みを浮かべた。そして、トンとボールを軽く上に蹴った。ボールは飛び込んできた光司の上を綺麗に飛んだ。
「なっ!?」
「華麗だろう? そして、これで同点だ!」
光司の手が空しく空を切る。ロゼは光司を避けると、地面に落ち跳ねたボールをそのままゴールに押し込んだ。ボールは綺麗にゴール中央のネットに吸い込まれた。
「ゴール。赤チームに1点追加。これで2対2の同点です」
「ディフェンダーがゴールを決める。珍しい事ではあるが、これもまたサッカーの醍醐味だよ」
イズが笛を鳴らし、シュートを決めたロゼはファサっと軽く髪を掻き上げる。その仕草は傍目から見てもモデルのように決まっていた。
「やるわね『芸術家』! 悔しいけど格好よかったわ!」
「ナイスシュートでしたロゼ! 流石ですね!」
「おめでとう。テクニカルなシュートだったね」
真夏、ソレイユ、ラルバがロゼに称賛の言葉を贈る。ロゼは3人に対して「ありがとう」と言葉を返し、自身のポジションであるディフェンスに戻った。
「得点ありがとうございます。これで、少しだけ気が楽になりました。運動も出来るなんて、天はピュルセさんに二物を与えたみたいですね」
自陣に戻って来たロゼに影人もそんな言葉を贈る。影人にそう言われたロゼはフッと笑った。
「分かりやすい世辞だ。だが、ありがとう。嬉しいよ。ついでに、そのまま惚れてくれても構わないよ」
「っ・・・・・・」
パチリとロゼは影人にウインクをした。突然そんな事を言われた影人は、一瞬ドキリと心臓が跳ねた。




