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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1289/2155

第1289話 ただ1つの願い(4)

 そして、レゼルニウスは無意識に感じ取っていた。この透明の瞳の女が異質な何かであり、自分よりも高位の存在であるという事を。レゼルニウスの女に対する恐怖はそこから来ていた。

「邪魔をしたな。もうお前に用はない。さらばだ」

 影人が消える事を望んだ理由や、自分の知らない影人の事を知り満足した女はそう言うと、透明の粒子となって一瞬でレゼルニウスの目の前から、その姿を消した。

「・・・・・・・・・・・・」

 いきなり現れて、いきなり消えた女。まるで夢を見ていたかのようなその唐突さに、レゼルニウスはしばらく呆然としていた。












「ふむ、ここに来たのはいつ以来か・・・・」

 冥界から粒子となって去った女は、周囲が暗闇に包まれた、世界と世界の狭間とでも言うべき場所に転移していた。世界と世界を移動する際には、門を開く必要があるが、世界渡航以外ならば転移でことたりる。ここは世界と世界の狭間であって、世界ではない。ゆえに女は転移でこの場所にやって来た。

「『虚無の闇辺』に行くためには、この狭間で門を開かねばならんからな。全く、面倒なものだ」

 女が正面の暗闇に向かって右手を伸ばす。すると、暗闇の中に透明の門が現れた。全ての消えた存在が行き着く場所、「虚無の闇辺」はこの狭間の深層にある。ゆえに、ここで世界を渡るための門を開く必要があるのだ。女は「虚無の闇辺」へと続く門を開き、門を潜った。

 途端、一面の暗闇だった景色が変わる。そこは薄い闇がどこまでも広がり続けている世界だった。それだけならば、先ほどの世界と世界の狭間と変わらない。狭間と変わっている点は、暗闇の至るところに、ぼんやりとした透明の、様々なモノがあることだ。それは剣のようなモノだったり、人のようなものであったり、人外の生物のようなモノと、本当に様々だった。これらは全て、世界から消された存在であったり、虚無へと行き着いた何かたちであった。

「さて、早く影人を探さないとな。吾といえど、ここに居続ければ虚無に還ってしまう」

 そもそも、ここは生あるモノが足を踏み入れる場所ではない。基本的にはここに足を踏み入れた全ての存在は、その瞬間に虚無へと還り、永遠にこの場所へと取り込まれる。それは神界の神や、その上位である真界の神々も例外ではない。この場所は、全ての者にとって絶対に入ってはならない場所、禁域なのだ。

 ではなぜ、女はすぐに消えないかと言うと、それは女が『空』の力を半分奪取したからだった。『空』はこの場所に満ちる虚無とほとんど同義の、《《ある力》》を使う事が出来るため、耐性があるのだ。つまり、今の女は例外だ。

「普通ならシトュウが言っていたように、この場所から特定のモノを探す事は出来ない。広さが無限だからな。だが、吾には印がある」

 女はニヤリと笑うと目を閉じて意識を集中させた。感じられるはずだ。必ず。女は意識の綱を広げ続けた。

「・・・・・・・見つけた」

 意識の綱に自身と共鳴するモノが引っかかる。女は目を開けると、その共鳴するモノの場所まで瞬間移動した。

「ああ・・・・・・久しぶり。本当に久しぶりだな影人・・・・・・」

 瞬間移動した女は、自身の正面にぼんやりと浮かぶモノ――人の形をしているが、顔や姿は分からない――を見つめると、感動したようにそんな言葉を漏らした。姿ははっきりしないが、女には目の前のモノが影人だと分かった。その理由は、目の前のモノから感じるからだ。女がかつて、影人の中に滑り込ませた、ほんの少しの自分の――魂のカケラの存在を。女が先ほど呟いていた印とはこの事だった。ゆえに、女は影人を見つける事が出来たのだ。

「さて・・・・・・おいで、影人。もう少しすれば、吾がお前を蘇らせてやる。そのためには、お前の魂の残骸が必要だ」

 女はまるで聖母のような慈しみある笑みを浮かべると、両手をかつて帰城影人だった存在に向けた。すると女の手に引かれるように、ぼんやりとした透明のモノが粒子となり、女の手に集まっていく。女はそれを丸めるように手を動かす。そして、人の形をしていたモノは、いつしか拳くらいのぼんやりと光を放つ球体に変化していた。

 それは、人魂と呼ばれるものに似ているように思えた。女は容器を創造し、その中に大切そうにその球体を入れると、容器を密封した。これで大丈夫だ。

「さあ、帰ろうか影人。吾たちの世界へ」

 女は右手で大切そうに容器を持ち、暖かな顔でそう呟くと、左手で門を開き「虚無の闇辺」を後にした。

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