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変身ヒロインを影から助ける者  作者: 大雅 酔月
1283/2154

第1283話 空と空(2)

「で、そろそろ本題だ。影人がお前の目の前に現れた事は分かった。まあ、影人がどうやってこの世界の扉を開いたのか知らんがな。シトュウ、なぜ影人の存在を消したのだ? お前の答えによっては・・・・・・吾は本気で怒るぜ」

「っ・・・・・・」

 女はそこでスッと表情を消し、声を無機質と思えるほどに冷たいものにさせると、その透明の瞳でシトュウをただジッと見つめた。今はほとんど力を失ったはずなのに、女の威圧と威厳は『空』であった時と何ら変わっていなかった。シトュウはほんの少しだけ、女に気圧された。

「・・・・・・頼まれたからです。他でもない、帰城影人本人に。自分の死を契機に、自分の存在を初めからなかったものにしてほしいと」

「っ・・・・? 頼まれた・・・・・・? それはどういう事だシトュウ?」

 シトュウの答えを聞いた女は、彼女にしては本当に珍しく意味が分からないといった顔になった。この女もこんな表情をするのかと、シトュウはついそんな事を思った。

「帰城影人は、今は死して冥界の神となっているレゼルニウスから『終焉』の力を受け継いでいました。そして、その力を以て私を脅したのです。自分の願いを聞かなければ、私を殺すと。『終焉』の力は私たち真界の神々でさえ、その存在を滅する事が出来る異端の力。私は仕方なく帰城影人の願いを叶えました。『空』が死ぬわけにはいきませんから」

 シトュウは正直に女にあの時の事を伝えた。嘘をつく理由は別にないからだ。

「影人が『終焉』の力を? おいおい、あいつ吾が封じられている間に何してたんだよ・・・・・・くくっ、全く相変わらず予想の範囲外にいるなあの子は。あの子らしいと言えば、あの子らしいが」

 影人が『終焉』の力を受け継いでいたというまさかの事実。それを聞いた女は一瞬呆気に取られたような顔になったが、すぐに面白そうに笑った。その笑顔を見たシトュウは驚いたような顔を浮かべた。

「・・・・・・あなたはそんな顔で笑うのですね。初めて見た気がします、あなたのそんな顔は・・・・・・」

「ん? まあ、ここで『空』をしていた時は、ずっと退屈で死にそうだったからな。確かにお前も、純粋に面白がって笑っている吾を見るのは珍しいか」

 シトュウに女は変わらずに笑みを浮かべながらそう言葉を返す。シトュウとの付き合いはかなり長いが、指摘通り彼女の前ではこんな感じで笑った事はない気がした。

「・・・・・・とにかく、私が帰城影人の存在を消したのはそのような理由からです。彼がなぜ自身の存在した事実を消したかったのか、彼はそれを言いませんでしたし、私も聞きませんでした。彼の存在を私の力で消してしまったために、全知の力を使ってもその理由は今や知る事が出来ません。あなたも知っての通り、全知の力を使うには2つの条件がありますから」

「能動的に自身が識りたいと思う事。既に世界から記述が消された事実や存在は識れない事か・・・・・・」

 シトュウの言葉を捕捉するように、女が右手を顎に当てながら言葉を漏らす。全知の力は、あくまで世界(ここでいう世界は、地上世界、神界、真界、冥界、など全ての世界を指す)に刻まれた事を識る力だ。その存在が全ての世界から消された影人は、今やその力の対象外となっていた。

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