第1284話 空と空(3)
「・・・・・・まあ、お前の話は分かったよシトュウ。嘘もついていないだろう。つく理由もないからな。そうか。あの子は自ら望んで消えたのか・・・・・・」
影人の存在をシトュウが消した理由を聞いた女は、一応納得したようにコクリと頷いた。
「・・・・・・シトュウ。お前は影人がレゼルニウスから『終焉』の力を受け継いでいたと言ったな。ならば、レゼルニウスは影人が自分の存在を消したがっていた理由を知っていると思うか?」
「それは分かりません。ですが、いくら帰城影人といえども、この場所への扉を開けられるとは考え難い。この真界の『空の間』への扉を開けられる者は限られています。そして、冥界の最上位神であるレゼルニウスもその内の者。帰城影人に『終焉』の力を譲り、この場所への扉を開いたレゼルニウスは彼と接触があった事は確実です。ゆえに、可能性はあるにはあったでしょう」
シトュウがあったと過去形にしたのは、そのレゼルニウスも今や影人の事を忘れているからだ。シトュウの言わんとしている事を正確に理解していた女は、再び頷いた。
「ふむ、そうか。可能性はあったか・・・・・・まあ、今はそれだけ聞ければ充分。礼を言うぞ、シトュウ」
「・・・・・・まさか、あなたに礼を言われる日が来ようとは。夢にも思っていませんでした」
「ははっ、まあお前ならばそう言うだろうな」
今日何度目になるか分からない驚きを受けるシトュウ。そんなシトュウを見て女は笑った。
「さて、ここに来た目的は果たした。後はそうさなぁ・・・・・・」
女はどこか満足したような顔を浮かべると、次の瞬間、
「お前の力を、吾から奪った力を返して貰おうか」
「っ!?」
ニィと邪悪な笑みを浮かべ、急にシトュウへと襲い掛かってきた。シトュウは驚いた顔を浮かべるが、
「愚かな・・・・・・」
シトュウはすぐに冷静になり、その顔から表情を消すとこう言葉を唱えた。
「時よ、止まりなさい」
すると次の瞬間、この空間のシトュウ以外のモノは全てその動きを停止させた。無論、女もピタリと動かなくなった。今シトュウが唱えた通り、この空間のシトュウ以外の時を止めたのだ。
「・・・・・・確かに、あなたがここに来れた事には驚きました。ですが、あなたの力は以前のまま。私たちがあなたからほとんどの力を奪った時のままです。そんなあなたが、万が一にも私をどうこう出来るはずがないでしょう」
静止している女に、シトュウは独白するように呟いた。今のシトュウは真界の最高位の神。その力は全ての存在を凌駕する。何人たりとも、シトュウに勝つ事は不可能だ。対して、女は力のほとんどを削がれた今や脆弱なる存在。シトュウでさえ、女の存在は滅する事は出来ないが、負ける道理は存在しない。
「まずは、あなたがまたこの場所に来れないように、その短剣を処理しましょうか」
シトュウは一応まだ警戒しながら、立ち上がり静止している女に近づくと、女の手から「帰還の短剣」を取った。そして、その短剣を塵へと還した。これで「帰還の短剣」は永遠に失われた。




