第1014話 知らない場所(2)
「マジで何がどうなってんだ・・・・!? っ、そうだ。ペンデュラムは・・・・・!」
左手で髪を掻きむしりながら、影人はイヴの本体でありスプリガンへの変身媒体でもあるペンデュラムを探した。今の影人は変身する前の格好、黒色の長袖に青色のスゥエットのズボンといったものだ。影人はペンデュラムが入っている可能性があるズボンのポケットの中を弄った。
「っ、ない。ペンデュラムがねえ・・・・・・」
しかし、案の定というべきかペンデュラムはポケットの中には存在しなかった。
「もしかして、あの歪みの中の流れに振り回されてる時に落としたか? だとしたらヤバすぎるぜ・・・・いや、ペンデュラムがない時点でヤバいがよ・・・・・・・」
影人は大きなため息を吐いた。ただでさえ今の状況が分からないというのに、スプリガンの力さえも失ってしまった。それは、帰城影人という人間が、ただの無力な少年になった、いや戻ったという事実を示していた。
「ここがどこかも分からない。ソレイユとイヴとも念話が出来ない。更にスプリガンの力までも失ったときた・・・・・・・・・・・本当にどうしようもなくヤバい状況だな・・・・・」
今の自分の状況をある程度理解した影人は軽く絶望した。だが、ここでずっと絶望していても始まらない。影人は暗くなる心に無理やり鞭打って顔を上げた。
「だが、こういう時こそ行動しないとだよな。正直動きたくねえがやるしかねえ。はあー、何で人生ってやつはやるしかねえって事が多いんだ・・・・・」
無駄に精神が強い前髪野郎はそう呟くと、まずは森から出るべく歩き始めた。
「取り敢えず何とか森からは出られたが・・・・・この辺りはよほどの田舎と見たぜ」
約20分後。と言っても、影人は時間を確認できる物を持っていないので(スマホも家に置いて来ていた)あくまで影人の体感だが、影人は森を抜ける事に成功した。森から抜けた影人の前に広がっていた光景は、広大なる空と草原だった。
「森の中にも何かシカとかよく分からん生き物もいたしな・・・・・・だが、どこかに町があるはずだ。取り敢えずはそれを見つけよう。情報収集しなきゃ何も分からないからな」
雄大な自然を見つめながら、影人は地面が露出している道であろう場所を歩いた。取り敢えずは道なりに。
「しっかし、マジでどこなんだろうなここ。日本的な光景って感じじゃないから、多分どこかの外国だとは思うが・・・・・・・・」
周囲の風景から何とか情報が得られないかと影人は辺りを観察するが、あるのは草原だけだ。かなり遠くの方には山も見えるが、何という山かは分からない。
「・・・・・・ダメだ。歩けど歩けど何もねえ・・・・・」
それからしばらく、地面が露出した道のような所を歩き続けた影人は、すぐ横の草原に座り込みそう言葉を吐いた。




