第161話 実力者たち(2)
(つーかそれを言うなら、上位10位でまともな戦い方するやつなんて、光司っちと後1人しかいないしな。今の奴ら俺を含めてゲテモノ多過ぎねえ?)
ふと、そんなこと考えてしまう刀時。そもそも、守護者とは本来光導姫を守るためのシステムだ。もちろん刀時も光導姫を守ることはするが、どちらかというと闇奴や闇人をぶった切るほうが得意だ。
「それは剱原さんの言うとおりです。では、僕に稽古はつけてもらえないということでしょうか? ・・・・・・・・わかりました、本日はすみませんでした。僕は僕なりに強くなる方法を考え実践したいと思います」
「いや、光司っち早とちりしすぎだって! 確かに稽古はつけてやれないけど、それ以外でいいなら俺にも出来ることはあるぜ?」
「というと・・・・・・・?」
「1番シンプルで強くなる方法さ。その分、1番キツい方法ともいえる」
刀時は少し口角を上げて、立ち上がった。刀時の身長は光司より少し高い程度だが、その性格とは裏腹に立ち振る舞いがしっかりしているため、実際はもっと高く見える。
「本当なら超めんどい。でも俺は光司っちのことを気に入ってるし、尊敬してるしちゃんとやるよ。さて光司っち、早速だけどやろうか。準備しな」
「? 剱原さん、準備とは・・・・・・・?」
「決まってらぁ、戦いのだよ。――さあ、戦で候」
刀時が半纏の内側から簪を取り出し、そう呟いた。すると、刀時の姿が光に包まれた。
光が収まると、そこには小袖に袴、羽織を纏った1人の侍がいた。腰元には日本刀が1本鞘に収まっていた。
「さ、光司っちも早く変身しな。今からやるのは実戦だ。別に自惚れじゃないけど、ランキングは俺の方が上。手っ取り早く、それでいて1番効果的なのは自分より上の相手と本気で戦うことだ。だから、光司っちは本気で俺に向かってきな。じゃなきゃ、意味ないからな」
決め顔で刀時はそう言った。だが、内心は同じ高校の連華寺風音に対する感謝の気持ちでいっぱいだった。
(ありがとう風音ちゃん! 最近風音ちゃんから『新人の光導姫に実戦形式で稽古をつけている』って聞いてなきゃ、完全にどうしようって迷ってた! 悪いけど、ありがたくパクらせてもらう!)
正しくは、刀時が行うのは稽古ではないが、まあ似たようなものだ。実戦と実戦稽古の違いがどこにあるかは定かではないが、そこを気にしてはいけない。必要なのは気持ちとその本気度だ。
「っ・・・・・・剱原さん、本当にありがとうございます。やっぱり剱原さんは尊敬のできる素晴らしい先輩です!」
(やめて光司っち。そんなキラキラした目で俺を見ないで。他人のアイデアパクっただけの薄汚れた野郎にその目はキツい!)
後輩の守護者による尊敬の視線を受け止めながら、刀時はメンタルに多少のダメージを受けた。剱原刀時はメンタルの弱い系男子なのである。
「では、胸を借りさせて頂きます。――我は守護者。守るための力を今ここに! 変身ッ!」
光司の胸元のペンダントが光を放ち、その出で立ちが変化する。白を基調としたどこかの王子然とした服装、光司は左腰の鞘から剣を抜くと、剣を構えた。
「俺は棟でやるけど、光司っちは普通にやって大丈夫だから。その剣、両刃だろ? 遠慮はいらないぜ。たぶん攻撃当たらないしさ」
「・・・・・・・・余裕ですね」
「これは強がり。でも、事実になると思うよ」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
そして、訪れる静寂。道場内に夕日が差し込む。
「はぁっ!」
次の瞬間、光司は床を踏み刀時へと向かっていった。
「さあ、実戦だ!」
刀時も刀を抜き、刀を棟の方向に持ち替えると、光司へと向かっていった。
2つの刃が道場の中央で交差した。




