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* * *


「ここでやることがある」という言葉は、僕-滝川ハルト‐が一人になるための偽りだった。それは、佐伯リリアの本意をゆっくりと思考したいがための行動だった。


 僕は一人残された‐いわばいつも通り‐の部室で、心底疑問に思っていた。それは、佐伯リリアの「だから君は、人を殺したことがないんだ」という言葉が尾を引いていたからだった。


「なんで君は……そんなことを言うんだ」


 佐伯リリアの言わんとすることは、僕も理解したつもりだった。なぜなら、その瞳から明確なメッセージが提示されていたからだ。


 その眼光は僕の頭の中で「君には、人を殺すことなんて出来ないよ」と、自動的に脳内変換され、僕の頭に染み付いて枷となる。


 しかし、同時に思い出す。その言葉を発したときの彼女の眼は、今まで見てきたそれの中で、突出して覚悟が滲み出ていた。おそらく、彼女は望まぬ形で人を殺したことがあるのだろう。


 僕は狼狽していた。それは、殺人者と接しているなどという一般的な理由からではなく、彼女の本当の素性が全く見えてこないからだった。


「一体、本当の君は何を思っているんだ?」


 これが、僕の理想崩壊の第一歩だった。



* * *



 次の日、朝学校に行くと、僕の机の中にメモが入っていた。また、低俗なクラスメイトの愚かな遊戯の一種かと思ったが、珍しくそうではなかった。


「放課後、昨日君がいた喫茶店に来て…… リリアより」


 あの場所は僕の居場所だぞと内心思いながらちらりと、教室の中央に陣取る佐伯リリアを見る。


 その姿は、自分をオブラートに包みながら雑多の会話に参加する、いつも通りのモノだった。しかし、昨日彼女と話したことで、それまで普遍的だったはずの彼女の行動に対する僕の見方は変わっていた。


「君もマイノリティーな人間なのに、何故雑踏を好むんだ?」


 僕はポツリ呟いて、始業のチャイムを待った。



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