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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
153/1998

第153話 嘲る暴嵐(1)

「レイゼロールだぁ? 何でてめぇが・・・・・・・」

 上空で訝しそうに片目をつり上げた謎の存在は、突如として現れたレイゼロールに視線を向けた。

「・・・・・・理由は述べた。貴様には関係のないことだ」

 レイゼロールはアイスブルーの瞳で、スプリガンを、その体にいるモノを見上げる。その瞳は、普段の無感情なものとは違い、怒りの色が存在していた。

「・・・・・・我の執事をこんな目に合わせてくれたのだ。代償は高く付くぞ、スプリガン」

「はっ、笑わせんなよ。この前ボコボコにしてやったのに、何をイキってるんだ白髪ヤロウ?」

「っ・・・・・・?」

 その嘲りを含んだ言葉に、レイゼロールは違和感を覚えた。レイゼロールはこれでスプリガンと対峙して3度目だが、今日のスプリガンは今までとは何かが違っていた。

「レイゼ、ロール様・・・・・・・」

「・・・・・お前に言いたい事はあるが、話は後だ。今は――」

「違うのです・・・・・・・・! 今の奴は、あれは、私たちの知っている、スプリガン・・・・・では、ありません」

 言葉も絶え絶えに、フェリートは主人にその事を報告した。先ほど回復リカバリーで、傷を修復したというのに、あのスプリガンの体を乗っとっている謎の存在に蹴りを2発もらっただけで、言葉を出すことすら苦しい。

「・・・・・・どういう事だ?」

「詳しい、ことは・・・・・・・・分かりません。ですが、あれは・・・・・・・スプリガンではない・・・・・・・!」

 フェリートの言葉に眉を潜めるレイゼロール。彼女にはフェリートの言っている言葉が理解できなかった。

「つまらねえ話はよ、それくらいで頼むぜ。こっちはやっとこさ()()()()()()()()()()()()。刺激が欲しいのさ」

 パチンとスプリガンが指を鳴らすと、周囲の空間から、はたまた地面から異形の怪物たちが闇から出現した。

「っ・・・・・・・!?」

「・・・・・・・・・無詠唱。この前と同じか」

 フェリートは異形の怪物やその物量に驚いているようだったが、レイゼロールはその事にはさほど驚いてはいないようだった。

「――さあ、暴れようぜ」

 羽や複数の口、腕や足の生えた異形の怪物たちは耳障りな声を上げて、レイゼロールたちに襲いかかった。

「・・・・・・・・・」

 レイゼロールが軽く左手を横に振った。その動作でレイゼロールの造兵が複数体出現した。骸骨兵たちはカラカラと音を立てながら、怪物たちと戦闘を開始した。

『フェリート。聞こえるな?』

「っ・・・・・・は――」

 レイゼロールの声が脳内に響き、フェリートは反射的に返事を返そうとした。

『返事はいい。今から我が一方的にお前の中に語りかける。お前は黙って聞いていろ』

 レイゼロールと闇人の間には見えない経路パスのようなものが存在する。レイゼロールはその経路を通して、闇人との念話が可能だ。だが欠点もあり、この念話はレイゼロールからの一方通行でしか成り立たない。

『我は今スプリガンと戦うつもりはない。ゆえにすぐに撤退したいところだが、無理矢理にお前のところに飛んできたから、あと1分は転移が出来ない。だから1分間は我がお前を守ってやる。お前を回復してやりたいが、その余裕はなさそうだからな。もう少し待っていろ』

「そ・・・・そんな、恐れの、多いこと、は・・・・・・・・!」

 どこに主人に守られる執事がいるだろうか。それに今の事態はフェリートの独断が招いた、ただの自業自得だ。フェリートの心は罪悪感と申し訳のない気持ちで張り裂けそうだった。

『黙っていろと言ったはずだ。お前は我の駒。ここで失うわけにはいかん。・・・・・・・ただし戻れば、お前にはそれ相応の罰は受けてもらう。それは覚悟しておけ』

 レイゼロールが造兵たちから抜けてきた怪物を闇の腕で粉砕する。氷のように美しい自分の主人を見上げ、フェリート一筋の涙を流した。

「はい・・・・・・・・!」

 闇人になって涙を流したのは、きっとこれが初めてだ。フェリートは力を振り絞り、なんとかその涙を拭った。今の自分が涙など流してはならない。

「まあ、雑魚じゃそうなるよな。ほんじゃあ――」

 スプリガンの真横に昏い空間のゆらぎが生じる。そしてスプリガンはそのゆらぎの中へと姿を消した。

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