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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
167/1998

第167話 魔女と少年たちの葛藤(3)

「・・・・・・・・・」

 キーンコーンカーンコーン。と放課後を知らせるチャイムの音が風洛高校に響き渡った。影人の回り――周囲の生徒達はそれぞれの反応を示し、ある者は部活へ、ある者は友人とどこかへ寄っていこうなどの相談をしていた。

 普段なら帰宅部の影人もチャイムと同時に速攻で帰路につくのだが、今日は違った。自分の机でチャイムの音をどこか他人事の気分で聞きながら、その意識はひたすらに自分の内面へと向けられていた。

(自分の心と向き合う。嬢ちゃんに言われたこの言葉が頭から離れねえ・・・・・・・)

 その言葉は一見するとただの外国人の少女の言葉でしかない。自分より年下であろう少女の戯言だ。普通の人間ならそう思うのが、ある意味では正しい。

(俺の体を乗っ取った何か・・・・・・・それはいったい何なんだ? 何が目的だ? 何で嬢ちゃんに言われた言葉が頭から離れない?)

 疑問が影人の頭の中を埋め尽くす。正体不明、目的不明の何か。それは光導姫や守護者、ソレイユを除いた全ての者がスプリガンとしての影人に感じているものだろう。これは自惚れでは決してない。事実、スプリガンの評価は『正体不明の怪人』という言葉で言い表せられている。

(・・・・・・・皮肉だな。正体不明の怪人が正体不明の何かについて考えるっていうのは)

 影人にしては珍しく、思考は内面で完結していた。普段の影人は癖でもあるが、考えは殆ど口に出して整理して考える。だから影人はいま無言だ。

 しばらく影人が未だに思考に耽っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「おーい、影人。どうしたの? 影人が廊下にいなかったから、教室まで来たけど・・・・・・・・珍しいね、速く学校から出たい影人がまだ教室で座ってるなんて」

「暁理か・・・・・・・・」

 チラリと自分の横を見てみると、暁理が珍しそうな顔で自分のことを見ている姿が目に入った。どうやら自分を迎えに来たらしい。

「・・・・・・・別に何でもない。ただ考え事をしてただけだ」

「影人が考え事? それこそ珍っっずらしい。君、そんな見た目の割に普段全く悩みとか考え事しないだろ?」

「おい、そりゃどういう意味だ。わざわざ溜める必要なんてないだろ。つーか、俺も普通に考え事くらいする」

 暁理が心底驚いたような表情を受かべているのが、妙に腹が立った。普段、こいつは自分のことをなんだと思っているのか。

「ま、それはどうでもいいや。帰ろ影人。帰りになんか買ってさ」

 サラサラな髪を揺らしながら、暁理がニッコリとした笑顔でそう言ってきた。友人の買い食いの誘いに影人はとりあえず頷いた。

「・・・・・・・分かった。付き合ってやる」

「やったね。それじゃあ、行こうよ。僕、今は揚げ物が食べたい気分」

「お前いっつもそれだな・・・・・・太るぞ」

「相変わらずデリカシーないね。死ねばいいのに」

「辛辣すぎる・・・・・・・・」

 いつも通りの適当な会話をしながら、2人は教室を出た。昇降口で靴を履き替えると、再び暁理が影人に話しかけて来た。なぜか、少し頬を赤らめながら。

「あ、あのさ影人。この前言ったデートのことなんだけど・・・・・・い、いいいいいつに――」

「?」

 暁理が後半バグった機械みたいになっている様を意味不明そうに眺める影人。一方、暁理は意を決して次の言葉を言おうとしたが、そのとき暁理の頭にある音が響いた。

 キイィィィィィィィィィィィィィィィィン

「っ!? ・・・・・・・・・・嘘だろ、空気読んでくれよ」

「・・・・・・お前、さっきから大丈夫か?」

「う、うん・・・・・・・・全然大丈夫だよ。ごめん、影人。ちょっと急用を思い出した。埋め合わせは必ずするから・・・・・本当にごめん!」

 暁理は本当に残念そうな顔で、そう言い残し暁理は風のように走り去った。

「あ、おい! ・・・・・・あいつなんか最近ヘンだな」

 走り去る友人の後ろ姿を目で追いながら、影人は少し心配したような声でそう呟いた。

 あの慌てようはまるで自分や陽華や明夜のようだ。

「・・・・・まあ、あいつが光導姫のわけないか」

 最近、色々と疑ってしまう。それ自体はいいのだが、必要以上となれば話は別だ。それはいずれ悪癖となる可能性がある。

「・・・・・・・・・・帰るか」

 急に暇になってしまった影人は、1つ大きなあくびをしながらトボトボと歩き始めた。

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