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オープニングディアロゴス

 

 僕は論理的な人間、いや、ある意味論理的すぎる人間だ。だから、僕は社会的に『孤独』になっているのだろう。

 現に今も、ごたごた御託を並べてしまっている。

 それに対する常人の反応は、いつも決まっていた。そして、彼女-佐伯リリア-もまた……。


「へー、なんだか難しいね。よくわかんないや」


 やっぱり彼女も常人のようだ。僕は、自分のほうが立場が上だと思い、見下すように告げる。


「これでも生徒会長さんが理解しやすいようにかなり噛み砕いたつもりなんだけどな。もっと語彙力つけたほうがいいよ」

「あー、また馬鹿にしたでしょ。滝川君……性格悪いね」

「僕には友達とかいないから、そんなこと誰にも言われたことないし自分ではわからないよ。ところで、いつまでそこに突っ立ってるつもり? 他のお客に迷惑だよ、座りなよ」


 この店の空気を壊されるのを恐れた僕は、空いている隣のカウンター席に座るよう促す。


「あれ、もしかして私に興味ある? ウワー、ウレシイナー」


 お門違いの考察をしている佐伯リリアに対して、僕は冷酷に返答する。


「棒読みだし。大丈夫、僕は生徒会長さんに一ミクロンも興味持ってないから。それに、本題をまだ聞いてないしね」

「え、何それ?」

「まさか、こんなところまで来て、『ただ喋りに来ましたー』っていうわけないし」


 真意を暴かれたのか、彼女の顔に確かな動揺が走る。


「よ、よくわかったねー。実は、私は生徒会長として風紀を乱すものがいないか見回りを……」

「嘘だね。生徒会長さんの性格は、これまでの会話で大体分かった。そこから考えると、あなたがそんな面倒くさいことをするわけがない。そもそも、生徒会長をやってるのも成績が芳しくないから、先生に少しでも媚を売ろうと思ってのことなんじゃないの?」

「……っ」


はい、突破。さて、隠していることを聞かせてもらおうか。



「僕のことをどんな人間か探っているのは分かったから、そろそろ用件を言ってもらっていいかな?」

「わ、分かったよー。まあ、単刀直入に言うと、君がやってる遊びに私も混ぜてもらえないかなって思って」


 僕は、少し予想のしていなかった問いに驚いて、一度惚けてみる。


「遊び? 何のこと?」

「君がやってる部活のことだよー。あれ、名前なんだったっけ? 部長の君から教えてよ」


 佐伯リリアの目には先程とは違う、まるで人を弄ぶかのような、余裕の色が浮かんでいた。

 前言撤回。この女、少しはやるようだな。

 彼女の見立てを誤っていた僕は、誤魔化すのは不可避と思い真実を告げる。


「それって……アイソレーションサークルのこと?」

「そうそう、それだよ。いやー、報告書に大した活動内容も明記されてないから、生徒会で即刻廃部にしようって声が前から出てるんだけどねー。なぜか、学校のお偉いさんが許可出してくれないんだよー。私もそれまでは興味なかったんだけどちょっと資料見てみたら、驚くことに部長が同じクラスのぼっち君じゃん。これは面白い香りがプンプンするなーって思って、こうして調べに来てみたってわけ」


 ふん、そういうことか。


「廃部にならないのは、この学校にかなりの額の投資をしているからだよ。一応、後盾はしっかりさせとかないとね」

「ワーオ。そうなんだ。でも、それもどうかと思うけどねー。で、そのお金はどこから出てるわけ?」


 ずかずか踏み込んでくる佐伯リリアに対して、僕はため息をつく。


「仕方ないな。付いておいで。実際に見せてあげるよ」

「あれー、案内してくれるんだ。てっきり門前払いだと思ったのに」

「仮にも入部希望者だからね。そんな風には扱えないよ。それに、隠したところで僕にデメリットは無いしね」


 そう言って、僕は彼女を先導して、安心できる数少ない領域のもう一端へと向かった。だが、僕はこの時から彼女が常人とは少し違う、いわばマイノリティーな人間-僕とは少し種類が違うが‐だと気付いていたのかもしれない。



最後までお読みいただきありがとうございました!

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